DAW悪戦苦闘記

DAWやMIDIを通じてちまちまとDTMを楽しむ記録+MIDI検定1級到達記

2016年2月期練習曲No.1の演習

しばらく Studio One の試用・検証に集中していたため1ヶ月ほど間が空いたが、今回よりMIDI検定2級2次試験演習の続きを再開したい。残り未消化の練習曲は、2016年2月期および2017年2月期の練習曲各々4曲ずつ、計8曲である。なお、私が受験予定の2018年2月期練習曲4曲は本年末12月下旬頃に公表されるはずである。

今日は、2016年2月期練習曲セットから、練習曲No.1を取り上げて分析し、要点を整理する。

ドラム譜

音数は少なめで難しくない。一番注意すべきは、2連続タイ繋がりの所であろうか(下図参照)。以前にも書いた通り、ドラム譜のタイの場合、繋がり先の音符はデータ入力する必要がない。

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その他のミス誘発ポイントとしては、連符入力と(下例参照)、あと強いて挙げるならばキックの裏拍が多いのでノートオンのタイミング(休符の見落とし)に十分注意するといったところか。

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ベース

もうすっかりお馴染みのハンマリング・オンを多用している。本曲のベンドレンジは1オクターブ(12半音)設定であるから、1365に上げて落とすの繰り返しになっている(下例参照)。このハンマリングは同じパターンが続くため、ピッチベンド・コントロールは1箇所正確に入力したら、残りの箇所はそれをひたすらコピペするだけで済む。

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なお、ピッチベンドを上げるタイミングは、音符記載のタイミングにぴったり合わせる*1。本曲上例のような場合は、16分音符の単位でピッチを上げる位置決めをする(譜面に対応する下例イベントリストを参照)。ノート自体の入力は、ピッチベンドで上げる前の音程でまとめて単一の8分音符で入力し、なおかつゲートタイムは音価の95%程度とやや長めに取る(レガートの特殊例という感じで解釈する)。

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フルートとヴィブラフォン

フレーズは全体的に難しくはないが、強いて注目すべきはタイがやたら多い点だろうか。それに加え、フルートはレガートが2箇所あるのでゲートタイムの値には要注意である。フルート最終小節のレガートは、8分3連符と32分音符を含むのでやや難所か(下図参照)。連符といえば、ヴィブラフォンの14小節目には珍しく4分3連符が潜む。

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なお、本曲全体で使われるコントール・チェンジは、このフルート・パートに使われるCC#1 モジュレーション(ヴィブラート)しかないので、編集はかなり楽である。

エレピ

片手のコード・バッキングのみなので簡単な方だと思われる。ただし、スタッカートが点在しているため、うっかり見落とさないようにする。付点音符と紛らわしい(下例参照)。このパートはMIDIキーボードを使えば手弾きでサクッとステップ入力できるだろう(私は使わなかったが)。

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*1:2級1次試験のイベントリスト問題をヒントに若干訂正というか再確認した。

アナログシンセ復権の歴史的経緯など

前回記事との関連で、シンセサイザーに関する研究資料や報道記事などを漁っているうちに、近年のアナログシンセ復権の歴史的背景などを解説した良記事があったので、備忘録がてらここに紹介しておきたい。

daw-jones.hatenablog.com

 

2つあって両者とも内容は重なるのだが、アナログシンセの登場から衰退と復権を概観した記事・エッセイとして気軽に読めるだけでなく、ちょっとしたシンセ史の勉強にもなる。ヒップホップやダンス・ミュージック業界からの需要が大きく後押しした経緯や背景はよく理解できると思う。

junoosuga.com

www.redbullmusicacademy.jp

 

前者は3年ほど前に書かれた記事だが、

これまでのアナログリバイバルは「再評価〜ビンテージ機器のプレミア化」がメインだったが、今回は明確に「温故知新」、良さを再認識した上で、楽器としてのアナログシンセサイザーを新しい領域に進めようという潮流が生まれている

ソフトの飽和と新世代アナログシンセの躍進(第4回)

という状況は今も変わらず、昨年登場したArturia社のMatrixBruteはその一つの到達点でもあるように思える。

info.shimamura.co.jp

 

