DAW悪戦苦闘記

DAWやMIDIを通じてちまちまとDTMを楽しむ記録+MIDI検定1級到達記

MIDI検定1級公開セミナーの動画など (1)

楽器フェアなどのイベントの一コマとして、MIDI検定1級受験者のための学習セミナーが催されていたようで、2012年、2013年および2014年の3回分がYouTubeで公開されている。いずれも、1級の課題曲を作成担当している作曲家の外山和彦先生をメイン講師として、ゲストの演奏家を交えながら1時間程度の講義となっている。動画は協会サイトの1級課題曲スコア販売ページからもアクセス可能である。

これとは別に、1級検定に関する外山先生のインタビュー記事が「DTMステーション」に掲載されているので、合わせて読むと試験趣旨等の理解が深まるのではないかと思う。

www.dtmstation.com

 

上記セミナー動画3本は、私のようなまだ1級レベルには到達していない初心者であっても見て損はない内容で、趣味の自主制作も含め、音楽制作全般に対する大きなヒントを貰った気がする。3級・2級受験者にも視聴をお勧めしたい。

以下、備忘録がてら各回の主要ポイントなどを簡単におさらいしておく。

2012年MIDI30周年セミナー

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本セミナーは、MIDIシミュレートが最も難しい楽器の一つであるギター表現を主題とする。

私が肝に命じたいと思った要点は以下2点:

  • 最初からディストーションが掛かったギター音源は使わず、素の音にエフェクトを重ねて自分で音作りをすること。その方が独自かつよりリアルな音色になるし、音色加工の応用力が身につく。
  • ベンディング(チョーキング)など覚えたての技をくどくどしく過剰には使わないこと。ともすれば素人臭さが丸出しになる。

それにしてもこの年の課題曲は気が変になりそうなぐらい変拍子のオンパレードで、相当難度が高い印象を受けた*1。1級のスコアは、2級と違ってピッチベンドやコントロール・チェンジに関する細かな指図・指定の記載がなく、全部自分で考えて表現するようだ。

2013年大音楽会ゼミ

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本セミナーの主題は、管楽器表現である。この年の課題曲は、ビッグバンド・ジャズをモチーフとして、童謡「大きな古時計」をアレンジした難曲である。

要点としては以下3点:

  • ピッチベンドやエクスプレッションなどを滑らかに変化させる補助入力装置として、ブレス・コントローラーを使う手もあるということが紹介された。こうしたコンティニュアス・コントロールができる補助入力装置はもっと積極的に使った方がよいとの指摘。ただし、これはユーザ・カスタマイズ可能なフェーダーやつまみコントローラー搭載のMIDIキーボードでも対応できるはずである。
  • MIDIデータによる最低限のニュアンス表現として、ピッチベンド、モジュレーション、エクスプレッションおよびサステイン・ペダルをうまく組み合わせて表現すること。これらを使いこなしている受験者がことのほか少なかった模様である*2。ただ単に譜面の字面通りでは音楽表現としては不十分であって、そこからニュアンスを加味していく必要がある。
  • シンセも練習が必要だ、とエンジニアの北城氏が強調。これは翌年2014年セミナーでも繰り返し指摘されていた。この点はまったく同感。幸か不幸か、触ったらそれなりに音が鳴るので、そのレベルで立ち止まって満足してしまうユーザが非常に多いのだろうな、という印象はある。もちろん自戒を込めて。

2014年楽器フェアセミナー

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本セミナーの主題は、ギターと並ぶ難所である弦楽器の表現について。この年の課題曲はクラシック風な楽曲で、読譜の知識というか常識も問われる内容だった。

私なりの要点は以下のとおり:

  • 弦楽四重奏などのクラシック譜面にはある程度親しんでおく必要がある。ヴィオラとチェロのスコアの音部記号であるハ音記号の読み方、またハープ譜面の和音はデフォルトではアルペジオで演奏すること、といった常識レベルは最低限。
  • 2013年セミナーでも指摘されていたことだが、そろそろコンティニュアス・コントロールができる補助入力装置をもっと積極的に使おうというアドバイス。今回はボリューム・ペダルの使用例。エクスプレッション入力に使っていたようだった。
  • バイオリンのボウイング表現は強弱が肝要で、実際にはスピードとプレッシャーの組み合わせで調整する。しかし、さすがにベロシティではスピードまでは直接に表現できない。トレモロやトリルもMIDIデータ表現の限界点の一つで、基本的にはサンプリング音源で対応することになる。クラシック系の音源準備は個人的にも大きな残課題。これについてはまた後日に取り上げたいと思う。
  • 合奏の場合は、各楽器でタイミングをわざと微妙にずらし、均一に揃えてしまって機械的かつ平板に聞こえないよう注意する。これは前年セミナーのジャズ楽曲の勘所とも共通するところ。ジャズではグルーブ感を出すためにわざと前のめったりする。

生演奏含めて実際の優れた演奏を数多く聴いて耳を慣らし、プロの演奏に憧れつつこだわりを持つことで表現の幅を広げるべし、という外山先生の指摘は耳に痛い。当然ながら無から有は生まれないわけだから、ジャンルを問わず、多くのインプットが必要であると痛感させられる。

その他、全体を通じての感想や今後の1級対策などについて思うところがいくつかあるのだが、長くなったので稿を改める。

追記 (2018-04-22)

言うまでもなく、生楽器の演奏シミュレートは今や音源対応の方が優れていると思うので、MIDIでの表現に限界があるところは種々のアーティキュレーション機能が豊富な音源を導入し、お金で解決してしまう方が効率かつ効果的である(無償ツールでも割と高品質な音源はいくつかある)。MIDI検定1級の2次審査でもそういう側面はあると思われる。

*1:Tracktionは言うに及ばず、DominoとMML変拍子入力には対応可能。

*2:制作時間切れでそこまで手が回らない受験者も多いのではないかと想像する。音数が多い難曲だとノート入力だけで手一杯に陥るリスクが高いと思う。この辺りは私も効率的な作業フローを追々考えていきたい。