DAW悪戦苦闘記

DAWやMIDIを通じてちまちまとDTMを楽しむ記録+MIDI検定1級到達記

リミックス演習の題材

リミックスは、オーディオ素材の編集加工や、ミキシングおよびマスター編集のスキルアップに最適の演習課題だと思う。と同時に、プロの楽曲構成・音色加工技術を詳細に分析して自分の血肉とする良き機会でもある。完全オリジナルと丸コピの中間という塩梅もバランスがいい。少なくとも初心者のうちは、オリジナルだと独りよがりに陥りやすく、コピーの繰り返しは新味がなくて飽きる。

実際にコンテストに参加するかどうかはともかく、ステム素材を使って色々と編集加工してみるのは非常に勉強になるし、なにより手軽で楽しい。ただ残念なことに、ステムが提供される国内のまともなコンテストは開催数が非常に限られている。

一方、海外ではコンテストのまとめサイトなどもいくつか立ち上がっており、大小様々な規模の催しが種々雑多リストアップされている。例えば、以下の情報サイトよりジャンル等自分好みのコンテストを選び、とりあえずステムだけダウンロード利用してみるのも一考であろう。ただし、Facebookやユーザ登録を経てログインしないと落とせないものが大半のようで、その点は面倒というか、セキュリティやプライバシー上不安があるようなら無理する必要はない*1

www.kreasound.com

 

今すぐお手軽にリミックスを実験してみたいという場合は、以下、コンテスト自体はとっくに終了しているが、幸いステム・ファイルをまだ自由に落とせるので、当面の演習題材としては打ってつけだと思う。

sleepfreaks-dtm.com

原曲は昨今ありがちな陳腐なEDMではなく、またVocaloidとはいえボーカルが入っているのは結構貴重であろう。削除リンク切れにならないうちにダウンロード入手しておくとよい。著作権上このリミックス制作物を自由に公表はできないが、自分で楽しむ分には問題ない。

趣向を変えたバージョン違いで2、3曲作ってみると面白いかもしれない。例えば、エレクトロ・ポップ調は Tracktion で、生楽器主体のジャズやクラシック風味は Studio One メインで制作するなど、DAWの使い分け演習にも利用できそうである。

*1:あまり方々でログイン登録しまくると、一番懸念されるのはスパムの洪水に襲われること。主催者の評判や信用度などを推し量って厳選した方がいいと思われる。

イベントリスト問題の解説 (4)

MIDI検定2級1次試験のイベントリスト問題を考察するシリーズ最終回。今回は旧制度問題のまとめと総評解説など。これで現状利用可能なイベントリスト問題はすべて攻略済みとなり、残すは知識問題のみであるが、夏以降に着手しても本番には十分間に合う。

旧制度問題の特徴など

第8回以降第13回まで6回分を解いてみての感想などを述べる。第5回以前は解答が公表されていない上にあまりにも古い形式なので無視してよい。なお、第6回は出題形式が現状の正誤問題と異なるため、また第7回は譜面が不鮮明なため割愛した。

出題形式は新制度とほぼ変わらないが、旧制度問題は新制度に比べると問題数が多い分各問の難易度は総じて低い。ひねりのない易しい問題を繰り返してもあまり力がつかないので、原則として旧制度問題までわざわざやる必要はない、というのが率直な結論である*1。その分の時間を2次試験の実技演習に回した方が断然効果的であろう。

興味深い点としては、旧制度ではドラム譜も出題されていたことである。しかし、ゲートタイムが問われないので出題妙味に欠けるという理由かどうかはわからないが、ドラム譜問題は新制度では一切出題されなくなった(今までのところ)。これが今後復活するか否かは若干気にはなる。

注目すべき引っ掛け問題

上述の通り、旧制度問題はドラム譜を除いて特筆すべき点はほとんどないため、解説(1)〜(3)でやったような各問個別の解説の繰り返しは控える。

ただし、以下の2問だけは新制度問題に見られないような引っ掛けがあったので、注意喚起の意味で例外的に取り上げておきたい。奇しくも両問ともに第8回のイベントリスト問題である。

