DAW悪戦苦闘記

DAWやMIDIを通じてDTMを楽しむ記録。MIDI検定試験にもチャレンジするなり。

Studio One がバージョン4にアップグレード

Studio One はバージョン4に上がるまで有償Professional版の購入は控えた方がよいだろうと昨年はずっと粘り続けていたのだが、本日遂にバージョン4リリースの発表があった。たぶん秋のバーゲン・シーズンにぶつけてくるのではないかと想定していたので、意外に早い時期のタイミングとなりちょっと驚いた。

UIやマニュアル類がどうしても日本語でないと困るユーザは、代理店のMI7サイトよりダウンロードすればよい。英語メニューでも全然問題ない人は本家サイトから直接ダウンロード購入できる。

バージョン4の新機能概要

新機能については、以下のページで概要を把握できる。

www.mi7.co.jp

個人的に注目の新機能は、以下の3つである:

  1. コード・トラックとハーモニー編集
  2. インストゥルメントとドラム・エディター
  3. ドラムとメロディのパターンによるパターンベースのアレンジ機能

1のコード編集支援機能は、Waveformのそれに対抗する類似機能であるが、おそらく他メーカーのDAWもこの種のコード・ヘルパーは当たり前の仕様になってくると思われる。さらに妄想すれば、そう遠くない将来にAI自動作曲支援機能に進化するまであと一歩だろう。

2と3はいわゆるステップ・シーケンサーの発展版のような感じに見えるが、Studio One 3.5 に欠けていると不満に思っていた機能の一つではある。ドラムとパーカッションの打ち込みは相当程度効率アップすると思われる。またリズム・パターンの試行錯誤をやりやすくなるだろう。

なお、Prime版では2および3はサポートされるが、1は入っていない。

www.mi7.co.jp

Prime版について

機能限定の無償Prime版については、6月か7月あたりのリリースを予定しているらしく、残念ながら現時点ではまだダウンロードがお預けとなっている。これは本家の英語版でも同様である。

www.mi7.co.jp

Pro版購入時期について

あまり大っぴらには書けないが、比較的値が張るProfessional版に関しては、今すぐに必要だというユーザ以外は秋のセール時期まで購入を待った方が良いかもしれない。というのも、キャンペーン・セールの時期だと、Professional版を大幅に値下げ*1販売することが期待できるからだ。

また、メジャー・アップグレードに付き物のバグ修正等を経て、ある程度安定してから導入する方が得策だろうという考えもある。

私もPro版に関しては今すぐには飛びつかないでおく腹づもりだが、Logic Pro X も魅力的だし、Waveformは付属のシンセがなかなかユニークで面白そうだし、ますます迷ってばかりの昨今である。

 

*1:昨年は確か Logic Pro X に近い価格にまで値下げしていたと記憶する。

MIDIデータの譜面化 (2) MuseScore

以下記事の続きで、今回はMuseScoreを使用した譜面化を検証してみる。

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SMFのインポート

前回と同様に、システム・セットアップデータが付加されたSMFを作成し、これをMuseScoreに読み込むとする。

SMF作成後、メニューバーから ファイル > 開く を選んで、対象となるSMF(.midファイル)を直接選択して開く。とりあえずデフォルトの解釈条件設定で読み込んで構わないと思う。不都合な部分は後から微調整する。

セットアップデータ中にプログラム・チェンジのイベントがあると、それに対応した楽器名称の割り当てなどを自動的にやってくれるので便利である。この辺はGarageBandとほぼ同様に対処できる。

ページ設定とPDF出力

1級課題曲のようなパート数が多い譜面の場合、デフォルトのページレイアウト(A4ポートレイト)ではページに収まりきれず、またとても見辛いため、ページサイズとスケールを調整してページに収める。

具体的には、メニューバーから レイアウト > ページの設定 を開き、ページサイズをA3横方向に選択、プレビューを参照しながらスケール値を調整する。その他の余白などはデフォルトで特に問題ないと思う。

