DAW悪戦苦闘記

DAWやMIDIを通じてちまちまとDTMを楽しむ記録+MIDI検定1級到達記

金管楽器のターン表現

MIDI検定1級2013年課題曲演習の一環ではあるが、制作一般論としてトランペットなど金管楽器に登場するターンの譜面解釈とMIDI表現について補足する。

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譜例と解釈法

上記2013年課題曲の譜面では、以下のようなパターンでターン装飾が付く小節が数カ所存在する:

なお、表記のターン記号は、クラシックの標準的な解釈では転回(リバース)ターンに相当するが、ビッグバンド・ジャズでは若干違った使い方をするようである。

同課題曲の制作規定書解説によれば、上例は以下の通りに解釈される:

すなわち、「長い音符の1倍音上に上がり、元の音を通過して目的とする短い音に到達」するようなフレーズに展開する。

金管楽器倍音

ここで問題となるのは、「長い音符の1倍音上」とは何か、というところである。これについては、トランペットなどの金管楽器の発音構造を理解する必要がある。ネット上にも数多くのチュートリアル記事が上がっているものの、初心者には以下のヤマハの解説記事が一番簡潔明瞭でわかりやすいと思う:

www.yamaha.comトランペットの奏法で特徴的なのは、同じバルブ操作(指使い)でもリップ・コントロール(吹き方)で音程を変えられる、という点である。このリップ・コントロールのみで変える音程を倍音列と言う。

これは私のような鍵盤楽器しか触れたことのない人にとっては、ちょっと想像を超えた演奏の仕方で、ブラスバンドの経験でもない限りはなかなかピンとこない。

MIDI打ち込みに際して譜面解釈上頼りになるのは、各指使いに対応した倍音列のチャートである。これもそのものズバリの譜表が上記ヤマハの解説記事に掲載されており、大変わかりやすく、またクイック・レファレンスとして十分活用できる。

同様のことがトロンボーンにも言えて、スライド管の位置7種ごとに吹き方のみで変えられる音程(倍音列)が決まっている。これに関しては、以下の記事を参照(ポジションごとの倍音表あり):

www.yamaha.com

[追記] 実際に聴いてみると...

上記の解釈法通りに作ったMIDIデータを再生して聴いてみると、32分音符の装飾音として付加される「長い音符の1倍音上」のピッチはほとんど判別できないことがわかる。

なので、特に倍音列の幅が狭くなる高音領域の場合は、厳密に倍音列の通りにせず半音または全音上に入れたとしても実際のところ違和感は生じないと思う。どのみちこの装飾音のピッチは1級1次審査の対象外ゆえ、制作時間に余裕がなければ適当に決めてしまっても支障はない。

MIDI検定1級演習 2013年課題曲 (2) 楽曲構成とMIDI入力の段取りなど

以下記事の続き。

daw-jones.hatenablog.com2013年課題曲は転調とテンポ変更にスイング指定が加わり、また繰り返し記号を伴って少々複雑な構成となっている。2011年課題曲演習と同様の手順ではあるが、あらかじめリハーサル・マークやセーニョ記号その他節目となる箇所をマーキングし、全体の骨格を先に準備しておいた方がその後の制作はスムーズに運ぶ。

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打ち込み戦略を練る

戦略と言うとちょっと大げさかもしれないが、どのパートから先に着手するか等、効率重視で制作手順の全体方針を作業開始前にざっくり固めておく方がよいと思う。いきなり見境もなく闇雲に打ち込み出すのは後悔の元である(そんなランダムに作る人はいないだろうが...)。

また同時に、特殊な表現や指示記号、その他ミスを誘発しそうな要注意箇所はすべて洗い出して、目印を付けるなどの誤入力防止策を取っておくとよい。

ドラムとベースから着手が無難

各パートの着手順に関しては、土台となるリズム・セクションを先に潰すアプローチが常識的で無難かと思う。むろん、制作者によって楽器類の得手不得手とか好き嫌いがあるだろうから常時というわけではないが、ポピュラー・ジャンルではこれが王道であろう。

