前回記事の補足。
daw-jones.hatenablog.com
ギターのコード・ストローク に関しては、MIDI 打ち込みでもある程度はシミュレート可能だが、近年ではサンプリング音源を使ったさらにリアルな再現方法の方が一般的だと思われる。
そこで今回は音源の一例としてプラグイン Ample Sound Guitar M Lite II *1 (以下AGML2)を取り上げ、コード・ストローク に絞って操作の要点などを簡単にまとめておく。ホストDAW は Tracktion 5(以下T5)を用いるとする。
基本操作コンセプト
基本操作は、コードとストラム・パターンを組み合わせて演奏する*2 。両者ともプリセットが入っているが、むろんユーザ定義も自由に追加編集できる。
上の図解通り、StrummerモードをONにすると、それに応じてキーの割り当てが通常のドレミファ音階からストラミング専用の特殊な定義に変更される。
具体的には、中央ドとなるC3を境目にして、左手C1からB2まで黒鍵含めて全24キーにコード定義がアサイ ンされる。逆にC3以降右手側は、主としてストラム奏法の個々の構成要素(上図青色キー)とストラム演奏定義パターンの呼び出しボタン(上図黄色キーのうちC3/C# 3/D#3/F#3/G#3/A#3/C# 4/D#4の8つ)から成る。演奏パターンは、当然のことながら、各種構成要素のノートを組みわせて構築することになり、簡便な内臓パターン・エディターを使える。もしくは、構成要素のノート(青色キー該当)を直接MIDI で打ち込んで演奏させてもよい。
定義パターンを呼び出して演奏させる場合の典型的なMIDI データ例は以下の通りとなる。パターンのノートは、演奏させたい長さだけゲートタイムを伸ばす。一方、コード指定は一瞬でよく、8分音符もしくは16分音符一つで足りる。指定タイミングは、ストラム・パターンの直前か同時でよい(直前の方が確実)。
なお、Strummer機能の基本操作については、以下のメーカー公式チュートリアル が簡潔明瞭でわかりやすい(音源機種は異なるが基本操作は同じ)。
VIDEO www.youtube.com
MIDI データで直接パターン展開
ストラミングの演奏パターン(シーケンス)をキー割り当てする方法はMIDI データが非常に簡素になる一方で、
演奏中に呼び出せるシーケンス(呼び出しボタンのようなもの)の数は最大8つまでという制限がある*3 。
各定義パターンは1小節の長さに限られる。
付属のパターン・エディターが必ずしも使い勝手が良いとは限らない(ユーザの好みや慣れの問題)。
といった制約もあるため、直接MIDI データで打ち込んでしまう方が融通が効く場合も考えられる。
この方法を選択する場合は、コード指定用のノートのみならず、ダウンストローク やアップストローク 、ミュートといったストラム奏法の各種構成要素が割り当てられたノートをすべてMIDI データとして打ち込んでいく。以下は打ち込みイメージ例であるが、C3ノートを境にして、下の領域でコード指定を、上の領域でストラムのパターン(ベロシティ含む)を展開する。
これをMIDI 打ち込みではなくリアルタイムのキーボード演奏で実演している動画があったので参考まで。コード指定とストラム構成要素をどのように組み合わせて演奏するか、実際のイメージを掴みやすい。
VIDEO www.youtube.com
T5で使う場合の注意点
上述のようにAGML2側のキー・マッピング 用キーボードがC3を中央ド(ノートナンバー60)に設定しているため、T5側も同様の設定に合わせておくと混乱しないで済む。
具体的には下図のとおり、Settings メニューより MIDI Devices を開き、下の Middle-C の設定を"C3"に指定する*4 。
MIDI 検定で使う場合の注意点
AGML2のストローク 演奏に対応したMIDI データは、明らかにAGML2でしか意味を持たない特殊な打ち込みパターンになる。したがって、この手法は少なくともMIDI 検定2級2次および1級1次審査では使えない。
しかし、オーディオしか評価されない1級2次審査では十分活用の余地があると思われる。もちろん実際に使うとなると、1次審査用に提出するSMFと2次審査用のMIDI データは、一部トラックを差し替える等の差異が生じ、追加編集の手間が余分に必要となる。詳細は過年度課題曲セットを入手しての実技演習によって後日検証したい。