今年に入ってからのアップグレードを経て、GarageBand(以下GB)は無償DAWとしてはもはや最強の域に達しているのではないか、という思いを日々深めている昨今である。穿った見方をすれば、競争激化中のDAW市場で Logic Pro X のテコ入れ、あるいはMacやiPad自体の販促に繋げるための援護射撃をAppleは上手いこと展開してきたな、という印象すら抱く*1。
しかし機能てんこ盛りにしてくれたのはいいのだが、macOS版とiOS版の2系統が存在し、初心者には少々混乱するような機能・操作の相違もある。そこで、私が検証・理解した範囲で、両者の連携というか互換性について簡単にまとめておこうと思う。
iOS版の守備範囲
iOS版GBにおける楽曲制作は、すべて「録音」という操作に統一されている。外部録音もさることながら、iOS版独自の Touch Instrument 等内臓ツール類による音源再生についてもすべてリアルタイム録音によって記録する。
- Touch Instrument を使うと、演奏データはMIDIリージョンとしてMIDIに翻訳される。コード・ヘルパーを使用した場合も同様である。
- Live Loops の場合は、それを構成するループ素材により、あるものはMIDIリージョンとして、それ以外はオーディオとして各トラックごとに分離展開される。
- Beat Sequencer によるリズム打ち込みについては、1トラック分のMIDIリージョンとしてMIDIに変換される(パラアウトはしない)。
楽曲のソング・ファイルは、デフォルトではiCloud上のGarageBandフォルダーに保存され、Macなどからアクセス可能である。しかしこれらはmacOS版で直接編集できないiOS版独自形式の.bandファイル*2である。
macOS版への連携
上記iOS版のソング・ファイルは、macOS版から直接開くことは可能であるが、自動的にファイル変換処理が起動し、別ファイルとして保存するよう促される(デフォルトの保存先は$HOME/Music/GarageBand
)。
その逆に、macOS版に変換された.bandファイルは、iOS版から直接開くことはできないようで、どうしてもiOSデバイスに持っていきたい場合は、メニューより 共有 > プロジェクトをiOS版GarageBandに書き出す を選んでバウンス処理する。つまり、2ミックスのオーディオ・ファイルでしか受け渡しができず、トラック編集の互換性に関してはiOS版からmacOS版への一方向のみである。常識的にはMac上でミックスダウンとマスター編集をやることになるから、このような片方向互換性でも特に困ることはないと思われる。
*1:GarageBandは今現在のところWindows非対応である。
*2:GBのプロジェクト・ファイル形式。macOSのターミナルから見ればわかるが、実態は楽曲にかかわる様々なリソースが格納されたプロジェクト・フォルダーである。