弦楽器のサンプリング音色で苦労するのがアタックの強弱表現である。弦楽器は総じて発音の立ち上がりが遅いのでベロシティの効果も薄く、特にレガート系の音色はそのまま無加工ではfpなどの強弱を表現できない。
音源によっては細かなアーティキュレーション機能を備えるものもあるが*1、それ以外にもいくつか打つ手がある。
トラック・ディレイを使う
一番安直な方法は、いわゆるトラック・ディレイを使って発音タイミングを微妙に前倒しシフトする方法である。これは Studio One 3 Prime(以下S3)でも利用可能であり、使い方・考え方は Cubase とほぼ同様である。
S3では、トラック・インスペクターより Delay の数値を入力設定する。発音タイミングを速めたいのであれば、負値を入力する(ミリ秒単位)。概ね -50ms 前後がよいとされるが、音色にもよるので実際に聴いて微調整する。
トランジェントを適用する
追加のエフェクト処理としては、トランジェント (transient) を挿入し、オーディオ効果としてアタックを強めにするのも一法である。ただし、プラグインを追加できないS3では不可能なので*2、S3より書き出したステムを別のDAWへインポートした上で編集する。ステム書き出しについては別途稿を改めて書く。
音色をレイヤー合成する
実際には上記2法でもまだ全然甘い・弱い場合も多く、最終手段としてはアタックの強い同系音色(楽曲によってはシンセ音色でもよい)を重ねる*3。
S3内臓音源の Presence XT を例にとれば、Full Legato Strings (アタックが弱いレガート)と Full Détaché Strings (アタックが強くスタッカートに近い)を組み合わせると概ねリアルに再現できる。
*1:たとえば Sample Tank などは音域外のキーにアーティキュレーション追加の機能を持つ。
*2:Professional版か、もしくはプラグイン対応アドオンを追加購入したArtist版でないと拡張できない。
*3:Prime/Artist版では Multi Instrument 機能がないので、同一MIDIイベントを別トラックにコピペして鳴らす。なお、Tracktionであればラック・フィルター機能を使って容易にレイヤー合成できる。