DAW悪戦苦闘記

DAWやMIDIを通じてDTMを楽しむ記録。MIDI検定試験にもチャレンジするなり。

MIDI検定1級演習 2011年課題曲 (5) パーカッション

前回の続きで、パーカッションに関して補足する。

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1次審査の評価対象外

パーカッション類すべてについて、MIDIデータの正確性自体は評価されないので、ある程度自由に制作できる。もっとも、一応制作規定書にはGM準拠配列の参考ノートナンバーが掲載されているので、その通りに打ち込んでも構わない。というか私のような初級者はその方が無難であろう。

上級者は音質重視で敢えてGM準拠配列以外の高級音源を使うことも考えられる。あるいは、とりあえず1次審査用に譜面通りのMIDIデータを制作し、2次審査用にはリアルなオーディオ・ループ素材に差し替えるという裏技もやれなくはない。ただし、いずれも制作環境および時間的余裕の有無次第ではあるが。

またシーミレ(simile)に関しては、厳密な繰り返しをせずに適当なアレンジを加えてもいいと思う。むろんこちらも本番制作時間に余裕がある場合に限られる。

スコアの解釈法

パーカッションは種類も豊富な上に、ドラムと違って標準的な記譜ルールは確立していないようなので、ドラム譜からの類推と常識判断で解釈する。

ボンゴやコンガなどの音高のある打楽器類は、五線譜上のピッチの高低差に応じて各パーツを割り当てる(ことになるはず)。

一方、音高のないトライアングルやギロの譜面は、各アーティキュレーション記号の指定によって自明であろう。たとえば、ギロの横棒はロング、トライアングルの丸はオープン等々。

コンガとトライアングルの譜例は下図の通りである(数字はGM配列のノートナンバー)。

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なお、音高のあるパーカッション類のハイとローのGM配列を見ると、ハイが低いキーに、ローが高いキーにしばしば配置されているため、ピアノロール画面での打ち込みの際勘違いしないよう注意を要する(譜面のオタマジャクシと上下逆転する)。上図のコンガもその一例である。あまり好ましくない仕様だが、なぜこのような紛らわしい配置になったのかは不明。

音源と音色

好みにもよるが、Studio One 3.5 Prime版の内蔵音源である Presence XT のドラム・キット音色では "Basic Kit" が無難で一番使いやすいと思う。キーの割り当てがGM準拠配列であり、ドラムからパーカッション音色まで一通りすべて対応できるからである。あるいは "Classic Kit" でもよいが、2級実技含めて "Basic Kit" で統一しておけば本番であれこれ迷わずに済む。

なお、"Percussive Kit" は実は名ばかりで、パーカッション楽器の音色が一切含まれておらず、ドラム音色しか入っていないので、パーカッションのパートでは全然使えない。

MIDI検定1級演習 2011年課題曲 (4) ドラムのフィルインその他補足

以下記事の続き。今回はドラムのフィルイン対応と繰り返し記号の解釈について補足する。

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フィルインとソロのアドリブ対応

フィルインとソロについては制作者(受験者)の裁量に任されており、どのようなパターンで埋めても構わないとされる。また当然ながら1次審査の評価対象外となっている。

自由裁量といえども曲の雰囲気にそぐわないデタラメなパターンを加えるわけにはいかないため、匙加減が難しいところであるが、ここでは2種類に分けて対応することを考える。

2種類のフィルイン

一つは、1小節分丸ごとのフィルインまたはソロ演奏で、曲調(リハーサルマーク)の変わり目導入部分を担うものである。このように重要度が高く、目立つところ限定でドラム音源のプリセット・パターンを援用し、本物っぽさを狙う。本曲では3箇所限定である。

もう一つは、上記以外で1小節未満の小さいオカズを指す。これらすべてを逐一プリセット・パターンから選び出すのはかえって非効率であろうから、ここは自分で考えて基底パターンに一捻り加える対応をする。この辺は自分のお気に入り曲を参考にしつつ、スネアとタムの適当な連打などで構わないと思う。

