DAWを触っていると議論が絶えないのが音圧の話題である。今現在音楽家やエンジニアの間でどの程度支持されているのかは不明だが、ここ30年前後は全体として音圧至上主義の傾向があったことは確かである。しかし、近年は海外を中心に高音圧一辺倒の流れが変わりつつあるような記事も目にする。
そうした背景の下、最近たまたま読んだ以下の2つの記事から私が汲み取った最大公約数は、「音圧を上げ過ぎると音楽として破綻する」という警鐘であるように思う。
藤本氏によるハイレゾ・CD比較記事の方は断言を避けているものの、この2つを読んで言外にも漂ってくる大きな示唆は、やはり音楽にとってダイナミック・レンジは非常に重要だということだろう。そういう意味では、問題の本質はむしろコンプレッサー処理のやり過ぎ、ということも言えるのではないか*1。
音圧戦争については、2年前の以下のツイート記事がかなり痛烈な批判を浴びせている(上記藤本氏のハイレゾ・CD比較記事とも関連するところ大)。私自身もリスナー視点で頷くところが多かった。音圧至上主義が結果としてアマチュアの上達を妨げているという文脈でボカロ界隈をちょっとディスっているが、自らを棚に置けば、EDM一般が総じて酷い有様だとは常日頃感じてはいる*2。
データで検証する音圧戦争という総括と論考では、以下の記事が参考になろうかと思う。例によって、音圧至上主義に対する反省と見直しは欧米市場から始まっている。
なお、ダイナミック・レンジを取り戻すという意味では、懐古趣味と批判されようが、音圧競争に毒される前の80年代前半あたりのテクノとかポップスを個人的には大いに参考にしている*3
以前、音圧向上のためにLoudMaxを活用する記事を備忘録的に書いたが、あまり無邪気に何でもかんでも上げ過ぎる(0dB付近にへばりつく)と楽曲として破綻するリスクを伴うことは、今一度自戒を込めて肝に銘じておきたい。実際には上げるどころか、音割れ防止を主眼に音圧を下げるべく、リミッター的な使い方をする場合がほとんどではあるが。