DAW悪戦苦闘記

DAWやMIDIを通じてちまちまとDTMを楽しむ記録+MIDI検定1級到達記

LANDRの試用感

AIで自動マスタリングするという触れ込みのWebサービス LANDR がずっと気になっていたのだが、無料サービスの範囲でちょっと試してみた。

daw-jones.hatenablog.com

 

結論から言うと、特に必要ないな、という印象である。

今回の試用サンプルは、MIDI検定2級2次試験の2014年2月期練習曲No.4のMIDI打ち込みデータを Tracktion 5 に取り込み、独自に音色加工やエフェクト処理を加えたそれなりの完成品である。

試しに高音圧マスタリング処理を選択してみたが、結果として、LANDRの加工結果とオリジナルにほとんど差異を感じ取ることができなかった。強いて言えば、オリジナルのやや歪みがちな所を抑えて若干まろやかにしてくれたような所はある。しかしこれも指摘されればなんとなく判別できるという程度であって、非常に微妙な違いでしかない。

今回は、オリジナルですでにコンプやエンハンサーなどを掛けてそこそこ良い感じに仕上げてしまっていたので、これ以上加工の適用余地がないという限界はあると思う*1。だとすれば、たとえばマスター編集に長けたプロがわざわざ有料でLANDRを使う意味はあるのだろうか、という疑問は残る。

当初はMIDI検定の1級実技で最後の仕上げに使ってみようかとも考えていたが、自分である程度以上のレベルのマスター編集をやる・できる場合はわざわざ使う価値はないだろう、というのが率直な感想である。

*1:一応LANDR側の注意として、オリジナルの方ではあまりコンプを適用していない素の状態でアップロードしてほしい、と促される。

クラシック風楽曲の生楽器対応フリー音源

MIDI検定2級実技の場合はGM音源使用でもまったく問題なく、芸術評価がない分、少々音色のクオリティに不満が残ろうが特に対策を打つ必要はないと思われる。しかし、1級実技の2次審査ではそうも行かない可能性が高い。そうなると、例えば2014年の1級課題曲のような本格的なクラシック風楽曲にも対応するため、ストリングズ等管弦楽の生音源に近い音色は準備しておいた方が無難である*1

私は自主制作では生楽器音源を多用する予定はないので、費用対効果を第一義に考え、当面はとりあえず無償で入手できるフリーの音源プラグインを使い倒すことにしたい。それを念頭にMacでも使えるフリー音源を探し回ったところ、結局下記の2種類に落ち着いた*2

Sample Tank Custom Shop

言わずと知れたイタリアの著名サンプラー音源メーカー IK Multimedia 社の提供。基本音色セットは無償無制限に利用可能で、後から有償で個別の音源を追加することもできる。ユーザ登録とソフトウエアのアクティベーションは必要だが、導入に大きな手間はかからない。

私は特にオーケストラ・ストリングズ系の補強のためにあちこち探し回ったのだが、Mac対応のフリー版となると、まともな音源セットはこれしか見当たらなかった。なお、Windows対応版であれば数も種類も豊富で、ストリングズ専用のフリー音源などもある。

Sample Tank Custom Shop の機能概要や入手方法等については下記メーカーサイトの記事を参照されたい:

www.ikmultimedia.com

 

簡単な製品レビューとしては、DTMステーションの下記紹介記事も参考になるであろう(2年半前の記事でやや古いかも):

www.dtmstation.com

本音源のストリングズは、ピッチカートなどのアーティキュレーションにもある程度対応し、ADSRパラメータやエフェクト調整などによって音色加工も柔軟にできる。ストリングズ以外では、エレピの音色も非常に良く、あれこれエフェクトを掛けなくてもそのままで結構使えると思う。また、MIDIのコントロール・チェンジには一通り対応しているようである。

TracktionなどのDAWプラグインとして発音させる場合の注意点としては、MIDIクリップのMIDIチャネルと Sample Tank 側の楽器チャネルを一致させること。基本的には両方とも1チャンネル使用で問題ない(マルチ・ティンバーで発音させない限り)。

