DAW悪戦苦闘記

DAWやMIDIを通じてちまちまとDTMを楽しむ記録+MIDI検定1級到達記

2018年度第10回MIDI検定1級の日程が決定

本日、協会より2018年度のMIDI検定試験スケジュールが公表された:

2018年度MIDI検定試験のご案内

同時に、昨年度第9回MIDI検定1級課題曲の販売公開も始まったが、これについてはまた稿を改める。

私はつい先月末に2級2次試験を受験したばかりで、依然として結果待ちの状態ではあるが、仮に2級を無事にパスできた場合には、本年8月実施の第10回1級試験を受験するつもりでいる。率直なところ、MIDIの打ち込み技能に関しては2級まで到達すれば十分だと思うが、1級ではミックスダウンなどのオーディオの仕上がりに対する芸術審査という貴重な体験ができるため、ここまで来たら是非チャレンジしたいものである。

それでその1級の今年の試験日程だが、8月10日(金)〜20日(月)の実質10日間となった(20日が提出期限で制作には使えないと想定)。例年通り試験期間中には土日の週末休みが2回到来するので、これに最低1日夏季休暇を追加すれば丸5日間の制作日を確保、これらとウィークデイの日々短時間作業を合わせてなんとか対応可能かとは思う。

曲調は比較的打ち込みが容易なクラシック風だとありがたいが、今年は1級試験発足10周年ということで、奇をてらった難解なアレンジを出してこないかと冷や冷やもんである。たとえば、武満徹とか黛敏郎じゃないが、意表を突いて伝統邦楽をモチーフにした楽曲だと面白いが、私の受験年には避けていただきたい(苦笑)。

ボカロ代替ツール(?)としてのAlterEgo

ボカロ楽曲の制作シーンもすでに衰退論が囁かれる昨今、なにを今更感があるかもしれないが、代替ツールとして無償版AlterEgoがそこそこ使えそうだったので備忘録がてらに書き留めておく。

sleepfreaks-dtm.com

Mac版はAUプラグイン仕様なので、Tracktion は言うに及ばず、GarageBand でも問題なく使える。一方、プラグイン非対応の Studio One Prime版では使えない。

ボカロほど高度にヒューマンな仕上がりは期待できないが、音色はいわゆるケロケロ・ボイスとかボコーダー・ボイスの代わりに使えると思う。一応シンセサイザーというだけあって、私の印象ではボコーダー音色に非常に近い印象を受けた。

あと個人的にボカロよりも評価できる点としては、

  • アニメ声でないのがよい。個人的に初音ミクの甲高いアニメ声はどうも好きになれないので(好みの問題だが)。
  • シラブル解析が英語に対応している。

シラブル切断のタイミングに関しては、MIDIのコントロール・チェンジ(CC)を使うところがなかなか新鮮である。その他の音色パラメータなどもCCで制御できるようになっていて、オートメーションでリアルタイムに変化させることもできそうである(まだ試していないが)。ただし、各CCナンバーの割り当てはMIDI標準とは異なる勝手仕様である。

ボカロの代替でキャラクターに歌わせるというよりも、むしろシンセ音色の一つとして独自な使い方をした方が面白いかもしれない。歌入れであれば、自分で歌ってエフェクトかけたりオーディオ編集でいくらでも加工できるのでそっちの方がお手軽のような気もする。一応 GarageBand にも音声加工入力用のプリセット・エフェクター(ロボット・ボイスとか電話ボイスとか)が入ってる。

Chrome Music Lab を覗いてみる

もう1週間ほど前になるが、以下記事で Chrome Music Lab の新機能である Song Maker が紹介されていたついでに、自主制作に使えそうな自動作曲ツールでもあるかと思って同Lab全体をざっと試してみたところ...

jp.techcrunch.com

musiclab.chromeexperiments.com

ここは実のところ、お道具箱の寄せ集めのような子供用教育サイトであることがわかり、がっかりと同時に期待した自分自身に苦笑。すでにDTMやってる人から見れば玩具レベルで、上記紹介記事やブクマは若干囃し過ぎである。