具体的には本曲の場合、以下の理由によりドラムとベースを先にやっつけておく方が効率良い。

  • ドラムは1次審査対象外なので、他パートほどは細かい神経を使わず、ある程度は自由奔放にとりあえず潰しておける。ベロシティの微調整は、他パートとのバランスなどを考慮して後から追加編集すればよい。
  • ベース(アップライト・ベース)はほぼ全編にわたって4ビート4分音符の羅列でMIDIノートの打ち込みは非常に容易である。本曲では一番簡単なパートと言える。簡単なものはとりあえず最優先で潰しておく。

なお、本曲のジャズ・ドラムは、ロックやポップスと異なり演奏バリエーションが非常に豊かで、まるで歌うような感じのドラミングが延々と続くため、残念ながらコピペ対処で横着できるような箇所はほとんど無きに等しい。これは面倒臭いながらも1小節ごとに丁寧に打ち込んでいくしかやりようがない。特にアクセントを念頭に置いたベロシティの表現は最も重要な勘所となる。

ドラムとベースの後には、ピアノを先に手掛けておくとよいだろうと思う。本曲のピアノでは装飾音符一箇所を除いて面倒な表現手段が一切なく、音符通りに素直な打ち込みができて比較的容易だからである(和音入力がちょっと苦痛な程度)。ピアノを終了すると、残りはややこしい主役の管楽器パートのみに集中できる。

ユニット構成になっているパートの取り組み方

主役を張るホーン・セクション(サックス、トランペットおよびトロンボーン)は、2ないし4つの同種楽器ごとにユニットを構成する。

同一ユニットでは各楽器(パート)ともほとんどユニゾンもしくはオクターブ違いのフレーズを奏でるので、とりあえずはユニット中のどれか一つを最後まで完全に打ち込んでから、他はそれをトラック丸ごと複製後に相違する細部を編集、という手順が手っ取り早い。

繰り返し記号の解釈とMIDI編集の対処

本曲の繰り返し構造は、以下記事で取り上げられているCoda(コーダ)の解説例とほぼ同一のパターンとなっている。

unisession.com

すなわち、下例(上記記事より引用)のように、ダルセーニョ(本曲では "D.S. al Coda" と記載されているが意味は "D.S." に同じ)に到達したらセーニョ記号に戻り、"To Coda" の指示記号まで演奏し、そこから Coda へ一気にジャンプして最終節まで演奏して終止、という構造になっている。

Studio One で制作する場合、アレンジメント・トラックを使えば、あるセクションをトラック横断的に一挙に丸ごと複写・移動できる。当然ながら繰り返し重複のセクションはアレンジメント・トラックで明確に区切っておくとよい。この辺は他DAWでも同様の機能が備わっていると思う。因みにGarageBandにもアレンジメント・トラック機能は入っている。

制作手順としては、一旦繰り返しなしでスコア上の小節番号通りに入力を完成させ、その後に繰り返し該当部分のアレンジメント・トラックを選択・丸コピしてダルセーニョ・マーカー位置の後ろに挿入してしまえば2度打ちの手間を省ける。

スウィング(シャッフル)とクオンタイズ (2)

以下記事の続きで、本稿では Studio One 3.5 Prime版(以下S3)における具体的なスウィングMIDI入力の方法について記す。

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2種類の入力手順

S3含めて一般的にDAWでは以下のような2種類の入力手順が考えられる:

  1. ピアノロール編集画面の小節グリッドをあらかじめ8分3連スウィング100%のグリッドに設定しておき、各ノートの頭はそのグリッドに合わせて手入力していく方法。この場合は後から該当ノートを全選択してクオンタイズ適用処理をやる必要はない。ただし、ストレートと違って変則グリッドになるので、慣れていないと途中で混乱する可能性はある。
  2. 最初はすべてスコア通りのストレートで入力し、後から該当箇所に対して一挙に8分3連スウィング100%のクオンタイズを適用する方法。一番簡単確実ではあるが、場合によっては機械的なクオンタイズの結果に対して追加の微修正が必要となることもある(後述)。