VSCOパブリック・ドメイン音源

場合によっては、上記 Sample Tank 音源だけでは楽器の種類が不足するので、必要に応じてお好みでVSCOライブラリから選ぶことにする。これはもともとサウンドフォント素材として公開されていたものだが、有志によってVSTi/AUプラグインに変換提供されているようである。

bcvsts.blogspot.jp

 

私はまだすべての楽器音色を試聴したわけではないが、いくつか試した限りでは、どうも楽器によって音質にバラツキがあるように感じられた。したがって、この中のすべての楽器音色が必ずしも実用に耐え得るわけではないことに注意する。

私自身の感想を言えば、本ライブラリのベスト音色はピアノだと思う。他メーカー製のピアノ音源は高音強調で硬い音色が多数を占める中、これは柔らかめの優しい音で非常にクオリティも高く、生演奏に近い。逆にフルートはクリップノイズらしきものが混入しており品質に難がある(Sample Tank のフルートを使えばよい)。またクラリネットやバイオリンはアタックが遅い・弱過ぎる等ちょっと使えそうにない印象*3

*1:1級課題曲は、作成担当者である外山和彦先生の音楽志向や来歴も手伝ってか、傾向としてジャズ、フュージョンやクラシカル風味な(やや時代遅れな)曲が中心なので、生楽器対策がどうしても必須となる。個人的にはあんまり好みのジャンルではないが止むを得ず。

*2:私がここで取り上げた音源2つは、偶然にもギター講座オンラインの2016年プラグイン紹介記事でもピックアップされていたので参考まで: 2016年に使い始めて来年以降もお世話になるであろうフリーVST、VSTi12個

*3:概してバイオリンのサンプリング音色はアタックの扱いが非常に難しい。シンセのストリングズ系音色と混ぜて調整するなどの加工テクが必要かもしれない。なお、Sample Tank のストリングズ音色はこのようなアタックにまつわる癖や障害はなく、使い勝手が良い。

2014年2月期練習曲No.4の演習

今回は、第15回MIDI検定2級2次試験(2014年2月期)練習曲の最後の演習題材として、 練習曲No.4を取り上げる。

本曲は調性がFマイナーで、フラットが4つも付いているので、どのパートも正確なピッチでのノート入力に苦労させられると思うが、特に音数が多いクラヴィネット・パートが一番嫌らしく、しんどい所である*1。しかし、MIDIデータ編集の観点から注目すべきキーポイントはそれ以外の場所にある。

本練習曲の重要ポイント

読譜とニュアンス表現の両面で練習曲No.1〜3ではお目にかからなかったポイントをいくつか指摘しておきたい。

フルート譜面のオクターブ(疑問点)

普通のコンサート・フルートでは実音通りに記譜されることが通例らしいが、模範演奏に従えば、本曲では譜面表記よりも1オクターブ上げて解釈する必要があるように聞こえる。ベースとギターは1オクターブ下げなければならないことは既に習得済みであるが、それのちょうど真逆のケースとなる。

しかし譜面に注記ぐらい書いてくれてもよさそうなものだ*2。私も模範演奏MP3を聴いて初めて気付く。ここは他年度の練習曲も手掛ける中で再度確認していきたいと思う。

ちなみに、通常1オクターブ上げて解釈する必要がある楽器はピッコロである。

ベースのハンマリング

本曲では申し訳程度に2箇所だけ出現する。すなわち、第6小節4拍目のh記号2つがそれである。

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ハンマリングはピッチベンド・コントロールを使って再現する奏法の一つである。ギターのベンディング(チョーキング)と類似するが、大きな違いは、階段状に非連続変化させて一発で上げ下げすることである。一方のベンディングは滑らかな連続変化とする。 

具体的に述べる。ハンマリング対象のノートについては、音程が上がる前のピッチで入力しておいて(本例ではA2bおよびE2bを8分音符で入力してしまう)、ピッチを上げたい時点で一気にベンドを2半音分上げる。本例ではシステム・セットアップでベンドレンジの値が"12"(1オクターブ相当)指定であることに注意する。よって、2半音分上げるには1365だけベンドを上げる。上げた後では次のノートを発音する前に必ずゼロに戻す。

ハンマリングの詳細については、公式ガイドブックの§6-4「MIDIデータによる演奏表現」pp.228-230 を参照されたい。その方法に倣えば、Dominoでは以下のような入力形態となる。左側のイベントリストで入力値の正確性を忘れずにチェックした方がよい。

