DAW悪戦苦闘記

DAWやMIDIを通じてちまちまとDTMを楽しむ記録+MIDI検定1級到達記

Studio One 4.5 新機能とPrime版

先月に中間アップデートにしてはかなり多数の機能改修を実施した Studio One 4.5 であるが、Sleepfreaks の以下紹介記事で要点が簡潔にまとめられていたので、備忘録的に記しておきたい。

その前に。この種の機能改修にはありがちと思うが、5月末に早速バグ・フィックスがリリースされてv4.5.1にアップデートされているので、まだパッチを当てていないユーザはご注意のほどを。

sleepfreaks-dtm.com

なお、上記記事で取り上げられた機能のうちPrime版では未実装であるものは以下の3点で*1、それ以外はPrime版においても反映されていることを自分自身で確認した:

これでプラグインが利用可能であればプロ版はたぶん不要になってしまうだろうが、さすがにそういう愚かなグレード管理はやるわけがない、当然ながら。

*1:改修対象となった機能それ自体がPrime版では利用可能ではないことに注意。

アルゴレイブの世界

先月末にWIREDの記事でアルゴレイブ (algorave) の話題が取り上げられ、はてブ界隈で若干バズっていたので、少し掘り下げて備忘録的に書き記しておきたい。

wired.jp

英文の元記事は2ヶ月前の3月末に公開されていたようだが、ご参考までに。

www.wired.com

早い話が自動作曲をフィーチャーしたライブ・コーディング前提のレイブ・パーティーのことなのだが、なにも今日昨日に始まったというわけではなく、2011年ないし2012頃から徐々に盛り上がり出したムーブメントのようである。実はその背景にある自動作曲奏法の研究自体も結構大昔から現代音楽の一角などで脈々と継承されてきた歴史があり、そのような巨人の肩に乗った成果であることは明らかだろう。近年ではAI/機械学習との結びつきも深い。

en.wikipedia.org

以下は、アルゴレイブ発案者の一人であるMclean博士のインタビュー映像で、一体どんなものなのか手短に概略を把握するにはうってつけである。

www.youtube.com

その他、YouTube上で "algorave" と検索すれば山のようにパフォーマンス映像がヒットするので、つらつら眺めていると生成される楽曲の特徴や会場の雰囲気などを味わうことができると思う。東京でもイベントをやっているようだ。

www.youtube.com

このアルゴレイブには、よく使われるデファクトのツール群があり、プログラミング言語としては TidalCycles が頻繁に使用される。パフォーマンス会場でスクリーンに映されるコードのほとんどは TidalCycles を Atom エディターで編集しているライブ映像である。

肝心の音源については SuperCollider を SuperDirt という wrapper (?) ソフトで起動させ、それを上述の TidalCycles から制御するという環境が一般的なようである。MacだとHomebrewを使ってインストールする方法が一番お手軽であろう。その辺の環境設定周りは以下の記事に詳しい。私も後日自分自身で試してみようと思う。

qiita.com

また上記WIRED記事には書かれていなかったが、この種のライブ・コーディング・パフォーマンスでは、自動生成されたMIDIデータの出力先と音源制御管理のDAWとして Ableton Live がよく援用されるようである。アルゴレイブ用に開発された各種プラグインAbleton Live 専用のものが多いように見受ける。Magentaプラグインはその代表例かと思う。

magenta.tensorflow.org

因みに、美術の世界でもこの種のコーディングをベースとするアルゴリズミックないわゆる generative art のシーンは当然に存在していて、MITが開発したProcessing言語+IDEが標準的な制作ツールとして普及している。

面白いことに、UdemyでProcessingの初級者講座が開講しているようだったので、私は早速enrollしてみることにした。感想などは後日レポートしてみたい。

www.udemy.com

MIDI 2.0 改訂の動向

MIDI規格のバージョン2.0への改訂は、昨年に狼煙が上がって以降今年に入ってから本格化しており、その動向については本ブログでも随時追跡してアップデートを図ってきた。

daw-jones.hatenablog.com

この改訂過程で検討されている次期規格仕様に関しては、つい先日米国のMIDI規格管理団体 (The MIDI Association) から比較的詳細な解説記事が発表され、一部のメディアでも報道されていたようである。 

www.midi.org

英語が苦手な方は、これをレビュー解説している DTM Station の下記記事が参考になるかと思う。

www.dtmstation.com

具体的な仕様に関しては、昨年来明らかにされていた改訂方針を大きく更新するようなサプライズは特になかったように見受ける。Property Exchange とかベロシティなどの解像度を大幅に拡張強化する話などは既に今年の1月段階でも取り沙汰されていた。

なお、日本国内のMIDI管理団体であるAMEIからは今回特段の報告はなされなかった(6月2日時点)。ついでながら無関係な愚痴だが、AMEIは米国MMAを見習ってそのウエブサイトをもう少しモダンなブログ・ベースのデザインに修正した方がよいのではないか。MIDI検定のサイトもそうだが、前世紀の遺物みたいな作りでちょっと萎える(阿部寛ホームページばりに軽快なのはよいとしても)。

ところで、MIDI 2.0 の実装時期がいったいいつ頃になるのか、という点はユーザとしても非常に関心あるところだと思うのだが、元記事では下記の通りにコメントされている(強調筆者):

The foundational specification, MIDI-CI has been published and is available for download. Other key MIDI 2.0 specifications are nearing completion in the MIDI Manufacturers Association. But it will take several years to write numerous Profile and Property Exchange specifications to follow.