後者2番目の方法がお手軽なので、今回は2番目の後処理スタイルを試してみるとする。

譜例とストレート入力

MIDI検定2級2次試験の練習曲セットから課題曲No.2のハーモニカ主旋律冒頭部分を3小節ほどサンプルとして取り上げる。

これを譜面通りの8分音符ストレートで、音価100%のままMIDIデータにすると、以下のような具合になると思う(グリッドは8分音符単位):

スウィング100%のクオンタイズを適用

次に、入力したこれらのノートをすべて選択し、クオンタイズの単位を"1/8 100% sw" に設定した後に Action > Quantize を適用する(単に"Q"キーを押下するだけでもよい)。結果は次の通りとなる(グリッドが2:1の幅で3連符モードになっているところに注目):

これでノートの頭位置(タイミング)はばっちりスウィング指定通りに揃うのだが、オリジナルのストレート入力時のデュレーションそのままで変換されるため、上例のようにどうしてもノートの重複箇所が避けられない。

これらをすべて手作業で微修正しなければならないのは面倒臭い欠点ではあるが、どのみち音価100%のデュレーション(ゲートタイム)は80%や50%等に編集する必要があるため、そのついでに直していけば完全な二度手間という事態にはならないと思う。

追記 (2018-01-15)

頭位置だけではなく、お尻(エンド)に対してもクオンタイズを掛ければ、ほぼ手修正なしでスウィング化できる(とりあえず音価100%の状態で)。

具体的には、ピアノロール編集画面上の Action メニュー(または右クリックのコンテキスト・メニュー)から "Quantize End" を選択適用する。

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音価とノート重複の修正

上述の通り、少なくともノートの重なりに関してはS3上で修正を加える必要がある。デュレーションについては、ストレートの時と同様に全部Dominoで編集する方がMIDI検定2級のルールに即して正確に仕上げることができるが、MIDI検定2級2次以外の一般制作や1級課題曲であればS3で適度に調整・完結しても問題ない。S3で修正後の完成イメージは概ね以下のようになる:

スウィング(シャッフル)とクオンタイズ (1)

以下の記事で書いた通り、今回のMIDI検定2級2次試験練習曲の一つに8分3連のスウィング(シャッフルまたはハネ)表現が登場した。スウィング調の制作については私も初体験なので、少し掘り下げて書き記しておきたい。

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基本的な考え方

8分音符の表と裏拍のペアにつき、記譜通りの両者等分な調子(ストレート)から3連符の調子に読み換えることが基本となる。その際、ストレートを完全に3連符のリズムに変換する(100%)か、ある程度それに近づける(0%以上100%未満の任意の値の範囲)、といった無数のバリエーションがある。

スウィング指定記号の意味

上述のMIDI検定2級練習曲や1級の2013年度課題曲スコアには、テンポ表記の上に以下のようなスウィング指定記号が明示されている:

この場合は、完全に8分3連のハネたリズムを求めており、8分音符の表拍と裏拍のデュレーション音価100%時)の比率を2:1にする。具体的には、以下の模式図を参照(単位なし数字はTPQN=480をベースとしたティック値):

このケースでは、スウィング化比率は100%となる。すなわち、DAWのクオンタイズでは「8分音符スウィング100%」を選択してMIDI入力する。長くなるので、Studio One を使った場合の具体的な入力手順については次回に書き記す。