惑わせ気味なゲートタイム

ブラスの下図譜面で、和音を構成する丸で囲ったノートのゲートタイムが一方と揃っていないため、これが誤りかと思いきや、後ろに堂々たるピッチミス(下線部)が潜んでいるという罠。早とちりをすると後者のピッチミスに気づかない恐れがある。

和音構成音D4のゲートタイムは"00:216"となっており、上の音D5の"00:240"と揃っていないのは違和感あるが*2、しかしこれは完全に間違ってるとまでは言えない値である。一方、第7小節の2拍目240ティック先に入る和音にはナチュラルが付いており、F5/F4の組み合わせになるはずが、下の音はF#4なので紛うことなきピッチミスである。したがって、本問では後者のピッチミスを指摘する必要がある。

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マニアックなドラム譜問題

結論から書くと、GMパーカッション・マップのノート番号を覚えていないと解けない問題である。

本問では、下図ドラム譜の #46 Open Hi-hat (=A#1) であるべきノートが別のG#1(=#44 Pedal Hi-hat)となっているミスを突くのだが、他のノートミスがないことを何度も確認してからでないと気づきにくい*3。その上、少なくとも、#42 Closed Hi-hat (=F#1) と #46 との相対位置は知らないと解けないと思われる*4

記憶力頼みの難問だが、幸い新制度ではドラム譜問題は出ないようなので、ここまでエグい出題は今のところは考えにくい。

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*1:旧制度過去問は主催者協会サイトからもリンクは外されており、重要性や優先度が低いことは言うまでもない。

*2:これは誤植の可能性も高い。実はこの第8回以外にも誤植と思しきイベントリストの不整合は1、2件発見している。新制度の過去問では見たことはない。

*3:その気づきにしても、ある程度の実技経験を積んでドラム譜に慣れておかないとピンと来ないはずである。

*4:どちらかというと3級の学習成果を問われる。GMパーカッション・マップは3級である程度暗記させられるため。しかし実務上はノート番号の記憶などまったく不要である。

イベントリスト問題の解説 (3)

MIDI検定2級1次試験のイベントリスト問題について考察するシリーズ。引き続き新制度試験の過去問に取り組む。本日は第15回と第14回を対象とする。これにて新制度のイベントリスト問題はすべて完了である。

第15回試験の解説

問題 Chapter 6-3, 6-4 (a): ピッチミス

エレピの右手高音部と左手低音部の合わさったイベントリストであるため、音数が多くて分析に時間を要するケース。第6小節高音部の最終ノートで、和音を構成する音のうち、E4とA3にフラットの臨時記号が付く。後者はA#3と記載されているが、正しくはG#3(=Ab3)である(下図参照)。

多くのDAWでは、ピアノロールの表記上臨時記号をシャープに統一しており、そのスタイルに慣れておく必要がある。

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問題 Chapter 6-3, 6-4 (b): ゲートタイム

スタッカートの場合のゲートタイムは音価の50%程度が目安である。したがって、第10小節の3拍目に当たる下図8分音符C1のゲートタイムは、216では長過ぎであり、120程度とすべきである。

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問題 Chapter 6-3, 6-4 (c): ノートオンのタイミング

本問のノートはすべて16分音符であるが、休符は16分、8分および4分の3種類が入り乱れて混在しているため、拍の位置を正確に押さえるよう慌てずに区切っていく。

第12小節の2拍目の頭は16分休符が入っており、G2のノートオンの位置は120ティックだけズラす必要がある(下図下線部)。

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問題 Chapter 6-3, 6-4 (d): ピッチベンド・チェンジの値

これは難問。9小節目以降のノートにミスがないことを確認したら、ピッチベンドの適用箇所が怪しいと目星は付くが、ある程度の実技経験がないとなかなかピンと来ないと思う。実は本問冒頭にベンドレンジは"2"とする旨の但し書きがあるため、これに注意を払っていれば大きなヒントにはなる。

