以下記事の続きで、MIDI検定1級2017年課題曲の演習というテーマに沿って、今回より個別具体的な打ち込み表現のポイントなどを追々書き足していくことにしたい。必ずしもMIDI検定に限定されない制作一般的なtipsも多く混ざっていると思うので、自主制作のヒントにもなるのではないか。
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今回は、本曲の大きなバックボーンを構成するパーカッションについて考察する。
いつもと違う記譜法
上記概観記事でも書いたように、本曲では一般的なドラム譜あるいはパーカッション譜とは異なり、GMパーカッション・マップのノート・ナンバーに対応する音符をそのまま五線譜に記す書き方になっているが(下図は Guiro の例)、ある意味この方が親切であるように思う。
このような記譜スタイルの場合は、再生音を確認しつつ通常のピアノロール画面で該当ノートを打ち込んで行けば特に問題ないと思う。
Studio One では、通常のピアノールとドラム編集モードを随時切り替え可能なので、照らし合わせて確認すれば間違いがないと思われる。
ノートの打ち込み自体は容易
やや拍子抜けするような安心材料としては、全部で8パートに分かれるラテン打楽器のどのパートもほとんど9割方同一パターンの繰り返しに終始し、打ち込み自体はすぐに出来上がるという点である。
すなわち、同一パターンのように見えて細部が微妙に異なる引っ掛けもどきがない(と言ってよいレベル)。一見すると分量は多いのだが実質的には大したことなく、表現が細かくなる傾向にあるドラムセットがなかったのは不幸中の幸いといったところか。
ゲートタイムをどうするか
上例のような記譜法の場合に、8分音符や4分音符などをその通りに解釈してゲートタイムを入れるべきかどうかが迷いどころとなる。
しかし、ドラムおよびパーカッション音色の場合はゲートタイムは有効でない(ことが普通である)から、すべて同じ長さで打ち込んでしまっても問題ないと思う*1。たとえば16分音符の長さで統一するなど。その方が打ち込みの労力は格段に削減できる。どのみちゲートタイムは1次審査の評価対象外である。
表現上の勘所
セクションごとにベロシティの強弱が多様に変化しているので、アクセントを含めてこれをできるだけ忠実に反映させる点が重要だろう。ベロシティは1次審査の対象外だが、2次審査のことを考えると手を抜かない方がよい。
ベロシティを基本として、これに加えて一部の打楽器ではオートメーションでボリューム変化を付けた方がより表現が豊かになる*2。典型的にはティンバレス (Timbales) で、ソロ小節またはセクション節目などにおいては若干ボリュームを上げると効果的だと思う。
音源音色の選定
Studio One の Presence XT 音源を使用する場合は、パーカッション音色としてGM配列準拠の "Basic Kit"、"Classic Kit" および "Standard Kit" の3種を組み合わせて使用するとよい。一方で "Brazil Kit" などはGM配列ではないので本曲では使えないことに留意する。
ここは "Basic Kit" で統一して全8種の打楽器を鳴らせばよいではないか、と思うかもしれないが、楽器によって音色がチープでリアルではないものも混じっているので、使い分けた方が無難である。例えば、肝となるティンバレスは "Standard Kit" の音色がベストであろう。
FXチャネルでエフェクトの統一
各打楽器パートごとに8つのトラックに分かれ、いわばパラアウト (individual output) の状態になっているパーカッションに一体感を持たせるには、aux/sendトラックを一つ用意してそこで8トラックすべてをまとめたエフェクト*3を掛けると効果的であると思う。Studio One では「FXチャネル」と呼ばれるものである。
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Prime版では使えるエフェクトが限定的とはいえ、FXチャネルを追加するだけでも音に厚みが増してクリアな感じになる。