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中間値指定があるエクスプレッション

コントロール・チェンジ (CC) の指定値で中間値の記載がある場合、途中経過はそれを踏まえた上で変化させる。本曲では下例のようなシンセ・ブラスのCC#11エクスプレッション表現でお目見えした。この場合の変化のさせ方としては、概ねスマイルカーブを描きつつ途中の最低値を80にして元に戻す、という感じにデータを入れる。

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こういう場合のエクスプレッションは直線変化でも特に問題はないと思うが、S字曲線の方がより自然な感じが出せるであろう。

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fp(フォルテピアノ)の表現

本曲ではブラス・セクションのパートで強弱記号のfp(フォルテピアノ)が出現する。fpについては実は公式ガイドブックにも一切記載がないので類推するしかないのだが、常識的に考えれば、これは上記CC#11における中間値指定がある変化の特殊例と解釈できる。

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要するに、発音直後に指定中間値にすぐ減じてからじわりと増量すればよい。上記の譜例だと、該当する3和音を発音した直後にエクスプレッション値を一気に70まで下げ、その後ゆっくりと127まで戻す。ベロシティはこのパートの本来の基準値であるfのままでよい(変えようがない)。

具体的な実現方法は、下図のDomino入力例を見れば一目瞭然であろう。

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初心者が最初に取り組むべき練習曲セット

2014年2月期の練習曲4曲セットはこれにて全部消化、演習終了となる。やってみて感じたのは、2級実技に初めて挑戦する私のような初心者向けにはちょうどよい難易度ではないか、ということである。まったく偶然の発見だが、最初期のMIDI打ち込みチャレンジにふさわしいレベルだと思われた。

逆に難度の高い年もあるようで、例えばいきなり本年2017年2月期の練習曲から始めてしまうと、楽曲構成が複雑なあまりに萎えて挫折してしまう恐れがあるかもしれない。

なお、練習曲1曲を仕上げるにあたり、現段階では暇を見つけながら何日かに分けて制作しているのだが、本番直前期では一気通貫して1日で完成させる本番シミュレーションもやってみる必要があろう。

*1:いわゆるパラディドル奏法というやつ。

*2:ベースとギターの1オクターブ下げについては、公式ガイドブックの§6-1「楽譜情報」p.199 にも明記されている。しかしフルートなど他楽器については特に注記はない。

MIDI検定1級公開セミナーの動画など (2)

前回の続きというか蛇足。その他1級実技対策上の課題や問題点、セミナー3回全体を通しての感想などを追記しておきたい。 

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1級対策用の作業フローや使用ツールについて

1級課題曲のスコアを見て確信したのは、Dominoはメインの編集ツールとしてはたぶん使えないだろうな、ということである*1。その根拠としては、

  • 2級練習・課題曲よりも楽器パート(トラック)の数や小節数が段違いに多い。こうした作品はDAW (Tracktion 私は現在は Studio One を使っています) で編集する方が全体を俯瞰した上で漏れやミスを発見しやすい。
  • パート譜において全休符がかなり多い。ということは、MIDIデータ作成にあたり、トラック丸ごとではなく数小節のMIDIクリップ単位で作成編集した方がはるかに効率がいい。
  • GM音源以外の音色適用やエフェクト加工などでDAWによる編集はいずれにしても必須。であれば最初からDAWで一元管理した方が効率的である。

なお、MMLは楽曲全体というよりも個別のMIDIデータクリップの作成には依然として援用できると考えられる(ノートミス対策)。 MMLはもはや使用せず。

ヒューマンな表現とMIDI打ち込みの方法

前のめりな感じを出すとかグルーブ感を出すといったノート・タイミングに絡んだニュアンス表現は、データの打ち込み微修正というより、むしろキーボード生演奏によるリアルタイム録音で対処する方が速いし効果的だろう*2。自主制作ではリアルタイム録音でさっさとクリップを作っていくという運用が主体になるかと思う。