プリセット・パターンの援用例

ここでは私が幾度か使用経験のある MT Power Drum Kit 2 を例にとる。と言っても、説明を要しないほど簡単で、気に入ったパターンを選んでDAW(本例では Tracktion 6)の該当トラックにドラッグ&ドロップするだけでMIDIデータが書き出される(下図参照)。

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私が使用中の Studio One 3.5 Prime版(以下S3)ではプラグインをサポートしていない関係上、併用している Tracktion 6 で一旦書き出さざるを得ないが、特定のMIDIイベントだけをさらにSMFに出力し、S3に戻すことも可能である。

本ドラム音源の注意点として、基本的にはGM配列に準拠しているものの、タム類は制作規定書の仕様を満たさないため*1MIDIデータをS3に戻した際には必要に応じて修正を加えることである。

繰り返し記号とシーミレの相違

本曲のドラム譜では、繰り返しパターンの指図に関して2種類の記法が出現する。すなわち、ドットと斜線を組み合わせた厳密な繰り返し指図と、シーミレ(simile)による指図の2つである。これらの一般的な解釈法については下記記事を参考。

unisession.com

ここでやや曖昧で問題になるのが後者のシーミレで、ドラム・パーカッションの場合は、前小節パターン(2小節構成等を含む)を同様に繰り返すという指示であり、本来の解釈では厳密に同一性を保つ必要はないようである。本曲の場合、シーミレはボサノヴァ調部分の一箇所のみであることを考慮すると、元パターンをちょっと崩して多少変形しても音楽表現としては許容範囲だと思われる。

しかし、MIDI検定1級1次審査におけるMIDIデータのチェックでどのような評価を受けるか明記されていないため、1次審査用SMFでは厳密な繰り返し記号と同じ解釈をした方が無難だろう。

なお、S3で編集する際の繰り返しコピーは単純な複写ではなく、複製共有(Shift+Dキー押下)の方がよい。同一パターンの複数小節に渡る打ち込みミスの修正を一回で対処できるからである(以下の過去記事参照)。

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*1:制作規定書ではノートナンバー47、45、43および41を使うことになっている。一方 MT Power Drum Kit 2 では、50/48がハイタム、47/45がロータム、43/41がフロアタムに割り当てられている。したがって、規定書のノートナンバー指定ではハイタムをカバーできないことになる。

MIDI検定1級演習 2011年課題曲 (3) ドラム基本パターン

以下記事の続き。

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ポピュラー曲の場合、基本はドラム・パーカッションとベースを最初に打ち込んで楽曲の背骨を作るところから手掛け、コードやメロディを後から乗せるアプローチが一般的かと思う。 そういう意味では、昨年2016年課題曲のクラシック風楽曲とは違い、今回はパート別に仕上げていく手順となる。

標準的なドラム譜の表記法

本課題曲の制作規定書にはドラム譜の解釈について一切記載がないため、概ね標準的なドラム譜のルールに従うことになる。しかしドラム譜はシンバルの表記等細かいところでいくつかバリエーションがあるため、若干の類推を働かせる必要が生じる。

本曲の記法に一番近いスタイルの解説としては、京都精華大の下記記事を参照:

ドラム譜の読み方

追加の補足事項として、

  • 音部記号は、本曲ではヘ音記号となっている。
  • クラッシュ・シンバルは、本曲ではD3の位置に丸囲みのXで表記してある。ノートナンバー49もしくは57で対応するよう指示がある。
  • スネアと同一ピッチ上にX表記はサイド・スティックである。なぜか制作規定書に指定はないが、通常はノートナンバー37を使用することになる。
  • 各タムの五線譜上ピッチ位置が一般的な表記法と若干相違する。

以上まとめると、本曲の記譜ルールは下図の通りとなる(数字はGM配列のノートナンバー)。

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GM準拠配列によるノートナンバーの指定

ドラムの音色に関しては、制作規定書に音色マップ(各楽器音色とノートナンバーの対応定義)が記載されており、これに従う必要がある。要するに、GM準拠配列を前提としてMIDIデータを打ち込む。