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ページの設定が終わったら、もしPDFに出力したい場合は、メニューバーから ファイル > エクスポート を開いて、出力フォーマットから「PDFファイル (*.pdf)」を選んでセーブする(下例参照)。

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連続ビュー

自主制作でスコアを清書印刷したい場合などは、上述のPDF出力は重宝すると思うが、今回のようにMIDI打ち込み結果の譜面照合目的で使うのであれば、わざわざページ設定してPDF(あるいは紙)出力せずとももっと見やすいモードが用意されている。それが「連続ビュー」である。

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連続ビューの表示モードでは、一番左端の音部記号などがカラム固定されるので、視線を移動せずに横スクロールだけで次々に各小節を流してフォーカスでき、大変便利である。例えるならば、Excelのワークシートで左タイトル列をウインドウ枠固定で表示する方法と同様の効果である。

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調性の設定

上記の出力サンプルからも見て取れるように、デフォルトのままでも割と高品質な仕上がりになっているが、もう一工夫するとすれば、転調に伴う調号の修正を追加した方がオリジナルの譜面表記にさらに近づく。

これは非常に簡単で、調号パレットから該当する調号を選び、転調箇所の小節(どのパートでもよい)にドラッグ&ドロップするだけである。これをすべての転調箇所で繰り返す。

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総合的な評価

MuseScoreは自主制作した楽曲などの譜面の清書出力にはもってこいであろう。機能的にもSibelius等商用ソフトとほとんど遜色はないのではないか。いずれにせよMIDIデータの音程チェック程度の目的であれば、GarageBandの方で十分かと思う。しかし、どちらも制約条件が多々あることは念頭に置く必要がある:

  • 異名同音が散在する。臨時記号が場所によってシャープであったりフラットであったりと統一感がない。この辺は設定次第だとは思うが未確認。
  • ゲートタイムの長さによっては、オリジナルと異なる長さの音符で表記されることがある。譜面化時のクオンタイズに依存すると思うが、個別の修正は非常に面倒である。
  • ゲートタイムの解釈と関連するが、装飾音符やグリッサンドトレモロなどの細かい表現が加わると、オリジナルと著しく異なった表記となる。
  • MuseScoreでは、金管木管楽器などの移調楽器は自動的に(勝手に)移調表記する。MIDI検定1級課題曲スコアでは移調せずに in C で記譜されることがある。この辺はたぶん定義設定で変更可能とは思うが未確認。

これらを踏まえれば、装飾音符などの付加表現がない部分に限定して照合チェックに使う方がよさそうである。それ以外は従来通りにピアノロール上で何度か検証する方が間違いがない。またドラムとパーカッションもわざわざ譜面化した照合は不要と思われる。

MIDI検定1級演習 2017年課題曲 (1) 概観

時の経過は速いもので、本年度MIDI検定1級試験の本番までいつの間にやらあと3ヶ月となった。そこで一応最後の演習・準備として、昨年2017年度の課題曲を実践演習することにしたい。

個別詳細なテクニックや注意点などについては演習がてら順に追記していくつもりだが、今回はスコア全体や制作規定書にざっと目を通した印象および注目点等を簡単に書いておくとする。

なお、私は本作以外に3曲の過年度課題曲演習をすでに手掛けていて、それぞれ譜面解釈などの注意点やMIDI打ち込みテクニックに関するちょっとした注釈シリーズ記事を書いているので、興味ある方はご参考まで。

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演習題材の概要

2017年課題曲は、ベートーベン交響曲第5番「運命」をラテン風にアレンジした作品である。これが全然クラシック風ではなく、パーカッションてんこ盛りのリズム隊が中心となった楽曲であるところが面白い。と同時に受験者泣かせの編曲であったようだが、これについては後述する。

前年2016年課題曲は、リズム・パートなしでボリュームの少ないクラシック風楽曲だったため、その反動で一転してリズムを全面に押し出したジャンルを持ってきた感はある。今年は果たして再度クラシック風に戻るのかどうか*1