MIDI検定2級2次(2018年2月期)の練習曲が公開へ

今年も例年通り、12月25日のクリスマスの本日、年明け2月末に実施予定の第19回MIDI検定2級2次試験用練習曲セットが一般公開された。

MIDI検定2級2次試験練習曲スコア及びMP3について

4曲のスコアをざっと眺めたところ、新出表現があったりと難易度が高い印象を受ける。実は前回の2017年2月期に大きく難化しており、その傾向を今回も引き継いだと見受けられる。出題陣が交代したせいかどうかは不明だが、2級実技も多彩な表現手法の観点では1級と遜色ないレベルに上がってきており、今後は上級者とてあまり舐めてかかれないと思われる。

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楽曲個別の解説メモのようなものは、年明けの実習時に改めて書くことにして、ここでは今すぐに気づいた点や要注意ポイントなどを軽く触れておくことにする。

ベンドレンジ

ベンドレンジは楽曲やパートによって、デフォルトの"2"のままとするか、"12"に変更するか、2種類が使い分けされている。ここは例年通りではあるが、慣れていないと非常に紛らわしく、ピッチベンド・チェンジの値と整合性が取れないことになる。

オクターブ調整

4曲ともギターが入っていないため、記譜より1オクターブ下げる移調はベースのみとなる*1。他は明示的に"8va"の指示がある。

スウィング表現が登場

上記練習曲掲示サイトの補足事項2点目に詳しく説明されている通り、今回はいわゆるスウィング・テンポの表現が提示された(練習曲No.2)。新制度の2級実技では初めてかと思う。

今現在私が取り組んでいる2013年1級課題曲はジャズ曲であり、まさしく同様のスウィング表現が盛り込まれているため、でき過ぎた偶然に驚愕しているところだが、今回2級実技の補足解説は非常に大きなヒントとなる。また、添付の模範演奏(MP3)を繰り返し聴いてテンポ感の確認に努めたいところである。

DAW上でのスウィング・テンポの実現方法については、当然ながらクオンタイズとの関係が深いため、そのあたりは上記1級課題曲演習と合わせ、追って書き記すこととしたい*2

新たなコントロール・チェンジによる表現

上記練習曲掲示サイトの補足事項3点目に書かれている通り、練習曲No.3の最後にチョロっと新しいコントール・チェンジ(CC)が加わっている。具体的には CC#74 Brightness を使って音色を連続的に変化させる表現である。これもたぶん初登場ではなかろうか。

しかしこれは打ち込みテクニック的には他CCとまったく変わりないため、全然難しくはないと思う。ちなみに、Dominoでは Cutoff Frequency の編集項目を選べば、ベロシティやその他のCC同様にCC#74を入力編集できる。

CC#74に対応しない音源を使う場合は、Cutoff Frequency(またはローパス・フィルター)で代用できると思うが、別途検証することにしたい。

 

*1:MIDIデータ上では1オクターブ下げるということ。ベースは音源側で既に1オクターブ下がっている場合が多いので、その場合再生時は記譜通りに戻す必要がある。

*2:補足事項指示通りのタイミング調整(ずらし)を手動でやるよりも、クオンタイズを援用した方が省力化でき、またミスの可能性を減らせる。クオンタイズのやり方については別稿で書く。

MIDI検定1級演習 2013年課題曲 (1) 概観

年始休み明け以降はMIDI検定2級実技試験用の練習曲セット*1に着手する必要があるため、この辺でそろそろ本年最後のMIDI検定1級課題曲の演習をやっておくことにしたい。

冬季休暇を使えることを念頭に、今回は比較的難度が高い課題曲を選んでみた。前回取り組んだ2011年度の課題曲演習に引き続き、ポピュラー・ジャンルの楽曲となる。

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演習題材

今回は2013年度(第5回)の課題曲を取り上げる。

本曲は、過去の合格率から類推するに、今までの1級課題曲で最も難しかったと思われるビッグバンドのジャズ楽曲である。

制作規定書にビッグバンド特有の表現に関する解説が4ページにわたって長々と追記されていることから示唆されるように、管楽器中心のかなり面倒臭い作品である。この年の受験者は正直言ってハズレくじを引いたような気分(?)だったのではないか。