The MMA put out a press release at the beginning of 2019 that listed just some of the companies that are already prototyping or making plans for products to come. Those that agreed to be mentioned include Ableton/Cycling '74, Art+Logic, Bome Software, Google, imitone, Native Instruments, Roland, ROLI, Steinberg, TouchKeys, and Yamaha.

However, we do not expect any MIDI 2.0 products to be released in 2019. For MIDI to be fully useable, the industry needs devices, applications, operating systems, and DAWs to support these new specifications. It will take time for a whole system of devices to be available.

当然ながら今年中に MIDI 2.0 compliant な製品が市場に出てくるわけもなく、普及と浸透には「数年」はかかる見通しとなっている。個人的には、やはりメジャーなDAWがどこまでどう対応していくのか興味を持って行く末を見守っている段階ではある。

またMIDI検定に関しては、今日の段階でAMEIから何かしらのアナウンスがあるわけではないのだが、将来的に学習課程と試験内容が更新されることは必至であろう。実技が2.0準拠となるのは随分と先のことになると思うが、MIDI関連の知識問題(筆記試験)については先取りして案外早い時期に改訂される可能性は十分想定される。

Studio One 4.5 がアップグレード・リリース

つい先日の5月22日に、Studio One 4 が 4.5 へ無償アップグレードされた。バージョン4のメジャー・アップグレードからちょうど1年ぶりの中間アップデートとなり、いくつかの新機能についてはPrime版でも利用可能となっている。

70以上の新機能追加ということらしいので、とてもじゃないがすべてを追い切れないのだが、日本市場の代理店であるMI7の下記サイトに明快な解説動画付きで概要がまとめられているので、多くのユーザや愛好家はそちらを参照するだけで十分だろうと思う。

www.mi7.co.jp

今回は、トラックのグルーピング等 ProTools からの移行を意識した改善が多く見られるように感じる。MIDI関連ではクオンタイズの操作性やバリエーションが向上しているように見受けた。この辺の基本的なグルーピングやクオンタイズ機能改善はPrime版でも反映されている。 

なお、肝心のアップデート方法であるが、Studio One のアプリケーション内部からいつも通りにアップデート可能であるはずだが、どういうわけだかアップデーター上で "Download Failed!" のエラー・メッセージが表示されて先に進まない現象に遭遇するかもしれない(私もその一人であった)。

そのような場合は、My PreSonus のサイトにログインして "My プロダクト" のページに入り、対象製品より "Studio One Prime" を選択した上で、表示されているバージョンが4.5.0であることを確認後、v4.5.0 インストーラーのダウンロード・ボタンを押して、それを上書きインストールすればよい。

実用講座が充実しているUdemy

平成最後、と思ったら零時を過ぎてしまったので令和元年初日、の記事として新たなる学びの機会に着目し、久々にMOOC関連で一つ追記しておこうかと思う。

私自身は今まで Coursera と edX の2大MOOCをよく利用しており、興味を引く講座があればつまみ食い程度には今でも時折受講することがある。なお、有償の認定証 (certificate) に関しては個人的にその市場価値はまだまだ疑わしいと思っているので一度も購入した経験はないし、内外就職活動上大きくアピールする印象はないためあまりお勧めはしません。

daw-jones.hatenablog.com

この2者に加えて最近 Udemy を利用する機会があったのだが、これが期待していた以上に内容が充実していたので敢えてこの場でも推奨しておきたい。Coursera や edX はどちらかというとアカデミックなコースが中心で、ある程度のバックグラウンドがないと受講のハードルが高いものも多いのだが、有償サービスとはいえ Udemy は以下の点でオススメである:

  • IT関連を中心として日本人講師による日本語コースが充実している。これは Coursera や edX にはまったく見られない特徴である。英語が苦手な日本人ユーザにとっては願ってもない学習環境だと思う。
  • 受講価格がお手頃である。頻繁にセールと言う名のプロモーションを打っており、そのチャンスを利用すれば一講座2,000円未満で受講できる*1。分野によっては専門書買うより安い。
  • カルチャーセンター的な感じで実用・実践講座がかなり多い。バリエーションは edX 以上だと思う。IT系だとベンダー資格セミナー講座も数多く開講されている。
  • 音楽系のハウツー講座も豊富に用意されている(ただし残念ながら英語講座が中心)。DAWチュートリアル講座など何種類もあります。たとえば、Logic Pro X や Cubase のハウツー講座など。

www.udemy.com

実際のところ、実用ハウツーものはYouTubeに無料チュートリアルの類が山ほどアップされているので、まずはそこである程度渉猟してから、どうしても不足するようであれば Udemy にあたりをつける、というのが上手いアプローチの仕方かも知れない。