なお、タムは4種類定義されており、高い方から順にノートナンバー47、45、43および41を使用するよう指定してあるが、本曲含めて通常は3種類(ハイ、ローおよびフロア)しか使わないので、45、43と41の3つで対応すればよい。ちなみに Studio One 内蔵音源の Presence XT 搭載ドラム音源は4種類に対応可能である。この点は音源によってまちまちなため、使う前に仕様を確認するなど注意を要する(GM準拠ではなく独自配列のものも少なくない)。

フィルインとソロ演奏部分の対処

これについては次回に触れる。

最終的な音色加工について

エフェクターの追加プラグインを使えない Studio One 3.5 Prime(以下S3)では、単独のドラム・トラックだと線が細くて他パートに埋没する傾向があるため、音色を重ねる等一工夫加える必要がある。

労力最小限で最大の効果を発揮する対処法としては、S3からドラム・トラックをオーディオに書き出し、これを Tracktion 6 にてエフェクト加工後*1、再びS3の別トラックに戻す。これを元のMIDIトラックと同時再生すると適度な厚みが加わり、多少なりとも音圧が補強される効果を見込める。

*1:さしあたりエンハンサーとLoudMax等コンプレッサー系統を入れてキック中心に持ち上げる。

MIDI検定1級演習 2011年課題曲 (2) 下準備

MIDI検定1級課題曲演習の続き。今回はMIDI打ち込み前の下準備について。使用DAW例は Studio One 3.5 Prime版(以下S3)とする。

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マーカーとアレンジャー・トラックの設定

2級実技と異なり、1級課題曲はそれなりに長い尺の完成品である。例えば2011年課題曲については、全部で88小節から構成される。

これぐらいの規模になると、MIDI打ち込み着手前には、節目となる箇所へ目印を入れて楽曲の骨格を作り、データ作成時に迷子にならないよう対策しておく必要がある。これは絵画で言えばいわば補助線のようなもので、初級者でも常識の範疇とは思うが、一応基本の基本として認識しておく。

具体的には、譜面記載のリハーサル・マークとページをあらかじめすべて入れる。これは最低限度の目印で、S3ではマーカー・トラックに旗を立てて区分けする*1

さらに、曲調を示す構成注記をアレンジャー・トラックに入れるとよりわかりやすいと思う。2011年課題曲は、Fast Rock、Bossa Nova および Rock の3部構成となっている。この構成にしたがって色分けでもしておくとよい。ちなみにアレンジャー・トラック機能は、つい先月のメンテナンス・アップデートでPrime版でも利用可能になった。

下図は2011年課題曲の場合の一例である。リハーサル・マークをアレンジャー・トラックに入れて色分けしてもよいと思うが、その辺はお好み次第である。なお、譜面照合上2小節目からMIDIデータを入れて行く。1小節目はシステム・セットアップ用に確保されているので空白とする(Studio One にはまったく無関係)。

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テンポ・トラック

1級課題曲はしばしば曲中でのテンポ変更を伴う。これも忘れないうちにあらかじめ入力しておいた方がよいだろう(上例最下段のテンポ・トラック参照)。

2011年課題曲には含まれないが、もし拍子の変更(変拍子)がある場合は、同様に事前入力しておくべきと思われる。

*1:マーカーはSMFにメタイベントとして書き出される。

ステップ・クリップ (Tracktion 6) によるドラム打ち込み

Tracktion 6 で強化されたステップ・クリップ機能を用いてドラム・パートのMIDI打ち込みを効率化する方法について備忘録的にまとめる。Tracktion独特なUIのせいもあって、ちょっとしたコツが要るため、今書き留めておかないと私自身忘れかねない。

これは下記記事の続きでもあるが、特にMIDI検定実技に限らぬtipsだと思うので、別出しで書いておきたい。

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なお、公式チュートリアルとしては下記動画を参照されたい。

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チャネル割り当て

ステップ・クリップ内の各行の楽器の割り当てについては、標準的なドラム譜(次回触れる)の音符の高低順に合わせて上下順を設定すると、楽譜と照合しやすくなって入力ミスを回避できる。これはピアノロール入力に比べた場合の利点の一つであろう。チャネルの増設は、クリップのプロパティから"Add Channel" を押下する。