ただしMIDI検定の場合、1級実技の1次審査段階ではMIDIデータの正確性がチェックされるので、ノートのタイミングを敢えて意図的にずらしたりするような芸当も使えず、思い切ったグルーブ感とかは押し出しにくい。その辺は1級実技試験のジレンマになっているようにも思う*3

生楽器シミュレーションの一抹の虚しさ

さすがにMIDI表現が100%無駄であるとは全然思わないが、MIDIで生楽器をとことん再現することにこだわるのは今や邪道ではないか、という疑念は拭えない。実際のところ、ギターや弦楽器等のMIDI打ち込みでは労力に見合った効果が得られにくく、むしろ音源プラグインの技術進歩に頼る方がより目的に叶う場合が多い。

そもそも、生楽器演奏が使える環境であれば生演奏をDAWにオーディオ録音してしまう方がどう考えてもベストである*4。もちろん、この辺の制作スタンスはジャンルや制作時間・コストにもよりけりだろうとは理解するが。

*1:DAWより書き出したSMFの読み込み再生とデータ・チェックには使える。

*2:オーディオ録音ではなくMIDIデータの記録という意味で。DAW搭載のいわゆるヒューマナイズ効果を適用する手もある。コントロール・チェンジは演奏後に追加で一括編集でもいい。

*3:オーディオしかチェックされない2次審査用の別エディットを用意して対応するという裏技も考えられるが、そこは制作時間制限とのトレードオフになる。

*4:ギター演奏は通常は生演奏を使うと外山先生も白状しておられた。

MIDI検定1級公開セミナーの動画など (1)

楽器フェアなどのイベントの一コマとして、MIDI検定1級受験者のための学習セミナーが催されていたようで、2012年、2013年および2014年の3回分がYouTubeで公開されている。いずれも、1級の課題曲を作成担当している作曲家の外山和彦先生をメイン講師として、ゲストの演奏家を交えながら1時間程度の講義となっている。動画は協会サイトの1級課題曲スコア販売ページからもアクセス可能である。

これとは別に、1級検定に関する外山先生のインタビュー記事が「DTMステーション」に掲載されているので、合わせて読むと試験趣旨等の理解が深まるのではないかと思う。

www.dtmstation.com

 

上記セミナー動画3本は、私のようなまだ1級レベルには到達していない初心者であっても見て損はない内容で、趣味の自主制作も含め、音楽制作全般に対する大きなヒントを貰った気がする。3級・2級受験者にも視聴をお勧めしたい。

以下、備忘録がてら各回の主要ポイントなどを簡単におさらいしておく。

2012年MIDI30周年セミナー

www.youtube.com

本セミナーは、MIDIシミュレートが最も難しい楽器の一つであるギター表現を主題とする。

私が肝に命じたいと思った要点は以下2点:

  • 最初からディストーションが掛かったギター音源は使わず、素の音にエフェクトを重ねて自分で音作りをすること。その方が独自かつよりリアルな音色になるし、音色加工の応用力が身につく。
  • ベンディング(チョーキング)など覚えたての技をくどくどしく過剰には使わないこと。ともすれば素人臭さが丸出しになる。

それにしてもこの年の課題曲は気が変になりそうなぐらい変拍子のオンパレードで、相当難度が高い印象を受けた*1。1級のスコアは、2級と違ってピッチベンドやコントロール・チェンジに関する細かな指図・指定の記載がなく、全部自分で考えて表現するようだ。

2013年大音楽会ゼミ

www.youtube.com

本セミナーの主題は、管楽器表現である。この年の課題曲は、ビッグバンド・ジャズをモチーフとして、童謡「大きな古時計」をアレンジした難曲である。

要点としては以下3点:

  • ピッチベンドやエクスプレッションなどを滑らかに変化させる補助入力装置として、ブレス・コントローラーを使う手もあるということが紹介された。こうしたコンティニュアス・コントロールができる補助入力装置はもっと積極的に使った方がよいとの指摘。ただし、これはユーザ・カスタマイズ可能なフェーダーやつまみコントローラー搭載のMIDIキーボードでも対応できるはずである。
  • MIDIデータによる最低限のニュアンス表現として、ピッチベンド、モジュレーション、エクスプレッションおよびサステイン・ペダルをうまく組み合わせて表現すること。これらを使いこなしている受験者がことのほか少なかった模様である*2。ただ単に譜面の字面通りでは音楽表現としては不十分であって、そこからニュアンスを加味していく必要がある。
  • シンセも練習が必要だ、とエンジニアの北城氏が強調。これは翌年2014年セミナーでも繰り返し指摘されていた。この点はまったく同感。幸か不幸か、触ったらそれなりに音が鳴るので、そのレベルで立ち止まって満足してしまうユーザが非常に多いのだろうな、という印象はある。もちろん自戒を込めて。