1級課題曲は、ポピュラー(難度高い)かクラシック(比較的易しい)かという点ですでに大きな分かれ道になっているが、いずれにせよほぼ毎回新たな表現手法や楽器奏法を盛り込んでくるので、事前に100%手を尽くすということはなかなか難しく、ある程度はぶっつけ本番で臨むしかない。

なお、本曲の演習を終えれば、クラシックとロックおよびジャズ、と一応3大ジャンルは制覇したことになる。1級課題曲の癖や傾向、スコア・リーディングや制作手法に慣れるためには、上級者であっても最低限度3ジャンル3曲の実習は必要と思われる。

セミナー動画

以前に下記の過去記事で紹介した通り、本曲はAMEI主催のMIDI検定1級公開セミナーで取り上げられたことがあり、その時の動画がYouTubeに上がっているのでご参考まで。1級挑戦者は必見のレクチャーである。

www.youtube.com

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スコア概観

ボリュームもさることながら、抑揚やアクセント、その他細かい装飾的な表現が盛り沢山なため、一見して打ち込みの労苦は半端ない感じである。特にアクセントについては、ジャズ楽曲であるからリズム感を損なわないよう、通常よりも一層神経を使う必要がある。

分量

パート数16および小節数123(繰り返しを除く)で、A3用紙12ページから構成される。

ただし管楽器については、同種楽器を2つなし4つ組み合わせてユニットを構成しているため、ユニゾンやオクターブ違いが多く、実質的なパート数は見かけよりも少ない。

また、基本的に8分音符単位のフレーズで進行しているため、全体的な音数は極端に多いというわけではなく、細かい表現を加える前の基本の打ち込み作業は案外時間はかからないかもしれない。下地の作成は、前回取り組んだ2011年課題曲*2に比べればむしろ易しいぐらいか。

転調とテンポ変更

途中2箇所でテンポ変更と転調を伴う(それぞれで場所は異なる)。転調とテンポ変更は1級課題曲の定番である。ちなみに2級2次の過去の練習曲では、転調は一度見たことがあるが、テンポ変更はまだ出題されていないように見受ける。

セットアップデータの挿入位置とノート開始位置

セットアップデータの挿入位置は従来通り*3で変更はないが、楽曲の始まりがいわゆるアウフタクト(弱起)となっている関係上、最初のノートは1小節目の4拍目から入れるよう指定がある。

2級実技を含め、2小節目以降でノートを入れることが通例なので、1次審査の観点からここは要注意の編集作法となっている。 

装飾音符のルール

装飾音符は、ざっと見たところピアノ・パートに1箇所のみ。

MIDIデータでの表現方法では2011年課題曲と同様の細かい規定があり、「装飾音をジャストクオンタイズのタイミングとし、それに続く実音を4分音符=480の分解能において30ティック後ろに配置」せよとの指図に従う。

どうも1級では当初からこれが標準ルールのようであるが、2016年課題曲のように制作者の自由裁量に任される場合もある。

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トランペットの音色

トランペットには途中短い区間でカップ・ミュートの音色指示がある。ただし、プログラム・チェンジの指定はない。

マルチチャネル音源を除き、Studio One などDAWで再現する際にはトラックを分けて別音色で演奏させる必要があるが、1次審査用のMIDIデータはトラックを分けていない元データを提出しなければならず、その辺は相変わらず煩雑である。

繰り返し記号

遂に出たか、という感じで、セーニョ記号とダルセーニョ指示、コーダ記号の組み合わせで繰り返しの指定が入っている。詳細は制作時に追って記す。

ビッグバンド特有の演奏法

げっぷが出そうなくらいにビッグバンド特有表現がてんこ盛りで、制作規定書にも特別欄を設けて各種表現手法の解説記事が掲載されている。

具体的には、スイングのリズム解釈、スクープ、ターンおよびポルタメントの4種となるが、長くなるので個別の表現については順を追って書き記すことにしたい。

また、スイング感出すための勘所として、裏拍(オフビート)の強調を大事にすべしとのアドバイスが書かれていた。オフビートのリズム感はむしろクラシック畑の人が苦労するところかもしれない。ポピュラーでも4つ打ちビートEDMなどに慣れ切っている場合は要注意か。