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スコアおよび制作規定書概観

本曲の中心課題はパーカッションであろう。またエレキをどうリアルに表現するかも大きな課題の一つだと思われる。

分量

パーカッションだけで8パートから構成されるため、全パート(トラック)数が23とおそらく過去最大の構成数である。長さは78小節であるから、これはポピュラー課題曲の例年とそう変わりはない(若干少なめ)。

ただ幸いなことに、どのパートもほぼすべて8分音符で構成されているので、総ノート数の観点では極端に多いというわけでもないと思う。その他、例年見られるような表現がいくつか盛り込まれていないせいで、むしろ制作が楽な側面もある。

転調やテンポ変更など

テンポ変更は、冒頭導入部5小節(「運命」の有名なモチーフであるジャジャジャジャーン)から本編へ移るところ1箇所のみで、あとはずっと同じテンポのままとなる。変拍子は冒頭導入部のみだが、リズミカルな箇所ではないため特に難しくはない。

また1級課題曲としては非常に珍しいことに転調がなく、元ネタの「運命」と同じくハ短調(Cmin)をずっとキープする。この点はMIDI打ち込み上例年よりも楽である。

なお、テンポには"ca."記号*2が付されているが、1次審査用のMIDIデータでは記載数値の通りに作成する旨の規定がある。2次審査用のデータについてもわざわざ微調整する必要はなかろう。

システム・セットアップデータ

これは結論から言えば2級実技と同じ仕様である。ただし、セットアップ小節のテンポを BPM(4/4)=120 にする必要がある。この規定は1級発足当初はなかったのだが、2016年課題曲にもあり、たぶん近年になってから追加されたと思われる。おそらく今年も同様であろう。

移調など

ベースとコントラバス、およびエレキについては、実音を記譜より1オクターブ下げて打ち込む必要がある。ただし、ベースは音源の都合上再生時は記譜通りにする(Studio One の音源 Presence XT の場合)。

その他の移調楽器はない。

音源音色など

エレキは2パートあって、さらにディストーションとミュートの途中エフェクト指定もあり、音色の選定が一番肝となる。2011年課題曲演習で検証したように、Studio One (Prime) の Presence XT に入っているギター音色だけでもギリギリ対応可能とは思うが、GarageBand や他の音源音色を当てはめた方がむしろ効果的かもしれない。この辺は後日検証する必要があるが、制作の手間を考えれば可能な限り Studio One だけで済ませて妥協したいところではある。

コントラバスは、ボウイング奏法の音色が Presence XT にないので、別の音源で再生させる必要があるが、これは実は2016年課題曲でも同じ問題があった。詳しくは後日。

装飾音符

これも1級課題曲では珍しく、本曲では装飾音符が一切ない。ちなみに、最近の傾向として、装飾音符は1次審査の対象外となっている(何らかの表現データが入っているか否かのみチェックされる)。

類似表現としては、エレキのベンディング(チョーキング)が数カ所見られるが、これらはすべてピッチベンド・チェンジを使えばよく、MIDI打ち込み上は装飾音符よりも容易である。

弦楽器

バイオリンのパートでは、1級で定番のトレモロとトリルが案の定盛り込まれている。これらはすでに他の課題曲で解説済みだが、復習を兼ねて後日再度触れることにしたい。

ヴィオラはハ音記号で記譜されているため、五線譜の第3線をC3(中央ド)とする。

"Violoncello"は普通にチェロの音色で対応すればよいと思われる。

パーカッション

パーカッションについては、以下の3点で特異な点が見られる。

  • 音色別に全部で8つのパートから構成される。
  • スコアはいわゆるドラム譜に類するフォーマットではなく、GMパーカッション・マップのノート・ナンバーに対応する音符をそのまま五線譜上に記してある。したがって、GMパーカション・マップとの照合が必須となる。DAWでのMIDIデータ入力時においても、ドラム用編集モードではなく通常のピアノロール表示の方がよい(後日詳述)。
  • 8パートに分解されているが、MIDIチャネルとしてはすべて10チャネルに割り当てられている。すなわち、DAW上は8トラックで分解構成して編集・書き出し、付け加えるシステム・セットアップデータでこれらをすべてチャネル10に割り当てる。ちなみにDominoはこのやり方で対応できる。