2014年楽器フェアセミナー

www.youtube.com

本セミナーの主題は、ギターと並ぶ難所である弦楽器の表現について。この年の課題曲はクラシック風な楽曲で、読譜の知識というか常識も問われる内容だった。

私なりの要点は以下のとおり:

  • 弦楽四重奏などのクラシック譜面にはある程度親しんでおく必要がある。ヴィオラとチェロのスコアの音部記号であるハ音記号の読み方、またハープ譜面の和音はデフォルトではアルペジオで演奏すること、といった常識レベルは最低限。
  • 2013年セミナーでも指摘されていたことだが、そろそろコンティニュアス・コントロールができる補助入力装置をもっと積極的に使おうというアドバイス。今回はボリューム・ペダルの使用例。エクスプレッション入力に使っていたようだった。
  • バイオリンのボウイング表現は強弱が肝要で、実際にはスピードとプレッシャーの組み合わせで調整する。しかし、さすがにベロシティではスピードまでは直接に表現できない。トレモロやトリルもMIDIデータ表現の限界点の一つで、基本的にはサンプリング音源で対応することになる。クラシック系の音源準備は個人的にも大きな残課題。これについてはまた後日に取り上げたいと思う。
  • 合奏の場合は、各楽器でタイミングをわざと微妙にずらし、均一に揃えてしまって機械的かつ平板に聞こえないよう注意する。これは前年セミナーのジャズ楽曲の勘所とも共通するところ。ジャズではグルーブ感を出すためにわざと前のめったりする。

生演奏含めて実際の優れた演奏を数多く聴いて耳を慣らし、プロの演奏に憧れつつこだわりを持つことで表現の幅を広げるべし、という外山先生の指摘は耳に痛い。当然ながら無から有は生まれないわけだから、ジャンルを問わず、多くのインプットが必要であると痛感させられる。

その他、全体を通じての感想や今後の1級対策などについて思うところがいくつかあるのだが、長くなったので稿を改める。

追記 (2018-04-22)

言うまでもなく、生楽器の演奏シミュレートは今や音源対応の方が優れていると思うので、MIDIでの表現に限界があるところは種々のアーティキュレーション機能が豊富な音源を導入し、お金で解決してしまう方が効率かつ効果的である(無償ツールでも割と高品質な音源はいくつかある)。MIDI検定1級の2次審査でもそういう側面はあると思われる。

*1:Tracktionは言うに及ばず、DominoとMML変拍子入力には対応可能。

*2:制作時間切れでそこまで手が回らない受験者も多いのではないかと想像する。音数が多い難曲だとノート入力だけで手一杯に陥るリスクが高いと思う。この辺りは私も効率的な作業フローを追々考えていきたい。

ベロシティの表現と編集 (Domino)

前回の続き。

daw-jones.hatenablog.com

 

今回は下図譜面例のようなストリングズにおけるベロシティのダイナミックな調節を取り上げる。

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各ノートのベロシティ値は、実はMMLでも指定可能ではあるが、Dominoの方が直感的に編集しやすく結果の確認も容易である。この辺の使い分けは、ユーザの好みはもちろんのこと、楽曲の複雑度合いにも依存するであろう。

今回はDominoでの編集方法について簡単に記す。MMLによる記法は、機会があれば後日改めて試すことにしたい。今のところ基本方針としては、MMLは各ノートのピッチとステップ値の正確な入力に専念させる、という役割分担を明確にした方がよいと思う。

Dominoにおけるベロシティ編集は、コントロール・チェンジと同様、下例のように編集画面の右下イベントグラフ・ペインにてGUIで編集できる。しかし、一括変更機能により数値を直接修正する方が速く正確に編集できることも多い。特に和音が対象となっている場合はそうである*1