チョーキングのためにピッチベンド・チェンジを適用するところで、G#4(=Ab4)からA#4(=Bb4)のインターバル2半音をカバーしなければならない。したがって、ベンドレンジが2半音であるならば、ピッチベンドは限界一杯倒し、ピッチベンド・チェンジは最大値8191まで到達する必要がある。しかしイベントリストでは中途半端な7100の値で折り返しているため誤り。

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第14回試験の解説

問題 Chapter 6-3, 6-4 (a): ゲートタイム

タイつながりの場合のゲートタイム。下図のタイで繋がったノートは付点8分音符相当の長さであるべきなので、ゲートタイムは"00:107"ではなく"00:324"が正しい。

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問題 Chapter 6-3, 6-4 (b): ノートオンのタイミング

ギターのミュート奏法が題材になっているが直接は関係ない。第4小節3拍目に入るコード構成音の一つ(下図下線部)について、ノートオンのタイミングがズレている。

実は第3小節と第4小節はまったく同一のフレーズなので、両者のデータを見比べると一発で違いが判明する。

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問題 Chapter 6-3, 6-4 (c): ピッチベンド・チェンジの値

ハンマリング・オンを題材としたピッチベンド・チェンジの間違い探しになっているが、これは非常に簡単。

2半音上げるためピッチベンドを8191へ一気上昇させるというデータの繰り返しであるが、1箇所だけ逆に下げているというつまらないミス。

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問題 Chapter 6-3, 6-4 (d): ゲートタイム

これは難問。新制度になってからのイベントリスト問題では一番難しいかもしれない。難しいというか、非常に感づきにくい。

チョーキングとプリング・オフの連続適用対象となる第4小節2拍目240ティック先からノートオンするG3の長さ(ゲートタイム)が明らかに足りない。提示されたイベントリストの値"00:358"だと、プリング・オフにする直前で切れてしまう。本来は"00:456"程度の長さ(4分音符相当の音価の95%前後)が必要である。

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イベントリスト問題の解説 (2)

MIDI検定2級1次試験のイベントリスト問題について考察するシリーズ。引き続き新制度試験の過去問に取り組む。本日は第17回と第16回を対象とする。

第17回試験の解説

問題 Chapter 6-3, 6-4 (1): オクターブ

頻出パターンの一つ。最も簡単な引っ掛けだが、実はよく何度も見返さないと発見できないことが多い。本問では、第6小節2拍目(下図下線部)がD3ではなくD4という誤り。間近にある第6小節の最後の音にB3を混ぜているので気づきにくい。

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問題 Chapter 6-3, 6-4 (2): ノートオンのタイミング

第20小節の4拍目G0(下図)のノートオン位置が60ティックだけズレている。正しいTick値は0(ゼロ)である。休符と付点音符の組み合わせに惑わされずに拍の位置を正しく押さえる。

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問題 Chapter 6-3, 6-4 (3): ゲートタイム

本問の肝は、拍が6/8なのでBeatの単位が8分音符であること。ピアノ左手低音部の第24小節1拍目に来るA1(下図)の長さは、付点4分音符だから8分音符3つ分である。したがって、ゲートタイムは"2:000"ではなく"3:000"でなければならない。

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問題 Chapter 6-3, 6-4 (4): ピッチベンドの漸減過程

ピッチベンドを戻す過程における異常値。減少プロセスになっている必要があるから、下図270ティック目のベンドの値は5700未満1400超の値でなければならない。なお、本例は装飾音的なチョーキングの入力例として参考にできそうである。

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第16回試験の解説

問題 Chapter 6-3, 6-4 (1): ノートオンのタイミング

ピアノのイベントリストは右手高音部と左手低音部の譜面が合わさっているためチェックに時間を要するが、ショートカットする方法は特になく、横着しないで丁寧に追うしかない。

本問では、第17小節の高音部3拍目に入るB3のノートオン位置がズレている。直前のノートは16分音符だから、ティック位置は240ではなく120とすべきである。

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問題 Chapter 6-3, 6-4 (2): 臨時記号の小節内有効