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当然ながら各チャネルごとに、発音させるノートナンバーを定義してやる(下図参照)。どのキーに何の楽器を割り当てているかは音源次第であるが、少なくともMIDI検定実技の場合は、GM準拠配列をサポートしている音源を使う必要がある。

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設定保存とその呼び出し

上述のチャネル設定は、ユーザ定義プリセットとして保存し、後から再利用できるようにしておく。下図の通り、クリップのプロパティ右下より "Create Preset" を押下することで保存可能であるが、その際、コンテキスト・メニューより "Exclude patterns" を選ぶと、パターン(中身)なしの入力テンプレを作成できる。

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保存したプリセットは、左側ペインの Presets > Step Clips より保存名一覧を表示の上で、該当するファイルをターゲットのトラックへドラッグして挿入する。

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クリップの長さの調整

各ステップ・クリップに左下にはセクション番号が自動的に付与されており(デフォルトでは初期値の"1"が入っている)、これをクリックすると、下部プロパティにクリップ長の設定項目が表示される。

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肝となるのは、グリッド縦軸の刻み幅となる "Step Length" (ステップ長)と、クリップ中の総ステップ数を指定する "Number of Steps" の2つである。この2つの組み合わせでクリップの長さを決定する。

ここで "beat"すなわち一拍は四分音符であることを念頭に置く。上例では "1/4 beat" となっているので、この場合は各ステップが16分音符であり、ステップ数は16であるから、このクリップはちょうど1小節分の長さを構成する(拍子記号が4/4の場合)。

仮に2小節以上等もっと長いステップ数を定義した場合は、パラメータ編集後にクリップの右上矢印をドラッグして引き延ばす。

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ベロシティの編集

ベロシティの編集については、クリップのチャネル表示列上の V/G (Velocity/Gate Time) 表示編集モードをオン(白から黄色に反転)にした上で、編集対象となるチャネルを選択状態にし、下部ペインにてバーの長さをドラッグ修正する。

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使えそうだが問題点も

以前からわかっていたことではあるが、ここでは Trackion のMIDI編集UIの使いにくさについて改めて指摘しておく。

この1週間に試してみて、予想外に入力が捗らないことに気づく。要するに、グリッドが色分けや線の太さで拍子区分けされていないので非常に見辛いのである。上に貼り付けた2、3のスクリーンショットからもその一端は窺えると思う。

また、チャネル名表示に関しても、表示非表示がころころと変わってちょっとストレスフルである。

最新版のWaveformでは、MIDI編集画面に関しては Studio One 並みにUIが改善されているようだが、ステップ・クリップに関してはそのままのようだ(下記チュートリアル動画参照)。

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こうした残念な事情もあって、私は結局ドラムのMIDI打ち込み自体は Studio One に戻すことにした。

実は Tracktion 6 上で使用した音源 (MT Power Drum Kit 2) のノートナンバー割り当てで若干支障があったことも関係しているのだが、これはMIDI検定固有の事情につき別途稿を改めるとする。

 

MIDI検定1級演習 2011年課題曲 (1) 概観

今月よりMIDI検定1級課題曲の演習に戻ることとしたい。昨年2016年度の課題曲演習以来久しぶりの再開となる。

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演習題材

今回は2011年度(第2回)の課題曲を取り上げる。実は本曲の1ページ目のみサンプルとして公式ガイドブック p.245 に掲載されていた関係で、過去にお試し演習をやってみたのだが、その続きを完成させる意図を含む。

2016年度が本格的なクラシック調だったのに対して、こちらは正反対とでも言うべきロック風楽曲で、リズム・セクションもがっつり盛り込まれている。

スコア概観

上述の通り、ロック風の典型的なポピュラー楽曲なので、表現の主軸がギターとドラム等パーカッションとなり、管弦楽クラシックとは全然異なる打ち込みテクニックを要求される。

分量

パート数18および小節数88で、A3用紙10ページから構成される。単純にパート数 X 小節数で測れば2016年課題曲の3倍弱のボリュームとなり気圧されるほどだが、各パートとも全休符が多く、また同一パターンの繰り返しが少なくないので、実質的には2倍程度という感じである。

