MIDI検定2級2次(実技)対策の一環で、Dominoを使って完成させたSMFを再び Studio One 3 Prime に読み込んで再生させる場合の注意点について述べる。以下の過去記事の補足を兼ねる。
Studio One 本体というよりもむしろ、ほとんどが内蔵音源の Presence XT の問題である。なお、一部は1級実技の制作とも無関係ではない。
システム・セットアップデータ
実は冒頭1小節目で送信されるシステム・セットアップデータはまったく反映されないようである*1。したがって、以下の2項目は、セットアップデータを参考にして別途手動で調整する必要がある:
- ボリュームとパンは、ミキサーにて適当なレベルに調整する。ボリュームについては少なくとも音割れしないレベルまで下げる(マスター音量含む)。
- ベンドレンジは、Presence XT の方で各トラック別に調整する(下例参照)。ピッチベンド・コントロールを使用しないトラックはデフォルトのまま追加調整は不要である。
モジュレーションなどコントロール・チェンジの受信設定
Presence XT は、モジュレーション・ホイールの変調対象をユーザによる割り当て定義に委ねているが、デフォルト設定がないために、素の状態では何ら効力を発揮しない。したがって、ビブラート効果を出したい場合は、音色に応じてユーザによる追加のチューニングが必要になってくる。
具体的には、下例の通りに Presence XT のモジュレーション・マトリクスを設定してやり、CC#1 → Modulation Wheel → LFO 1 → Pitch という制御フローでゆらぎを与える。
ビブラートであれば常識的にはLFOの波形はサイン波が最適と思うが、レート(振幅周波数)は実際に音を聴きながら音色に応じて微調整するとよい。またスライダー(反応度合い)は必ず適度に右に振っておく。ただし、あまり右に振り過ぎると過剰効果で珍妙な音になるので、これについても再生結果を聴いて微調整する必要がある。
以上はCC#1の例であるが、CC#11 Expression についても同様にしてモジュレーション・マトリクスの定義をしてやる(以下記事参照)。
ドラム・キットの選択
ドラムは特別な指定がない限りは、パーカッションも含め、Drum Kits より
- Basic Kit
- Classic Kit
- Standard Kit
の3種からどれか一つを選択すればまず問題ない*2。少なくとも2級2次に関してはほとんどこれで通用すると思う。
逆に変わり種を選ぶと、GMパーカッション・マップに100%対応しているかどうか定かではないものがある。一方1級については、曲調に合わせてある程度自由に選んでもいいと思う。
もしどうしてもドラムの再生音が埋没して弱いと感じる場合は、音色重ね合わせの考え方を応用する。すなわち、同一のMIDIイベントを丸々コピーして追加のドラム・トラックを用意し、同じかまたは同系別音色のドラム音色で同時再生すると適度に厚みが増すことが多い。たとえば、Basic Kit のトラックとClassic Kit のトラックで同時再生するなど。
ミキシングとマスター編集
簡易コンプレッサーとイコライザー兼用の内臓エフェクターである Channel Strip は必要最低限の機能なので、各トラックごとに持ち上げたい周波数領域の若干の強調と不要な低域カットなどに使い方を絞る。
私が何回か試用した経験では、Channel Strip はマスターに対して適用しない方が無難である。マスター処理については、Studio One から書き出したミックスダウン(2ミックス)を、Tracktion(GarageBandでもよい)に読み込んで音圧レベル調整やコンプレッサーおよびエンハンサー処理をすればかなりクオリティが上がる*3。
もともと Presence XT の音色は高音の抜けが悪くて音が曇った印象が強いので、少なくとも1級実技レベルであれば、他DAWを併用して最終的なマスター編集をやった方がよい。2級実技に関しては、もし本番で時間的余裕がなければそこまでやる必要はない。