価格低下も含めたこうした電子楽器業界の動向は、ユーザとしてはワクワクする上に嬉しい限りだが、一方で供給サイドのビジネスをやる側にとって見れば、市場はほとんどレッドオーシャン化しているのではないかと要らぬ心配をしたくもなってくる。というのも、

  • ソフトシンセ(スマホタブレット上のアプリも含む)の台頭もあり、専用ハードウエア市場はこの先縮小することはあっても拡大する余地はあまりないであろうこと*1。最近ではRoland社の苦境(2014年のMBOを経て現在経営再建中)がそれを物語っているようにも見える。
  • そのソフト分野にしても、DAW含めてメーカーの参入が多いため、非常に競争が激しくまた差別化が難しくなってきているように感じる。その結果としての価格破壊はユーザにとっては皮肉にも恩寵ではあるが、メーカーにとっては地獄である*2

*1:少なくともDTMをやるのにハードとしてのシンセは音源ラック含めてまったく不要になった。プロもしくはライブ・パフォーマンスをやるアマチュア演奏家以外に需要はないのではなかろうか。

*2:DAWの先駆者でもあった Pro Tools の開発・発売元であるAvid社がリストラを繰り返すような惨状に陥っている様は、経営の巧拙もあれど、なかなか厳しい環境だと思わず嘆息する。

Synth1のチュートリアル動画

アナログシンセのプラグインについては、私は結局のところSynth1の一択で、それ以外はほとんど使わない状況である。フリーの制作環境という限定条件を付ければ、おそらく私同様のアマチュア初心者にとってはSynth1があれば必要十分だろうと思う*1

Synth1もそうだが、シンセは多様なプリセット音源から適当に自分の好みの音色を選んでそのまま使うことも可能ではある。しかし、シンセの醍醐味はやはり自分独自の音色編集加工であり、そのためにはある程度原理原則を習得しておかないと、手探りのままではまったく応用が利かず、進歩がない。

基本的なシンセ操作の学習に関しては、実際に音色を耳で聴いて確認し、手を動かして覚える必要があるため、読書というか書籍のみによるお勉強はほとんど意味をなさないであろう。そういう意味では、YouTube等の動画教材による学習が最適である。

Synth1の操作概要把握のためのチュートリアル

Synth1はソフトシンセの中では比較的歴史も古く、しかも日本製なので、日本語教材はネット上にも山のように転がっているが、使用バージョンが古いものも多い。

そこで、YouTube上に比較的新しいチュートリアルはないかと渉猟してみたところ*2、たまたま探し当てた以下のユーザ講座が簡潔明瞭でわかりやすかったので紹介しておきたい。これは全8回講座で、エフェクト以外の機能は一通り網羅されているから*3、少なくともSynth1の基本操作は概ね理解できると思う。昨年(2016年)7〜8月の公開なので一番新しい方である。

まだ再生リスト化されていないようだが、各回の動画ページから次回リンクを次々に辿っていけばよい。1回につき概ね15〜20分前後なので、集中して観れば2、3時間で全部消化できると思う。なお、第3回のADSRの説明はちょっと曖昧でわかりにくい面もあるように感じたので(DecayとSustainの関係がややぼやけている)、下記で紹介する別のチュートリアルで補強するとよいだろう。

www.youtube.com

一般的なシンセの基本原理を学習するためのチュートリアル

とりあえずSynth1の基本操作だけを手早く習得したい場合は、上記のチュートリアルでほぼ十分だと思うが、もう少しシンセ一般の基本原理にまで遡って深く理解したい場合は、以下の動画チュートリアルがオススメである。こちらはプロの作曲家による14回講座である(最後の4回は特別編につき実質的には10回講座)。

www.youtube.com

*1:それほどにクオリティが高いということ。なお、有償の高機能DAWであれば、今は大抵の製品に同じメーカーのシンセ・プラグインが同梱・内臓されているはずなので、とりあえずはそれで充足する可能性も高い。