私は Tensorflow/Magenta をバックエンドに使ったもう少し本格的な自動作曲支援ツールみたいなものを勝手に妄想していたので、当てが外れた。もっとも、将来的にはGoogleがそのような音楽サービス(有償?)に乗り出す可能性はないとは言えないが。

daw-jones.hatenablog.com

下記記事のような製品もすでに市場に出てきており、AI自動作曲支援はプロアマ問わずに一般的に普及、遠からずコモディティ化する成り行きが予想される。DAWの一機能になることも当たり前の時代が迫っているとは思う。

sleepfreaks-dtm.com

音圧戦争雑感

先月末あたりにはてなブックマークでバズっていた以下の記事と、その記事より引用されている参照記事を一読しての感想をメモ書き程度にちょこっと記す。

note.mu

追加の参照記事: 収録レベルの話:Studio Gyokimae

音圧アップ競争のバカバカしさについてはまったく同感至極で、実はこれについてはちょうど1年ほど前にも同テーマで記事を書いていた。

daw-jones.hatenablog.com

この問題がやや複雑なのは、音圧レベルを上げるという操作とその前処理の圧縮処理(ピーク削り)が相互に絡み合っているので、本職のエンジニアの方々以外には問題の本質が見えにくいかもしれないところである。

上の両記事をよく読めばわかる通り、結局のところダイナミック・レンジを損ねて音質劣化を招いている元凶は、圧縮(コンプレッサー処理)の掛け過ぎということに他ならない(当然ですが)。音が大きいとか小さいというのは乱暴に言ってしまえば副次的な処理結果である。

なので、私の理解では、少なくともマスターに対してマキシマイザーを適用する際は、極力圧縮を掛けない方がよいと考える。また、音圧レベルは上げても-1.0dBあたりにして控えめにすることが多い。後工程でさらにオーディオ編集処理を想定する場合はもっと下げることもある。

たとえば私が愛用する LoudMax では、"Threshold" という圧縮パラメータ(どのレベルでピークを削ってしまうかという操作変数)があるが、マスターに挿入する際はここはほとんど触らないか、ほんの少ししかスライドさせないで極端な圧縮はやらないようにする。その方がダイナミック・レンジを維持して全体に聴きやすく耳に心地よいことが多い。結果的には、音割れ防止用のいわゆるリミッター的な使い方に終始していることになる。

loudmax.blogspot.jp

圧縮やり過ぎると音の抜けは悪いし低域は埋没するはで碌な音質にならない、というような指摘で思い出すのは Studio One Prime版に付属する Channel Strip の Compress 機能である。こいつを適用した場合には正にそのような劣化を招くことが多く、私は経験上マスターでは絶対に Compress を掛けないようにしている。

上の「音圧戦争について」の記事では、低域が犠牲になっているという弊害を強調しているが、邦楽は総じて低域処理が甘いという批判がある一因はこれか、と合点がいった。

第19回MIDI検定2級2次試験を終えて (2)

昨日記事の続きで、今回は制作規定書と本番課題曲などについて簡単に振り返る。

daw-jones.hatenablog.com

制作規定書

制作規定書は驚くほど事細かで、ゲートタイム(デュレーション)の長さやコントロール・チェンジの入力タイミングなどについても微に入り細にわたって逐一ルールが記載されていた。

ピッチベンド・チェンジの開始タイミングなど常識的なものもあるが、一部コントロール・チェンジに関してはドンピシャリなタイミングを指定している箇所もあったりで、実際の課題曲制作ではかなり神経を使わざるを得なかった(疲れます)。

テクニカルに難しいわけではないが一点非常に重要なポイントとして、マルカート(テヌートやスタッカートなどの装飾が何もない素の音符)のゲートタイムは音価の90%とするよう統一ルールが規定されていることである。これは公式ガイドブック Chap. 6-5「MIDI検定2級2次試験の概要とポイント」p.242 にも記載されてはいるが、2級2次試験以外の場面では80%前後とする表現解釈もあるので混乱しないよう意識する必要があった。私の記憶が正しければ、確か3級では80%ルールであったように思う。また同じ公式ガイドブックでも Chap. 3-2 (p.80) では80%程度とする解説文がある。もっとも、これは正解とか不正解とかいう次元ではなく、実際の制作ではあくまで目安の基準に過ぎない。