基本的にパーカッションは同一パターンの繰り返しが多いので、MIDIイベントのコピペで省力化できるが、同一と見せかけて細部が微妙に違っているパターンで罠に引っかかることがないように細心の注意を要する。

制作手順としては、先にこのパーカッション(およびベース)を潰しておけば、後はかなり楽になると思う。

*1:過去の傾向から推してクラシック風楽曲は比較的易しいので、個人的にはクラシックの方がありがたい。

*2:circa (=about) ということであり、「おおよそ、約」の意味。

MIDIデータの譜面化 (1) GarageBand

MIDI検定2級2次試験およびMIDI検定1級での1次審査対応において、各ノートのピッチとタイミングの確認は十分に尽くす必要があるが、視認性があまり良いとは言えないピアノロール編集画面上での目視検証だけではどうしても限界ある。

そこで補助手段として、MIDIデータ(SMF)を譜面化してオリジナルのスコアと比較し、突合チェックする方策を考える。

最近のDAWには譜面化機能が標準搭載されているものも少なくないようであるが、そうでない場合の代替案として、以下2つの無償ツール援用案が思いつく:

  • GarageBandのスコアエディタ機能を使う。
  • MuseScoreにインポートして譜面化する。

今回は、前者のGarageBand(以下GB)のスコア編集機能について簡単に検証する。MuseScoreに関しては稿を改めて追記することにしたい。

SMFのインポート

まず、システム・セットアップデータを付加したSMFを作成し、これをドラッグ&ドラップしてGBに読み込む*1

GBでは、プログラム・チェンジのイベントがあるとそれに対応する適当なインストゥルメントを自動で割り当ててくれる。また、テンポなどのメタイベントも読み込んで解釈する。もしGBの音源を使用して再生確認したい場合は、システム・セットアップデータ付加後のSMFをインポートした方がよいだろう。もっとも、今回のように譜面照合チェックだけが目的であれば、完全なSMFではなく部分的なMIDIイベント(リージョン)を読み込んで確認しても問題はない。

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なお、SMFをそのままas-isでインポートする際は、キー設定をCmajのままにしておく。楽曲の調性に合わせて変更すると、元のMIDIデータが意図せずに転調してしまう。若干紛らわしいのだが、これはあくまで一括転調用の機能のようである。

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スコアエディタ

GBの譜面表示はあっけないほどに簡単で、譜面表示したいMIDIリージョンを選択し、「スコア」表示ボタンに切り替えると即座にピアノロールから譜面編集モードに変換される。この辺の操作体系はたぶん上位バージョンの Logic Pro X もほぼ同じであると推測する。

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上図の通り、五線譜は緑色で音符と色分けされ、また譜面は一番下の編集領域にて左右のスクロールだけで連続して確認できるため、特定パートの譜面チェックが非常にやりやすいUIだと思う。1級でも問題なく対応できるのではないか(後日再検証)。なお、スコアエディタの一般的な使用方法については、下記の公式ヘルプを参照されたい。

support.apple.com

制約条件

自動変換表示される未編集のスコアに関しては、私が認識する限りで以下のような制約条件があるので、譜面照合時にはそれらを踏まえて解釈対応する必要がある。

  • 調性はセットできないので*2、該当する各音符にはそれぞれ臨時記号が付く。
  • 装飾音符周りは必ずしもオリジナルと同様に記譜されるわけではない。特に非常に短い音価の装飾音符はうまく表示されない(下例参照)。装飾音符付近のみ別途ピアノロールで再確認する必要がある。

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  • C3を境にして高域と低域にまたがる和音は上下段に分けて表示されるので、読譜と照合確認が難しい、というかとても面倒である(無理ではないが)。

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  • 標準的なドラム譜表記には対応していないため、ドラムおよびパーカッションについてはこのような譜面照合チェックは事実上無理である*3