本問は調性が D Major につき、CとFにシャープが付く。しかし第189小節目ではCにナチュラルが付いてシャープが外れるため、3拍目第2音はC#4ではなく、正しくはC4である。

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問題 Chapter 6-3, 6-4 (3): オクターブ

オクターブ違いは気づいてしまえば簡単だが、発見するまで意外に時間がかかる。第12小節目の下図丸囲みのノートはA#1ではなくA#0とする。なお、本例はコントラバスのスコアであるが、記譜より1オクターブ下げてMIDIデータを入力してあることは念頭に入れておく。

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問題 Chapter 6-3, 6-4 (4): ベンドレンジ(システム・セットアップ)

本問は、譜面データではなくベンドレンジの定義値がそもそも間違っているという特異例。これは2次試験の練習曲を使った実技演習をある程度やっていないと正解に辿り着けない可能性があると思う。

譜面では、第8小節目から9小節目にかけてピッチベンドを限界一杯倒してから戻しているが、インターバルはC3とG2の間5半音なければならないので、CC#06の値は正しくは5となる。

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イベントリスト問題の解説 (1)

MIDI検定2級2次試験の練習曲実践は、2017年2月期の4曲セットを残すのみとなったが、これを消化する前に再び1次試験のイベントリスト問題をやっつけてしまい、残りの実技演習にフィードバックさせたい。

そこで今回より何度かに分けて、過去のイベントリスト問題の簡単な解説を書いておこうと思う。個人的な備忘録としての意味合いが強いが、過去問は単に正答しか公表されておらず、どこが出題ポイントになっているのか判然としない場合もあるため、将来の他受験者の一助にはなるかもしれない。

解説対象のイベントリスト過去問について

新制度問題は、制度切り替え時の模擬試験含めて全部で6回分あり(模擬試験および第14回から第18回まで)、これらはすべて考察の対象にしたい。おそらくGW中には解き終わってしまうだろう。なお、一番直近の第18回問題についてはすでに下記記事にて概説済みである。

daw-jones.hatenablog.com

 

旧制度問題は、入手可能な解答付きのものに限れば8回分利用できる(第6回から第13回まで)。これらについても、GW明け以降5月中を目処に時間の許す限りにおいて取り組みたい。ただし、新しい年度分から優先的に着手し、時間切れとなった場合はその時点で一旦終了とする。また、第6回のみ最近の出題傾向(正誤問題)と異なるので割愛したい。

新制度模擬試験の解説

問題 Chapter 6-3, 6-4 (a): 臨時記号の小節内有効

6小節目の頭でE1はフラット化されるため、本小節内ではすべてEb1となる。したがって、最後の音はE1ではなくEb1とする(下図参照)。

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問題 Chapter 6-3, 6-4 (b): ゲートタイム

ギターのミュート奏法のゲートタイムが主題。4小節目1拍目の下図丸囲みしたノートのゲートタイムが間違って8分音符相当になっている。該当A2のゲートタイムを"00:216"ではなく、ミュート奏法に適した"00:010"とする。

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問題 Chapter 6-3, 6-4 (c): ハンマリング・オンのベンド戻しタイミング

ハンマリング・オンした後のピッチベンドをゼロに戻すタイミングは、必ず次のノートオンより前にする。

下図第4小節の3拍目に入るハンマリング・オンのベンド戻しが、4拍目のノートオンの後に入っているので誤り。

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問題 Chapter 6-3, 6-4 (d): ノートオンのタイミング

下図下線で記した音符D3のノートオンのタイミングがおかしい。その直前にあるチョーキングとプリング・オフの複雑な組み合わせは red herring のようなもので、直接は関係ない*1

要は第4小節の3拍目から240ティック(16分音符2個分)先にノートオンする必要があるが、360ティック先となっているため誤りである。

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*1:MIDIデータ入力の見本として2級2次試験実技用の参考にはできる。