本番課題曲

今回の本番課題曲は、事前公開された練習曲の中では、強いて言えば練習曲No.3に一番近い感じの楽曲が提示された(もちろん作品はまったく異なる)。これに加え、他練習曲に盛り込まれていた細かな表現手法を若干難度アップしていくつか追加したような楽曲、と言えばだいたい雰囲気はつかめるだろうか。しかしその一方で、練習曲No.2の大きなモチーフであったスウィングは結局出題されず仕舞いであった。2級出題作は高々15小節程度の小品なので、練習4曲すべての大ネタを盛り込むには窮屈過ぎる。

ここでスコア例を掲示することは差し控えるが、今回は重要な出題モチーフの一つにCC#74(スウィープ表現)があった。

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これが少々嫌らしいのは、DAWとその付属音源その他のソフトシンセではCC#74に対応していないものが多いだろう、というツール環境の問題である。私もその一人だが、この辺は対応に苦慮した受験者が多かったかもしれない。しかも今回本番では対象音色がシンセリード (Saw Synth) で、CC#74の効果が明白に出る音色であったため、再生を無視するわけにもいかない。ここはMIDIデータとは別に、DAWのオートメーションで音色の Filter Cutoff Frequency やローパス・エフェクトなどを制御する発想に切り替えることができたか否かが分かれ道になったと思われる*1

蛇足もとい邪推

今年度の練習曲(および本番課題曲)ではCC#74やスウィングといった新ネタが登場したが、来年以降も毎回何らかの新ネタを投入してくる可能性はある。別種のコントロール・チェンジや、ギターのストラミングとか変拍子、テンポ変更等々、未登場の表現手法がまだまだ多いからだ。またスウィングについては、将来の本番課題曲で取り上げられることが十分予想される。

作業レポート

2級の作業レポートで制作に関わる部分に関しては、制作環境以外特に何も書かなくて構わないようであった。各トラック(MIDIチャネル)ごとの音色設定などについては、よほど特殊な制作手段を用いない限り空白のままでよいらしい。

因みに、1級の作業レポートはもっとボリュームが多く、トラックごとの使用音源・音色についてもすべて記載するようになっている。

その他

制作時間

実際の制作では事前の予想通り丸1日もあれば十分で、私の場合は土曜日会場試験から帰宅後に4時間程度、翌日曜日の昼から4時間程度、合計8時間程度でCD焼きまで完了した。協会側では5時間を想定しているらしいが、いずれにせよ時間が足りないというようなことはないと思う。

提出手段

提出にあたっては、郵送と宅配便の2方法あるが、簡易書留による郵送が一番安全無難で、協会推奨の方法である。私も一応はそれに従った。ここはつまらない節約をして事故があったら目も当てられない。

合否発表

合否結果発表については、書面通知が4月中旬頃の予定とのことだが、過去の経緯からして前倒しで3月31日に協会サイト上で合格者受験番号が公表掲示されると思われる。

私自身の感触では、想定もしなかったノートミスの連発などで大きな減点でもない限りは合格しているだろうと勝手に期待はしているが、こればっかりは結果発表まで俎板の鯉状態である。

追記 (2018-03-06)

協会よりメールでの通知があり、今年はネット上の合格者番号公表については4月上旬頃、書面による成績表送付は5月上旬頃になるとのこと。例年に比べて試験実施日程が遅かったことが理由。

そういえば、今年に入ってから協会サイトの更新が滞っており、例年ならば2月中にも来年度の試験日程公表などがあるはずだがそれもなく、また昨年1級課題曲の一般販売もまだである。諸々遅延している模様。

*1:音源によっては、各種音色パラメータに対してCC受信をユーザ定義で割り当て可能なものもあり、その場合はCC#74のデータをそのまま活かすことができる。たとえば、Synth1もその一つである。

第19回MIDI検定2級2次試験を終えて (1)

以下記事の続きということになるが、去る24日(土)から26日(月)にかけて実施された本年度第19回MIDI検定2級2次試験の受験を終えたついでに、体験記の体で雑感などを簡単に書いておく。

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少々長くなりそうなので2回に分ける。今日は、試験会場での講義と2次筆記試験について振り返ってみたい。本番課題曲に関しては次回に触れる。なお、試験の実施概要・要項については、協会サイトを参照されたい。

制作に関する講義

これは実態としては、当日配布される制作規定書と公式ガイドブックの Chap.6-5「MIDI検定2級2次試験の概要とポイント」pp.240-243 の試験官による読み上げに過ぎなかった。