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*1:私はシステム・セットアップデータ付加前のSMFを Studio One (Prime版)で作成し、Pythonプログラミングによるバッチ処理でセットアップデータを一挙に付け加える、というちょっと特殊なアプローチで制作しているのでこうなる。最初からGBでMIDIを打ち込めばよいではないかと思う向きもあるかもしれないが、残念ながらGBはMIDIデータを書き出せないという機能制約がある。

*2:ここはひょっとしたら何かの設定で変更可能なのかもしれないが私は確認できなかった。ただし、譜面照合目的だけであれば特に大きな支障にはならないが。

*3:1級課題曲によっては、時折ドラムとパーカッションが1次審査の対象外となることがあり、その場合は全然影響がない。

ソング間のトラック丸ごと複写について (補足)

以下の元記事に対して id:psycholococolo さんよりコメントを頂き、Studio One の場合の対処方法をご教示くださったので、謝意を述べるとともに、本記事で改めてまとめておきたい。

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別のソングで使った特定トラックの設定(音源音色やエフェクト、場合によってはMIDIイベントも含む)を流用したいという課題に対して、Studio One ではトラックやMIDIイベントの単純なコピペ操作では実現できないのだが、ちょっと回りくどい別法がある。

ソングファイルの中身を展開表示する

複写元となるソング・ファイルを Browse > Files メニューより特定し、その中身を展開表示する必要がある。ソング・ファイルはデフォルトでは展開表示していない状態なので、ファイルを選択して右クリック、コンテキスト・メニューより "Show Package Contents" を選んで実行する。

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すると、以下のようにサブフォルダー付きで中身が展開表示できる状態になる。用が済んだらデフォルトの非表示に戻すことも可能である。

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サブフォルダーの中身を見る

各サブフォルダーの概要は以下の通りである。

Performances

演奏データすなわち楽曲中のMIDIイベントがすべて格納されている。これらはさらに各トラック毎サブフォルダーに分割して保存されている*1

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Presets

これはさらに Channels と Synths に分かれる。

Channels

エフェクターの設定が保存されている。"Main" チャネルはマスターに対して適用しているエフェクトが入る。

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Synths

各トラックのインストゥルメントの設定(音色パラメータおよびFXなどの設定を含む)が格納される。Prime版の場合は内蔵音源の Presence XT のみとなる。

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各要素をドラッグして転写する

上述の各構成要素は、ドラッグして左側の編集画面へそのまま転写できる。下例では、ある特定のインストゥルメントの設定を左編集画面にドラッグし、その設定を引き継いだトラックを新規挿入している。MIDIイベントやエフェクトの設定も同様にしてドラッグすることで転写可能である。

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将来の機能強化に期待

以上の操作で一応は目的を果たすのだが、いかんせんBrowseメニューにおけるソング・ファイルの中身の展開表示がまるで隠しコマンドのようでわかりにくく、また手数が多い。ここだけなぜこのようなあまり洗練されていないUIのままで放置されているのか理解に苦しむところである。

これはやはりトラックを選択して丸ごと(上で言う所のPerformancesとPresetsに含まれる要素すべて)のコピペが可能となる機能が必須であろう。ニーズが多く、CubaseやTracktion等他の主要なDAWでは当たり前になっている機能ゆえ、同様に考えるユーザは少なくないようである。次期バージョン4あたりで改修されることを望みたい。

answers.presonus.com

*1:下例はドラム・トラックに対して "Explode Pitches to Tracks" コマンドを適用しているので、さらにスネアやキック等の各楽器パーツ毎に分解されている。

コード理論の新しい教科書

和声すなわちコード進行の理論は、MIDI検定実技では直接必要となる場面はないものの*1、自主制作ではある程度は知っておいた方がよい有用な知識の一つである。

コードの基礎理論に関する手引きやウェブ・チュートリアルの類はそれこそ星の数ほどあって、私のような初心者はどれから手をつければよいやら戸惑うばかりだが、昨年11月にリットー・ミュージックより出版された「使える!コード理論」にたまたま巡り合って学習してみたので、一通り読んだ後の感想などを書いておく。購入検討の参考になれば幸いである。

www.rittor-music.co.jp

倍音の原理と和音

本書の「倍音主義」とは、そもそも和音(ダイアトニック・コード)の構成音がなぜあのようになっているのか、という根本原理について、整数倍音の積み上げから丁寧に解き明かしているところに由来する。特に、4和音セブンス・コード中のセブンスの音が(近似的に)ルートの7倍音から決まっているところは「あーなるほど」と明快である。