2016年2月期練習曲No.4の演習

MIDI検定2級2次試験演習の続き。今日は、2016年2月期練習曲セットから、練習曲No.4を取り上げて分析し、要点を整理する。これにて2016年2月期の練習曲はすべて終了となる。

パーカッションの音色選択

本曲も練習曲No.3同様に、Studio One 3 Prime 内臓音源の Presence XT で再生する場合はパーカッション音色の選択に若干注意を要する。すなわち、コンガとコラベスに対応しているキットを選ばなければならない。パーカッションだからといって "Percussive Kit 1" がいいかと使ってみたら全然ダメだった。オーソドックスな "Classic Kit" や "Standard Kit" などは問題なしである。

弦楽器特有の表現など

レガート

同セットの練習曲No.3はスタッカート多用曲だったが、逆に本曲はレガートが主体となっている。したがって、ゲートタイムはレガートの最後に来る音を音価の90%程度にするよう注意を払う。

一方でレガート上の他のノートは音価の100%そのままとして加工する必要がないため、最後のノートをうっかり編集し忘れるリスクが大きい。

ピッチベンド・コントロール

主旋律のバイオリンに、3小節目冒頭と10小節目の2箇所だけピッチベンド・コントロールによる表現が出現する。このうち後者は、ハンマリング・オンにも類似した記譜法で書かれているため、紛らわしく見落とす可能性がある(下図参照)。

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ここはノートのデータとしてはBb4の付点4分音符で入力しておき、8分音符の長さの範囲でピッチベンドを上限まで上げるという解釈になる*1

データ上はこれで全然問題ないが、模範演奏も含めて実際に聴いてみると、ベンドの上昇過程をどう調整してもスムーズに聞こえず違和感が残る。もっと上手く表現するにはポルタメントなどの別のテクニックが必要かもしれない。

ベロシティやコントロール・チェンジ

その他にも弦楽器に特徴的な表現が盛り沢山で、ベロシティの漸増過程、および#1モジュレーションと#11エクスプレッションを対象としたコントロール・チェンジ (CC) も多用されている。表現解釈上特別に変わったところはないが、CCは両方同時に適用している音符が数カ所あり、見落としに注意する必要がある(下例参照)。

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6連符

ストリングズ・アンサンブルの冒頭では6連符が再び登場している。その解釈と入力方法は練習曲No.2に同じである。おそらく本番課題曲でも出題された可能性が高い。

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ダブル・シャープ

エレピに1箇所ダブル・シャープがあるが、丁寧にも説明書きが添えてあるので、まず間違えることはないだろう(下図参照)。

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ここはややトリッキーで、F3をダブル・シャープしてG3とする。ここでダブル・シャープを使う意味は正直よくわからない*2。他の小節の和音表記スタイルに合わせているのだろうか。

ダブル・シャープは以前の練習曲にも1度お目見えしている(下記2015年2月期練習曲No.4)。両年とも練習曲で予習をさせておいて、本番課題曲では説明なしで登場している可能性がある。

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弦楽器の音色について

GM音源の弦楽器音色は聴くに耐えないほど酷くチープで、特にバイオリンは本曲のような高い音程で鳴らすとまるでソプラノ・サックス(?)のようにも聞こえる。ややもすればコミカルな印象すら与えかねない。

模範演奏でも同様の音色を使っているため、これのせいで2級実技で減点されることはないだろうが、少なくとも1級実技では非常に印象が悪くなることが懸念される。

こだわって念を入れるのであれば、2級実技であっても本番課題曲で弦楽器が登場する場合、WAVファイル出力ではDominoによるGM音源再生ではなく Studio One を使った方がいいと思う。Presence XT の弦楽器音源は数段音質が良いからである。

