DAW悪戦苦闘記

DAWやMIDIを通じてDTMを楽しむ記録。MIDI検定試験にもチャレンジするなり。

WolframTonesの不思議な世界

夏休みの自動作曲探求シリーズの続き。

daw-jones.hatenablog.com

 

自動作曲とかアルゴリズム作曲と呼ばれる分野では、近年はニューラルネットをベースにした機械学習モデルが主役に躍り出た感があるが、それ以外の手法を使ったモデルも結構昔から多数存在している。

その中でもモデルが比較的単純明快で、なおかつWebサービスの形で気軽にお試しできるものとしてWolframTonesをちょっと検証してみる。

tones.wolfram.com

 

これの考え方の基本はセルラーオートマトンで、予測可能な何らかの規則性を持ったパターンと、完全なランダムとの中間の複雑性を持つため、音楽との相性が良いと期待される。

かなり雑駁に言ってしまえば、各楽曲ジャンルに特徴的な進行パターンを、隣接するセルの塗りつぶし推移規則に置き換えることでメロディやリズムの時系列を生成しているようである(当たらずといえども遠からず?)*1

アルゴリズムの詳細については本ブログの趣旨を大幅に逸脱してしまうのでこれ以上の深掘りは避ける。そこは別に知らなくとも触って楽しんだり実験したりすることは可能である。

使い方

誰でも直感的に使えるインターフェースなので操作法は自明だと思うが、参考までに下図を参照されたい。

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基本操作は、"Music Style"セクションのジャンル・ボタンを押す毎にセルラーオートマトンを生成し、GM音源再生でその適否を耳で確かめる。この繰り返しである。生成パラメータや再生音色などはシステム側で適度に設定してくれるため、原則としてユーザが細かく調整をする必要はないように思う。

その他私が気づいた注意点としては、

  • 実際のところ生成パラメータを変えても、多くの場合はあまり大きな変化は生まれないようだ。
  • デフォルトは15秒の長さで非常に短い。概ね4小節前後の長さである。最大30秒まで設定できるが、さほど目立ったバリエーションは付け足されない。ただ単にリズム・パターンをそのまま延長しているだけのことが多い。
  • MIDIデータ (SMF) のダウンロードは可能である。上部のダウンロード・ボタンをクリックすると、MIDIおよびMP3、WAV、FLACの4種からファイル形式を選択できる。
  • 私の理解が間違っていなければ、利用規約上、本サイトの生成物の著作権Wolfram Research, Inc. に帰属する。私的利用と非商用利用は自由のようだが、加工した作品を公表したりするのは厳密には無理なようである。しかし、この点は事実上有名無実化しているようにも思う。なぜなら、オーディオであれMIDIであれ、ミックス加工してしまえば出自はまったくわからないからだ。

生成されるMIDIデータ

Chordana Composer 同様にマルチトラックのSMFが書き出される。ただし、1小節目は特にセットアップ用に確保されているわけではなく、冒頭のプログラム・チェンジと楽曲データは渾然一体となっている(下図Domino読み込み例を参照)。一応ベロシティもある程度細かく調整されてはいる。チャネル10はMIDIの標準規定通りにリズム・トラックに割り当てられている。

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個人的な印象

このツールは楽曲ジャンルの指定が最大のキモだが、私が試した限りでは、Rock/Popと Hip Hop はモチーフとして使えそうなパターンを生成することが多い。結論としては、少なくともループ素材の生成ツールとして活用できそうである。リズムとメロディだけ頂くという手もありだろう。

しかし一方で、他ジャンルはほとんどランダム(デタラメ)な感じが強く、正直言って楽曲活用は厳しいのではなかろうか。むろん、現代音楽ばりに敢えて実験的な作品制作を狙うのであれば使えなくはないだろう。組み合わせる音源音色によってはかなりユニークな楽曲に仕上がる可能性を秘める(好意的に解釈すれば)。

*1:生成ロジックの概要については解説ページを参照。大元の考え方は、Stephen Wolfram の名著 A New Kind of Science が原点である。なお、セルラーオートマトン全般に関してはWikipediaの解説などを参照。