ちなみに倍音の積み上げといえば、これはピタゴラス音律の基本原理とほとんど同じだろうと思う。その意味では講談社ブルーバックス「音律と音階の科学」と合わせて読むと理解がさらに深まるのではなかろうか。本書は文句なく名著で、私も昔に読んだことを思い出した。

bookclub.kodansha.co.jp

コード理論を使いこなすための土台作りに

Part 1から3までのダイアトニック・コードの基本とドミナント進行を中心とする解説はド定番中の定番だが、どれも簡潔に整理されていて比較的初心者でも飲み込みやすい方だと思う。コード記号の標準的な書き方・読み方ルールの解説も懇切丁寧で、とても理解しやすい。また、各章末尾に簡単な演習問題が付いているので、復習がてらにDAWで打ち込んでみるなり、キーボードで弾いてみるなりして実際の響きを確認しつつ、ステップ・バイ・ステップで学習を進める配慮もなされている。

本書の一番の中核は、Part 3 の「曲作りの応用テクニック! その1.ドミナントコード百花繚乱」で、時間的余裕があまりない人などはおそらくこのパートを通読するだけでも基礎知識の整理と新たな発見に役立つのではないか。代理コードや裏コード、セカンダリー・ドミナントといった代替的なコードの考え方と使い方はすべてドミナント進行のバリエーションの一環として解説されているので理路整然と理解しやすい。sus4やdiminished、augmentedの効果などについても同様である。

Part 5 のテンション・コードと Part 6 の転調に関するパートはやや上級課題で、たぶん本書だけでは完全マスターは難しいと思うところもある。テンションに関しては、標準的なナチュラル/オルタードの区分ではなく、ダイアトニック/ノンダイアトニックという独自区分で解説が試みられている。テンション解決先はアプリオリに定義づけされているため、そういうものかと思って丸覚えするしかないような理不尽さがあって、難解といえば難解である。これは Part 2 のノート・コネクションについても同様で、この辺は少なくとも私は消化不良であった。ただし、こういう分野があるということを頭の片隅に置くだけでも有益だろうと思う。

他書併読も必要

本書の内容がある程度すんなりと私の頭に入ってきたのは、おそらく本書を読む以前に多少なりとも事前知識があったせいかもしれない。たとえば、私は以下のSleepfreaksの連載講座をチェックしていた経験があるので、基本の下地はすでに何割かは完成済みの状態で本書を読んだことになる。

sleepfreaks-dtm.com

そういう意味では、本書だけではなく、二、三他の基礎講座を事前もしくは同時並行で齧っておいた方が咀嚼しやすいのではないかと感じる。部分的にせよ、他書(ウエブ・チュートリアルを含む)の方が説明が上手だったり、相性などがあるからだ。

特にテンションなどの上級トピックについては他教材で何度か補習しないと身につかないと思う(私自身を含めて)。

将来課題: 実際の使用例分析で楽しみながら体得

本書のみならず理論書というのは、そういうものかと割り切って結局パターンを丸覚えするしかないような無味乾燥なところが大なり小なりあって、一回や二回ではなかなか腑に落ちない。

もっと応用力を付けるためには、実際の楽曲分析で慣れ親しんで行くというのも一法ではなかろうか。その点では、本書巻末付録の「めっちゃ使える! コード進行常套句」に収められている典型的なコード進行の解説集が非常に有益ではないかと思う。これを一つ一つDAWで打ち込んで再生、耳で覚えることをこのゴールデン・ウィークの宿題にするのは良いアイデアかもしれない。