1級課題曲の常として、クラシック楽曲は音数少ないが、ポピュラーはパート数含めてボリュームが増える傾向にある。ポピュラー曲の場合、本番では夏季休暇スケジュールをうまく調整してまとまった作業日を確保しないと物理的に対応できない懸念がある(いくらなんでも徹夜は避けたいかと)。

転調とテンポ変更

テンポ変更と合わせて2箇所転調がある。DAWでのデータ編集上忘れずに対応すべきはテンポ変更の方である(テンポ・トラックの編集)。Studio One 3.5 Prime版(以下S3)でのテンポ編集値は、書き出したSMFにメタイベントとして反映される。

同一パートでの途中音色変更

本曲は一部のパート(エレキ、アコギとキーボード1&2の4トラック)につき曲中での音色変更指定がある。SMF上は該当箇所にてPC(プログラム・チェンジ)を挿入する必要がある。

一般的にDAWでは、PC対応音源(マルチチャネル音源など)を使用しない場合、音色に応じて追加のトラックを設定するが、1次審査用のSMFと2次審査用のSMFの2バージョンを制作することになる*1

装飾音符のルール

2011年の規定書によれば、装飾音は「前打音をジャストクオンタイズとして、それに続く実音を四分音符=480の分解能において30ティック後ろに配置」せよとの指示がある*2。このルールは2016年課題曲のそれと異なり、近年変更されたと見受けられる。因みに2016年の規定では、装飾音の入力タイミングは評価対象外である*3

トリルとグリッサンド

エレキとストリングズにはトリル表現がやや多い。トリルは2016年課題曲で演習済みである。

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キーボードはグリッサンドを多用しており、いわゆる鍵盤を手で撫でるような奏法をシミュレートすることになるが、キーボード演奏に慣れている人は実演をリアルタイム記録でMIDI化した方が臨場感が出ると思う(私は無理ですが)。

フルートにもグリッサンドが一箇所あるが、管楽器はピッチベンド・チェンジで対応できる。

なお、グリッサンドのタイミングは1次審査の評価対象外となっているため、受験者側である程度自由に表現可能である。

ギターとストローク表現

アコギは5和音とか6和音の連打が頻出している。これは明らかにストローク(ストラム)奏法を前提としている旨解釈すべきだろう。

ただし、規定書によれば、ストローク部分は1次審査ではクオンタイズされたデータで作成せよとの指示があるため、1次審査用のSMFでは譜面通りの和音のままデータを入れることになる。

これとは別に2次審査対応でストローク表現を加えることになるが、MIDIデータで表現すべきか、音源対応がふさわしいか、は実際に再生確認するまでなんとも言えない。

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ドラムのアドリブ

ドラムはそこかしこにフィルインとソロ演奏の指定がある(音符の記載はない)。これは1次審査の評価対象外で、受験者のアドリブに任されている。最も安直な対処法としては、ドラム音源のプリセット・パターンを流用する方法が考えられる*4。あるいは自動作曲ツールを援用してもよいかもしれない。この辺はドラム演奏の素養がないと自分で真っ当なパターンを考えるのは難しいので、無理にゼロから打ち込む必要はないと思う。

ドラムは本曲の中核を構成し、終始鳴りっぱなしで打ち込みの分量が多いので、S3のピアノロール入力では手間がかかって入力ミスを誘発しやすい。Tracktion 6(以下T6)のステップ・クリップを使って効率よく制作した方が得策だと思われる。ドラムだけはどうしてもT6での制作がベターであるため、これをオーディオ化してS3に逆輸入というワークフローなってしまうが、これについてはまた後日追記したい。

音色については、規定書にてGM音源のノートナンバーが指定されている(Snare = 38 など)。したがって、ドラム音源はGM準拠配列のものを使った方が無難である。

なおドラム譜面は、2級2次実技のように各音符と音色ノートナンバーのマッピング情報が一切与えられないため(これはちょっと意外ではあった)、標準的なドラム譜の解釈通りに打ち込むこととなる。