またスイングと言えば、近年のDAWではスイング効果を出すためのクオンタイズ機能が当たり前のように備わっているが、この機能を私個人としては初めて使う契機となる。

評価対象外のドラム・パート

意外なことに、ドラムは丸ごとすべて1次審査の対象から除外されている。GMパーカッションマップの範囲で適切に表現せよとの指図があるのみ。標準的なドラム譜とGMパーカッションマップとの対応に関しては、前回2011年課題曲演習で補記した通りである。

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評価除外の理由は不明だが、本曲の中心課題は管楽器であることや、また採点負荷を軽減するための措置であろうと考えられる。

*1:2018年2月末実施予定の第19回MIDI検定2級2次試験のために一般公開される練習曲4曲セットのこと。

*2:ロック調の楽曲でパートや音数が非常に多かった。

*3:1拍目頭にSysEx、2拍目に10ティック間隔でセットアップ用のイベントデータをずらずらと並べる。

GarageBand補記: iOS版とmacOS版の相互連携について

今年に入ってからのアップグレードを経て、GarageBand(以下GB)は無償DAWとしてはもはや最強の域に達しているのではないか、という思いを日々深めている昨今である。穿った見方をすれば、競争激化中のDAW市場で Logic Pro X のテコ入れ、あるいはMaciPad自体の販促に繋げるための援護射撃をAppleは上手いこと展開してきたな、という印象すら抱く*1

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しかし機能てんこ盛りにしてくれたのはいいのだが、macOS版とiOS版の2系統が存在し、初心者には少々混乱するような機能・操作の相違もある。そこで、私が検証・理解した範囲で、両者の連携というか互換性について簡単にまとめておこうと思う。

iOS版の守備範囲

iOS版GBにおける楽曲制作は、すべて「録音」という操作に統一されている。外部録音もさることながら、iOS版独自の Touch Instrument 等内臓ツール類による音源再生についてもすべてリアルタイム録音によって記録する。

  • Touch Instrument を使うと、演奏データはMIDIリージョンとしてMIDIに翻訳される。コード・ヘルパーを使用した場合も同様である。
  • Live Loops の場合は、それを構成するループ素材により、あるものはMIDIリージョンとして、それ以外はオーディオとして各トラックごとに分離展開される。
  • Beat Sequencer によるリズム打ち込みについては、1トラック分のMIDIリージョンとしてMIDIに変換される(パラアウトはしない)。

楽曲のソング・ファイルは、デフォルトではiCloud上のGarageBandフォルダーに保存され、Macなどからアクセス可能である。しかしこれらはmacOS版で直接編集できないiOS版独自形式の.bandファイル*2である。

macOS版への連携

上記iOS版のソング・ファイルは、macOS版から直接開くことは可能であるが、自動的にファイル変換処理が起動し、別ファイルとして保存するよう促される(デフォルトの保存先は$HOME/Music/GarageBand)。

その逆に、macOS版に変換された.bandファイルは、iOS版から直接開くことはできないようで、どうしてもiOSバイスに持っていきたい場合は、メニューより 共有 > プロジェクトをiOSGarageBandに書き出す を選んでバウンス処理する。つまり、2ミックスのオーディオ・ファイルでしか受け渡しができず、トラック編集の互換性に関してはiOS版からmacOS版への一方向のみである。常識的にはMac上でミックスダウンとマスター編集をやることになるから、このような片方向互換性でも特に困ることはないと思われる。

*1:GarageBandは今現在のところWindows非対応である。

*2:GBのプロジェクト・ファイル形式。macOSのターミナルから見ればわかるが、実態は楽曲にかかわる様々なリソースが格納されたプロジェクト・フォルダーである。