人気楽曲の本格的なコード進行分析については、以前にも触れた下記サイトが面白い上に大変勉強になる。

chords-map.net

記憶に頼らずツールに頼るべきか

実は私は、コード進行の理論書を読んでプロ音楽家ばりに縦横無尽に使いこなそうなどという大胆な目標は持っていなくて、コード・ヘルパー等プラグインまたはDAW搭載のコード進行機能を駆使するための基礎固めができれば十分と思っている。

というのも、コード進行はお決まりパターンのオンパレードなので、丸覚えせずとも大半はシステム的に対応可能であるはずだからである。とりわけAI隆盛の昨今、その手のツールは続々登場しつつあり、先進的なDAWであるWaveformではすでに搭載済みである。もっと本格的な支援ツールとしては、Orb Composer などが登場している。

www.youtube.com

www.orb-composer.com

 

*1:コード理論を一切知らなくても譜面を読めさえすればMIDI検定の対応は可能。

MIDI検定2級2次試験の成績表交付など (2)

昨日記事の続き。合否通知書に同封されている採点シートと全体講評について簡単に触れておく。

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採点シート

2級実技の結果については、A4用紙一枚に一覧表形式で、自分がミスした箇所の全明細を明らかにしてくれる。たとえば、私の場合はピッチ・ミスが1箇所あったので、「3C 9.1.000 G ピ」という記号が記載されていた。すなわち、3チャンネルの9小節第1拍目のGの音程が間違っていた、という指摘である*1

採点は2名によるダブルチェック方式となっており、第1採点と第2採点の結果を突合して総合評点が決められる。私の場合、「不要RPN削除忘れ」のレギュレーション違反は第1採点では見逃され、第2採点で発見されていた。

このように自分が間違った箇所がすべて明らかにされるので*2、復習とルール理解の再確認にかなり役立つと思う。特に、今回不合格となってしまった人は次回挑戦に向けて必ず見ておいた方がよい。

情報が乏しいのであくまで想像だが、おそらく1級1次審査の結果についても同様な採点レポートが提供されるのではないかと思う。

全体講評

個人成績表とは別に、「2級2次試験受験者の皆さまへ」と題して、今回試験の全体講評が同封されていた。出題者講評は1級では協会サイト上で毎年公開されるのでお馴染みであるが、2級に関してはネット上では公開されず、あくまで受験者だけに通知されるようである。

丸々引用は控えるが、以下簡単に要点をかいつまんでまとめておくとする。今後2級2次を受験される方や1級チャレンジに向けての参考になると思う。

オクターブ違いによる減点が多い

これは1級においてもしばしば指摘されている傾向のようで、はっきり書かれてはいないものの、ベースを1オクターブ下げてMIDI入力するルールが周知徹底されていないのではなかろうか。今回はどのパートも 8va のオクターブ記号が付いておらず、またギター音色が含まれていなかったため、ベース以外にはちょっと考えづらい。

本ブログでは幾度となく書いたことだが、昨今のDAWプラグイン音源ではベースはほぼ例外なくすでにオクターブ下げた音色になっているために、記譜通りに打ち込んで再生してみて問題がないと思い込んでしまう人が多いのではないか。端的に言って、ベースのオクターブ下げはもはやGM音源固有の特殊ルールになってしまっており、現代的なDAW主体のユーザにはピンと来ないのも無理からぬと思う。

パーカッションのノート番号ミス多発

2級実技課題曲のドラム譜では、標準ドラム譜に準じてどの音符がどのノートナンバーに対応しているか逐一指定されているので、丁寧に譜面を追えば間違えようがないと思う。しかし反面リズム・セクションで怖いのは、間違ったままでのコピペ対応で傷口を広げる事態である。

私の経験から思うに、リズム系のMIDI編集画面において、ピアノロール上にノート番号と各楽器名称が明示されるDAWでないとドラム・パーカッションの入力は困難を極め、ミスを誘発する可能性が高い。この点に関しては Studio One の選択は大正解であったと痛感する。

*1:当然だが記号凡例を記載した文書も添付されている。

*2:50点以下足切り中断の場合を除く。