以下記事の続き。今回はギターのパートについて。本曲のMIDI表現では一番肝になる要素が詰まった楽器パートで、音色編集含めて他楽器以上の工夫を要する。これでようやく主要楽器のパートは完成、山場を越えたといったところである。
音色の選定と表現手段
本曲ではギターもキーボード同様に曲中で音色の変更指定があり、エレキ2種およびアコギ2種の計4音色を用意する必要がある。具体的には、
- エレキ1: ディストーションを掛けた音色
- エレキ2: 軽くコーラスのみ掛けるミュート音色
- アコギ1: スチール・ギター音色
- アコギ2: ナイロン・ギター音色
ディストーション・ギター
Studio One 3.5 Prime版(以下S3)では、内蔵音源 Presence XT のギター音色に入っている "Distorted Gtr" がそこそこ使える。ただし、これ単独では少々物足りないので、S3付属のエフェクターである RedlightDist をほんのり軽く加えると、いい塩梅に歪んだ音色を出してくれる。
ディストーション・ギターの場合、長めに伸ばすノートについては適度に(しつこくない程度に)ビブラートを入れた方がよいと思う*1。Presence XT におけるモジュレーションの設定については以下の記事を参照。
上記記事で変調対象は音量としているが、本来はピッチにした方がよく、その場合は効き具合を調整するスライダーをあまり右に振り過ぎない設定とする(下例参照)。
ミュート・ギター
Presence XT のギター音色にある "Electric Guitar Mute" で充足する。これは素のままでは完全に埋もれてしまうため、S3付属のエフェクト Chorus でダブラー効果を軽めに掛けてちょっと浮き立たせる。
スチール・ギター
ここではスチール弦のアコギを指す。あくまでアクースティック・ギターの指定なので、いわゆるハワイアン・スチール・ギターなどの特殊なエレキ・ギターという意味ではない(将来的にフィーチャーされる可能性はあるが)。
困ったことに、S3ではスチール・ギターにふさわしい音色が入っておらず*2、Tracktion 6(以下T6)を援用して他の音源プラグインを使わざるを得ない。一法として、S3の Presence XT に入っている Combinations > Nylon Steel に、T6で再生した Ample Guitar M Lite II の音色を重ねる。
"Nylon Steel" 音色はほとんどナイロンに近い音色で、これだけではスチール・ギターには聴こえない。さりとて "Ample Guitar" もこの音色単独ではどうしても線が細く、埋没してしまう傾向が否めない。したがって、ドラムでやったように、結局両方を重ね合わせることでなんとか解決する。
ボーカル含めて同系音色重ね合わせのテクニックはよく使われる手法だが、エフェクト処理だけではどうやっても映えない苦境の解決策として有効な場合が多いように思う。本曲ではバイオリン音色でも活用した方策だが、これについてはまた追って記す。
スチール・ギターのパートで特徴的なストラム奏法については、稿を改めることとする。
ナイロン・ギター
ナイロン・ギター音色は、本曲ではボサノヴァ・セクションでのみ登場する。ここは特にストラム奏法は不要であると考えられるが、各リハーサル・マークの終止コード部分に軽く適用してもいいだろう。
音色は多分に好みの問題もあるが、Presence XT では "Clean Guitar" がまあまあ良い。それ以外のナイロン・ギター音色は曇った感じが強く、高音の伸びが良くないものが多い。この種の音色はミックス段階での取り扱いが難しいように思う。
オクターブ調整
ギター音色もベース同様に記譜より1オクターブ下げる解釈をする。注意すべきは、ベースと違って音源側ですでに1オクターブ下げているわけではないことである。
しかしながら、S3では一旦記譜通りにMIDIデータを入力し、再生トランスポーズ機能で1オクターブ下げの対応をする(下図参照)。過去に何度か書いたように、記譜通りに入力する理由は、譜面との照合検証を容易にするためである。オクターブ調整程度ならばともかく、2016年度課題曲でトライしたような複雑な移調楽器はこの方法で対応しないと打ち込みミスのチェックが困難になる。
当然ながら1次審査用に提出する最終形のMIDIデータ(SMF)は1オクターブ下げておく必要があるが、SMF作成の対処例については後日まとめる。