質疑応答の時間は特に設けられなかったため、受験者2、3人が講義後個別に試験官にアプローチして質問をしていた。しかし、その後特に受験者全員に対するフィードバックもなく、これはあまりフェアなやり方ではないと思われる。

制作規定書については、練習曲公表の段階で早くから公開・事前周知しておいた方がよいと思うような細かい共通ルールが非常に多く、完全に時間の無駄だと主張するつもりはないものの、講義説明は要点やFAQに絞ってもう少し簡略化してもいいような気がした。

2次筆記試験

サンプルや過去問が一切公表されていないせいでやや謎に包まれているのがこの2次筆記試験であるが、要約すれば、これまで学習してきた3級と2級1次試験の内容を集大成して復習するような問題、という印象を受けた*1。ただし、題材はすべて当日にぶっつけ本番で提示される課題曲についての制作トピックである。

中身は音楽理論よりもむしろMIDIデータ作成上のテクニカルな設問がほぼ9割を占めた。したがって、3級および2級1次のイベントリスト問題と、公開練習曲の演習を十分にこなしていれば素直に解答できるレベルで、意外と(?)良問ではないかという感じを受けた。過去の平均点は17〜18点/20点満点なので、そう恐れる必要はないだろう。

具体的な設問内容をここで例示することは控えるが、一つ強調すべきは、標準的なドラム譜のスコア・リーディング能力が必須だということである。これは2級の練習曲演習は当然として、他にも何らかの方法である程度慣れておいた方がよいかもしれない。私はポピュラー・ジャンルの1級課題曲演習をやっていたおかげで助けられたところがあった。上級者でも特にクラシック畑の人は要注意かと思う。

出題形式は3級および2級1次同様にすべて多肢選択式の20問であった。ただし、この形式が将来も維持されるかどうかは不明である。制限時間は40分程度であるが、案外時間的な余裕があり、幸いにも焦って冷や汗をかくという事態には陥らずに済んだ。乏しいながらも他の受験者の過去の体験談を読むと、時間的な制約が厳しいという趣旨の指摘をちらほら見受けるが、この辺は受験準備の程度等に起因する個人差は当然あるだろう。

 

*1:コントロール・チェンジやGMパーカッション・マップなどは3級で学習したことを再度おさらいしているようなところがある。

3日後に控えたMIDI検定2級2次試験

第19回MIDI検定2級2次試験の本番をいよいよ今週末24日の土曜日に控える。

1次試験を含めた私の実質的な準備期間は約半年で、2次に関しては本年度含めて利用可能な過去5年分の練習曲演習もすべてやり尽くしたゆえ準備万端、ここまで来たらまったくもって明鏡止水の心境である。

今回は1次試験の合格者数が非常に多かったため、2次試験の受験者数は100名超の多数になる可能性があると一旦予想したが、2次試験出願時の受付番号から察するに、案外平年並みかもしれないという拍子抜けするような感触がある*1。もっとも、これは大学受験のような競争試験ではないので、受験者の多寡は全然気にする必要はない。

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2次筆記試験については、サンプルや過去問が一切公表されていないので一抹の不安はあるが、練習曲スコアを100%完全に理解できるレベルに到達していれば特に恐れる必要はないかと思う。私も特段の対策はとっていない(というか、とりようがない)。

当日に提示される本番課題曲は、練習曲の類似バリエーションとなることがはっきりしているから、練習曲演習で培った制作方法とワークフローの延長線上で取り組めば問題なかろう。強いて特筆すべきは、減点幅の大きいノートミスだけはくれぐれもやらかさないよう、見直しチェックを怠らないことぐらいか。時間的には1日あれば十分余裕で対処できる。

今回の試験概要に関しては、試験期間終了後週明け27日火曜日以降に簡単な体験記として書き記すつもりであるが、本番課題曲や筆記試験の具体的な中身詳細については口外しないよう縛りがあるようなので、公正を期すためにその辺は適当にぼやかして書く。

*1:私は1月も15日を過ぎた頃に申し込んだのだが、その時の受付番号が20番代だったので、意外に少ないなという印象を受けた。もちろん、締め切り間際の駆け込み申し込み者が多数出ればどう転ぶかはわからないが。