*2:ニコ動にもいくつか代表的なものが上がっているが、あそこはわざわざユーザ登録とログインをしないと視聴できないので敬遠。

*3:エフェクトはコーラスとかディレイ等一般的な音響エフェクト処理と基本は変わりないので、Synth1の独自機能として学ぶ必要は特にない。

Studio One とDomino連携によるSMF作成

以下はMIDI検定1級実技に関わる対策である。2級2次実技については関係しない(Dominoで完結できるため)。

楽曲の基本となるMIDIデータの作成

私が試用した限りでは、Studio One 3 Prime (以下S3)のMIDIエディターは機能面で特に不足は見当たらないので、譜面をMIDIデータに起こす過程に関しては、MMLまたはDominoを介さず直接S3により入力編集可能であるし、またその方が効率的で時間節約にも繋がる。

私がS3のMIDI編集機能に及第点を付けられると思った根拠は以下の2点である:

  • ベロシティやピッチベンド、コントロール・チェンジの編集機能がDominoと遜色ないかそれ以上の柔軟性を備えており、何ら不足がない。
  • スケール指定によるキーナビゲート機能があるので、ノート(ピッチ)ミスの可能性を最小限に抑制できる。

最終成果物としてのSMF作成

最終成果物としてのSMFには種々の設定用データを付加する必要があり、私が見た所では、これはS3では不可能かもしくは非常に面倒な領域である*1。したがって、ここは無理をせずにDominoへバトンタッチして任せる方が得策だと判断する。すなわち、楽曲の譜面データ(ベロシティやCCなどの表現データを含む)はS3で作成し、その後これをDominoへ取り込んで完全なSMFに仕上げる。

Dominoでの最終仕上げ工程は概ね以下の通りとなる:

  • 2級2次試験実技同様に、協会提供のテンプレ・ファイル*2を流用する。その方が効率が良いし間違いがない。
  • S3で書き出したMIDIファイル*3を一旦Dominoへ読み込んだら、上記のテンプレ・ファイルへデータをコピペする。これが一番簡単確実であると思われる*4
  • 2級同様に、楽曲データは2小節目をスタートとする*5。また、楽曲の終端を示すエンドマーカーの位置調整をする。
  • GM音源を使って再生チェックをする。ただし、これはあくまでミスやトラブル検知目的のため。2次審査用の音源再生とマスタリングはS3で続行することになるが、これについては追って検証したい。

なお、私はまだ過去の1級課題曲セットを入手していないので、2級同様の細かいシステム・セットアップ指定があるのかどうかは定かではないが、指定がある場合はその通りにデータを組み上げる必要がある。

*1:S3に限らず今どきのDAWは得意としていないように見受ける。かつてのMIDIシーケンサーと利用目的が異なるため。

*2:一般的なシステム・セットアップデータがあらかじめ盛り込んである。

*3:TPQN=480で書き出される。

*4:各トラックの楽曲データを指定のチャネルへコピーしていく。ドラム・パートはもちろん10チャネルへ。S3ではそのままMIDIとして書き出すとすべてのトラックがチャネル1に割り当てられた状態になっている。ただしデータはトラック(パート)別に構成されているのでコピーにあたっての支障はない。

*5:1小節目はシステム・セットアップデータの送信用に確保される。

MIDIイベント・インスペクタの表記解釈 (Studio One)

Studio One における各MIDIノートのオン/オフ・タイミングと長さの表記方法は、MIDI検定のイベントリスト問題やDominoの表記法と大きく異なるので注意を要する。この読み方については、なぜか肝心のレファレンス・マニュアルには明記されていないようである。

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下例に見られるようなドット区切りフォーマットは左から、小節、拍、16分音符単位のサブティック、16分音符未満のティック、という構成になっている。

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注意すべきは、一番右側のティック値が0から99の範囲となっていることである。つまり、16分音符が100ティックの分解能であるから、TPQN=400ということになる。これは標準的なTPQN=480という値よりは若干粗いのだが*1、多くの楽曲ではこの程度の差異は実務上問題にはならないであろう。

サブティックの0〜99レンジ指定は、要は他のパラメータ同様にパーセント単位表記を踏襲しているようにも見える。たとえば、ベロシティやコントロール・チェンジの値も0〜127の素の値ではなくパーセント表記(または0〜1の割合表記)なので(下例参照)、これと合わせている節がある。しかし、他のDAWと併用しているか移行して来たユーザはかなり面食らうと思う。