上記の譜面例のように、ベロシティを段階的に変化させる場合は、概ねリニアに変化するよう増分/減分のステップ値を計算して加減算していく。最初と最後のノート以外、途中経過値はざっくりした感じでもよく、厳密な直線を描く必要はない*2。なお、インクリメンタルな変化を出す際、MMLでは差分で指定できる方法があり、そちらの方が便利なケースもあるだろう。

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*1:和音は構成音のベロシティ表記が重なってしまうので、マウスによる選択操作が難しい。

*2:譜面上特に指定がない場合。ニュアンス表現の一つではあるが、楽曲や楽器パートによっては直線変化ではない方がよいこともある。ただし、2級ではそこまで細かくは問われないようだ。

ピアノの代表的なMIDI入力ポイント

今回より次の練習曲に移り、第15回MIDI検定2級2次試験(2014年2月期)練習曲からNo.3を演習例題として取り上げる。本曲は、珍しいことにチャネル10のドラム・パーカッションが存在しないバラード調の曲である。

今までの演習(練習曲No.1およびNo.2)で遭遇しなかった表現パターンは、大きく分けて2点ある。すなわち、ピアノのダンパーペダル表現と、ストリングズにおけるベロシティのダイナミックな変化、の2つである。今回はこのうちの前者を中心に、ピアノ・パートの勘所をまとめておきたい。

和音繰り返しの効率的な入力方法

バッキングのパートではよくあるパターンとして、同一演奏フレーズの繰り返しが頻出する場合がある。本曲ではピアノの高音部がそのようなケースに相当する。

実はMMLでこれを効率的に記述する方法があり、何回も同じデータを繰り返し書き記す手間を省力化できる。すなわち、[ ... ]nと書き、繰り返しのフレーズを[および](ブラケット)の中に包含した上で繰り返し回数nを指定すればよい*1。なお、[の後ろ、および]の前のスペースはあってもなくてもよい(検証済み)。

低音部と高音部の統合

ピアノの低音部と高音部を対象とするMMLおよびMIDI変換データを作成する場合は、それぞれ別個のトラックに分けて編集した方が入力作業が捗り、ミスの可能性も低減できることが多い。

最終的に双方をMIDIマスター編集ファイルに取り込む際は、練習曲No.2のシンセブラスのパートでやったように、そのまま分離した状態でポートを分けてしまう方法もある*2

しかし、本曲の場合はわざわざポートで分離せず、下図例のように同一チャネル・同一ポート上に貼り付けて統合してしまう方法がベストである。というのも、本曲のピアノではダンパーペダル操作を(当然だが)低音部と高音部の両方に適用する必要があるため、トラックを分離した場合はコントロール・チェンジのデータ入力が二度手間になってしまうからである*3

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この辺のテクニック詳細については、以前書いた下記記事も参照されたい。

daw-jones.hatenablog.com

ダンパーペダルの表現

本曲のピアノ・パートには、下図例のようにダンパーペダルのコントロール・チェンジ(CC#64 Hold 1)指定がある。

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Dominoでは、右下のイベントグラフ・ペインで簡単に追加入力できる。ただし、本例題曲では、ペダルの踏み込み具合は考慮せず、単にOn/Offを指定するだけなので、Onの場合は127の位置をクリックし、Offの場合は0の位置をクリックする、という操作を繰り返す。本例の場合、挿入位置については、

  • Onの挿入位置は、音が鳴り始めた直後あたり。
  • Offの挿入位置は、次のペダル踏み込み操作の直前あたり、音が途切れたところ。

とするのが基本である。なお、ダンパーに関する詳細は、公式ガイドブックの§3-2-6「コントロールチェンジ」p.90 を参考とする。

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このようなダンパーのOn/Offデータが正確に挿入されているかどうかは、イベントリストでも同時に確認できる。

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*1:MML実習マニュアルの§3.1 「繰り返し」pp.14-15 を参照。

*2:データ送信先MIDIチャネルは同じ。DAWに取り込むと、別個のトラックとして分離する。

*3:TracktionなどのDAWでは複数のトラックに同じエフェクト等をフィルター適用することは容易に実現可能だが、Dominoではそこまでは無理である。