評価対象外のパーカション

パーカッションは1次審査の評価対象外となっている*5。おそらく、GM準拠配列以外の音源音色を自由に使ってよいとの趣旨だと思う。規定書では一応参考までにGM音源のノートナンバーを提示してある(Guiro Short = 73 など)。

同一パターンの繰り返しでシーミレ(simile)指示が頻出しているため、前小節パターンのコピペで対応すれば結構早く完了してしまう。たぶん本曲の打ち込みでは一番簡単なパートだと思ので、なんなら一番最初に片付けてしまってよいかもしれない。ドラムほど複雑ではないからS3のピアノロール入力で十分対処可能である。

*1:これ以外の理由もいくつかあるため、どのみち1次審査用のSMFは2次審査用の編集データと分ける必要がある。そもそも2次審査用にはSMFを作成提出する義務はない。

*2:つまり装飾音一つを64分音符扱いにする。

*3:装飾音としてのデータがあるかどうかのみチェックされる。実音(親音)をジャストクオンタイズにして前打音をその直前に追加するなど受験者の裁量に任されるようになった。

*4:MIDIデータを書き出せるものであること。したがって、オーディオ・ループ素材のはめ込みは無理がある。

*5:ピッチとタイミングについては評価されないということ。しかしデータが入力されているかどうかは判定されるはずなので、1次審査でも完全にMIDIデータをオミットすることはできない(オーディオ・ループ素材で誤魔化すことはできない)。

Magentaによるメロディ生成 (4) コード進行の活用

前回記事の続編、というかおまけ。前回は単純に出だしの単音だけ与えてメロディを生成させてみたが、今回はコード進行の制約を与えるモデルを試用してみる。

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使用するモデル

今回は、Melody RNN ではなく、Improv RNN を用いる。

このモデルは、伴奏のコード進行をモチーフとして与えると、そのコード進行に合わせたメロディを生成する。プロアマ問わず、コード進行をいわば補助輪として楽曲制作するケースは非常に多いだろうから、生成モデルとしてはおそらくこちらの方が実用価値が高いと思われる。

生成用コマンドの例

DockerからMagenta起動後、以下のようなimprov_rnn_generateコマンドを投入する(詳細は公式ページを参照)。

improv_rnn_generate \
--config=chord_pitches_improv \
--bundle_file=/magenta-models/chord_pitches_improv.mag \
--output_dir=/tmp/improv_rnn/generated \
--num_outputs=10 \
--primer_melody="[60]" \
--backing_chords="C G Am F C G Am F" \
--render_chords

コマンド・オプションについては、前回見たmelody_rnn_generateコマンドのそれとほぼ同じであるが、本コマンド特有のものとしては、

  • backing_chords: モチーフとして与えるコード進行はこれである。デフォルトでは1小節ステップでコード進行を文字列として記述する(ステップの長さは変えられるが詳細は割愛)。本例では、C/G/Am/F のコード進行を2回繰り返して合計8小節となる。
  • render_chords: 上記 backing_chords で与えた伴奏コードが生成結果のMIDIデータ(SMF)に追加される(後述)。

生成MIDIデータの中身

生成結果のSMFは、メロディと伴奏コード進行の2トラックから構成される。このうちの後者は、ユーザがコマンド・オプションから与えたコード進行そのものである。生成ファイルの一つをDominoで開いてみると、以下のようなMIDIデータが観察される。

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生成メロディ

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コード進行

想定される使い方

音楽的に心地よく美しいとされるコード進行は概ね決まっており、またコード進行それ自体には著作権はないため、そのようなモチーフをどこかから参照してMagentaに与えてみればよい。たとえば、下記サイトは参照先の一つである。

chords-map.net

すると、それなりのメロディ候補を無数に生成してくれる。あとは取捨選択の上で、ループ素材なども駆使してリズムに工夫を重ねれば、比較的短時間で一曲制作できてしまうのではないか。

先進的なコード進行ヘルパーとしては、Waveform の Pattern Generator などが代表例だが、そのような高級ツールが手元になくとも、Magentaで相当程度ニーズは満たされると思う。

www.youtube.com