*1:ベンドレンジはデフォルトの2半音であり、なおかつB4にはフラットの臨時記号が付くため、Bb4からC5までちょうど2半音を上げるという具合になる。

*2:調性はAmでそもそもFに調号は付かない上にGはスケール構成音だからそのままGと書いてもよさそうなものだが。

2016年2月期練習曲No.3の演習

MIDI検定2級2次試験演習の続き。今日は、2016年2月期練習曲セットから、練習曲No.3を取り上げて分析し、要点を整理する。

本曲は、後半に転調を伴うところが最大のポイントであろう。しかし、フレーズ自体はどのパートもほとんど8分音符で構成され、連符も見当たらないので極端に難易度が高いという感じではない。その辺は適度にバランスを取っているようにも見える。ただし、2016年の練習曲4曲の中では一番難しいと思う。

楽曲途中での転調

本曲は A♭ Major で始まるが、途中の11小節目以降最後の4小節は F Major に変わる。2級実技程度の短い小品では転調はないだろうと高を括っていただけに、やっぱり出題されるのか、とちょっと不意を突かれた*1。ということは、近い将来に拍子とテンポ変更が出題されたとして不思議はない。

Studio One のキーナビゲート(スケール)機能は、転調箇所で手動にてキーを切り替えて入力対処する(しかない)。なお、前半部のメジャーキー A♭はG#と読み替えて設定する必要がある(G# Major としてスケール指定)。このスケール機能はあくまで入力補助に過ぎないので、楽曲データを構成せず、MIDIデータや音源再生に対して影響は及ぼさない。キー変更を忘れないよう、転調開始小節には一応備忘録的にマーカー・フラグを立てるとよい(下例参照)。

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ドラムとパーカッション (1): データ入力

ドラムとパーカッションは、それぞれ10チャネルと11チャネルに振り分ける。当然だがDomino上で11チャネルもリズム用のチャネルとして定義する必要がある。これは2015年2月期練習曲No.4と同様のチャネル構成であり、システム・セットアップデータはチャネル10よりコピーして編集する。

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本曲はパーカッションがかなり賑やかで、リズム・パートのMIDI打ち込みでは最も難易度が高い部類だが、この傾向はサルサ調の曲の常である。この点は同じくサルサ調であった2015年2月期練習曲No.1と同様である。類似のリズム・パターンはコピペ対応可能だが、微妙に一部の楽器が異なっている小節も多く、よく確認しないとノートミスの罠に引っ掛かる。

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ドラムとパーカッション (2): 音色

Studio One で再生・WAV出力する場合は、Presence XT のドラムキット音色の選択に注意を要する。すなわち、本曲ジャンルはサルサなので、チャネル11のパーカッションについてはラテン系打楽器(ギロティンバレスなど)に対応しているキットを選ぶ。ここは幸いそのものずばりの "Salsa Kit" があるので、それを使うのがベストである。音色の適否は、DominoでGM音源再生するまでなかなか気づかないことがある。

トランペットとサックス

ピッチベンド・コントロールが多用されているため見落としに要注意。入力テクニックとしては、コピペ対処で効率化を図る。

サックスの音部記号はヘ音記号で、音程が結構低い。ベースを補強する位置づけであろうか。もっとも、仮にオクターブ高いと主旋律を奏でるトランペットと音が被ることは容易に認識できると思う。

因みに Presence XT の管楽器系音源は結構リアルで音質がいいと思う。自主制作にも使えそうである。

ピアノ

右手高音部は"8va"指図により記譜よりも1オクターブ上げる(下例参照)。これもサルサらしい特徴の一つ。

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その他全般

スタッカートがやたらに点在しているので、ゲートタイムの編集には少々手間が掛かる。Dominoにおける効率的な入力方法としては、一括編集にて一旦全ノートを音価の80%にし(ハンマリング・オンの箇所は95%)、後から追加でスタッカート対象のノートだけ音価の50%値(例えば8分音符ならば120)を直接入れて行くとよい。

また転調前の前半ではナチュラ臨時記号が多く、ピッチミスを誘発する可能性がある。キーナビゲート機能を活用しつつもノートは丁寧に入力し、再生チェックで違和感がないかどうか、多重検証する正攻法しか方策はないが。

*1:この年は本番課題曲でも転調が出題された可能性はあるが実際どうだったかは不明。