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このフォーマットはいわゆるサブティック表記法で、解釈の基本はCubaseと同様である。なお、Cubaseの場合については、公式ガイドブックの§6-3-1「DAWソフト/イベントリストの表記 - イベントリスト表記の違い」pp.212-213 で解説されている。

*1:因みに Tracktion 5 の分解能はTPQN=960である。

SoundCloudもうダメか

コンテスト出品作を公開保存するためSoundCloudに初めてアカウントを作って以来1ヶ月ほど経過したが、こんなところにまでスパムが蔓延っている状況には正直驚きを隠せなかった。followされたりlikeが付いても十中八九がスパム・アカウントである。スパム問題はユーザの間では以前から周知の事実らしく、運営サイドがほとんど放置状態で有効策が採られていないようでもあり、うんざりする。

また、これはユーザ相互の活用・交流の問題とも言えるが、楽曲をただ単にアップロードしただけでは存在していないも同然で、まず再生はされない(聴かれない)。私のような素人が時折音楽版DropBox的な使い方しかしないのであればともかく、セミプロもしくはプロで積極的に自作曲をプロモーションしたい場合は他ユーザを片っ端からfollowする等いろいろとSNS乞食のような労苦を強いられるようだ。それだけやってもSoundCloudだけでプロモーションの効果を出すというのはとてつもなく限界がある。

そういった闇の部分が目につくだけでなく、Spotifyとか Apple Music といったストリーミング大手との競合も激しいだろうにこの会社儲かってるのだろうか、とふと疑念を抱いてちょっと調べたら、案の定足元は非常に厳しい台所事情のようで、金欠により年内倒産の可能性も取り沙汰されている。

www.theverge.com

www.digitalmusicnews.com

oneboxnews.com

 

それなりに登録ユーザ数は多いから、潰れたら潰れたで、出資している大手レコード会社が救済に乗り出すか、あるいは待ってましたとばかりに、それこそGoogleあたりが底値で買い叩きに来る可能性もあり、いきなり店仕舞いのシナリオは考えにくい。しかし一番怖いのは、そうした経済事件を契機として、もうSoundCloudみたいな大してメリットが感じられないサービスは必要ない、と多くのユーザが気づいて離散してしまうことだろう(YouTubeもあることだし)。

Re:animationのRemixコンテスト結果

先月募集があったRe:animationのRemixコンテスト選考結果が去る15日のイベントにて公表されたようである。

reanimation.jp

優秀作はやはり最先端EDMの四つ打ち様式美から外れず音色が今風で、ミキシングも抜群に上手い。またステム素材の編集加工がさすがに大胆である点はまったく感心させられる。

無謀にも(?)今回ビギナー部門に応募した私は当然ながら選から漏れたが*1、締め切りがあるこの種のコンテストに参加することで強制的に自分を追い込んだ結果一気にスキルアップに繋がった面もあり、良い経験にはなったと思う。また同様の機会があればチャレンジしてみたい*2

今回のリミックス・コンテストを振り返り、技術的な反省点を挙げるとすれば、以下の2点である:

  • 横着してカットアップを使わなかったのは最大のダメ出し。サンプラーもない現状の私のツール・環境ではなかなか難しい手法だが、リミックスに限らず自主制作一般の大きな課題の一つでもある。今回は面倒なので敢えて見送った結果、案の定、今一歩思い切ったアレンジができなかったと猛省。
  • わかっちゃいるけどミックスダウンおよびマスタリングがまだまだ稚拙。音割れ防止を意識したあまりに2ミックスの音圧を下げ過ぎたのは痛恨のミスであった。これに関してはLoudMax活用で既にある程度は解決済みである。

*1:DAWを触り始めて3ヶ月足らずの経験不足もさることながら、クラブ・ミュージックという文脈をまるで無視した制作だったので無理からぬと反省。

*2:ただし正直白状すれば、昨今のEDM等クラブ・ミュージックは長時間聴いていると非常に疲れるし、あまり好みではない。積極的に聴くわけでもなく関心も低いので、それ以外のジャンルでまったりやれればいいかなと思ってる。EDM筆頭にクラブ・ミュージック一般は音色含めて様式美が確立しているようだから、クラブ系コンペに出品するのであれば、当たり前ながら同ジャンルを聴き込んでスタイルをきっちり習得しないと通用しないであろう。