*1:アパレルで例えて言うならばGAPのセール価格みたいなもので、セール値引き後の価格がむしろ正価だと思っておいた方がよい。

MIDI検定2級の総評コメントでDomino使用上の注意喚起

もうかれこれ3週間ほど前に、平成最後となった本年2月期MIDI検定2級2次の試験結果がすでに公表されていたものの、当ブログで触れるタイミングがすっかり遅くなってしまった*1

実は試験実施時に書いた私の寸評記事でも引用させてもらったのだが、とある受験者のブログが今回試験の様子を結構赤裸々に伝えていてなかなか興味深かった。

daw-jones.hatenablog.com

それでこの方は結局無事合格を果たされ、その暁に受験体験レポートの体で書かれたいくつか記事がたまたま私の目に止まった。それがまたテクニカルに興味深い内容に触れていたので再びこの場で参照させていただくことにしたい。

the-art-of-rock-transcript.com

謎のテンポデータ混入

まず、この方の採点記録では原因不明の不要なテンポデータ混入でレギュレーション違反の減点があった旨を吐露されていたのだが、これは私が昨年1級受験時に食らった減点パターンとまったく同じである*2

しかし以前書いたように私の環境*3では指摘されたようなテンポデータはまったく確認できなかった。念のためにSMF自体をPythonのMIDOパッケージを使って直接覗き、メタデータを検証してみても全然確認できない、という不可思議というか納得行かない減点だったことは覚えている。

採点者が使用したCubaseのバグじゃないのかと訝しんだりもしたのだが、しかしこの受験者自身Cubaseを使用していたそうなので一層謎である。同様の謎めいた減点を食らう受験者が今後も後を絶たず、採点上問題になる可能性があるかもしれない。

daw-jones.hatenablog.com

Dominoとプログラム・チェンジ

この方は上記引用ブログで協会発表の全体講評をそのままアップされていたので拝見させてもらったが、特に私の目を引いたのはDominoの挙動に関する注意喚起コメントである。

要するに、Dominoでプログラム・チェンジを変更設定してその後にSMF書き出しをすると、Domino独自のCC#00 + CC#32設定値が追加挿入されてしまうという問題がある。試験の規定ではGM2音源使用を前提として、CC#00="121"(またはドラムチャネルの場合は"120")+ CC#32="0" にする必要があるが、Domino仕様のイベント値が追加で挿入されるところが問題視されている。

具体的には、協会提供のSMFテンプレをDominoに読み込んで以下のように音色変更したとする。

f:id:daw_jones:20190420235946p:plain

それを再びSMFとして書き出すと、CC#00="0" + CC#32="4" という組み合わせで不要なイベント・データが書き足されてしまうのである。

f:id:daw_jones:20190421000005p:plain

これに気づいてこれらを手動削除してしまえば特に問題はないのだが、忘れてそのまま放置するとレギュレーション違反で減点されることになろう。

紛らわしいことにDominoはSMFを直接編集しているわけではなく、一旦Domino独自のファイル・フォーマットで全データを格納して編集する。編集を終えたらそれを別途SMFとして書き出すわけだが、その書き出したSMF自体を再度Dominoに読み込んで不要データが入っていないかどうかを再確認する必要がある。ここはちょっとした盲点と言えば盲点である。

*1:私自身は昨年の受験で合格済みである。今はあくまでMIDI検定ウォッチャーとして時折興味本位で取り上げているに過ぎないのだが。

*2:結果的には昨年に一応1級合格まで到達はした。

*3:Studio One と Domino の組み合わせ。

iOS版シンセの Synth One はオススメ

昨日 Apple App Store の Today 紹介ページでフィーチャーされていたため、私を含めて初めて気づいた人も少なくなかったのではないかと想定されるが、オープンソースの無償iOS版シンセ Synth One *1がとても素晴らしく、思わず紹介したくなった次第である。

音楽を愛する人たちへ:App Store ストーリー

audiokitpro.com

基本的にはiPad用のアプリであるが、iPhoneに入れても一応問題なく動作はする。多彩な音色とエフェクト、アルペジエーター表現の豊富さにしばし圧倒されること請け合いである。中途半端な有償アプリはちょっと太刀打ちできないのではなかろうか。

これをMacやPC上のDAWと連携する場合は、DTM用のキーボードとオーディオ・インターフェースに繋いでオーディオ録音する方法が一番手っ取り早いであろうが、もしもiOS内で完結使用する場合は、いわゆる Inter-App Audio 接続で本 Synth One と iOS版のDAWアプリなどを連携させることになる。

www.dtmstation.com

代表的なところでは、iOSGarageBandで演奏録音する手がある。操作手順の詳細については下記チュートリアルなどを参考にされたい。

www.youtube.com

なお、iPhone上の Synth One ではアプリ切り替え用のアイコンがどうも表示されないようなので、演奏録音後に GarageBand へ容易に戻る手立てがないところが難点である。

*1:名称が酷似するものの国産の無償プラグインシンセで名高い Synth1とは別物である。