DAW悪戦苦闘記

DAWやMIDIを通じてちまちまとDTMを楽しむ記録+MIDI検定1級到達記

フーリエ変換の基礎講座などについて

DAWユーザで創作上フーリエ変換を日常操作する必要がある人はまずいないと思うが、デジタル信号処理の技術が裏方でどのように下支えしているのか、基礎教養として知っておいても損はないと思い、ちょっと齧ってみた次第である。なお、高校レベルの複素数とベクトルおよびオイラーの公式に関する知識は前提として持っておいた方がよい。

フーリエ変換は工学専攻の学生には必須の習得課題であるため、レベルやアプローチの差はあれど教科書の類は数多く出版されているし、ネット上にも山のような資料が公開されている中、自分に合った教材を見つけて学習できる環境はすでに整っている。しかし選択肢が多い分、逆に自分のニーズにマッチする教材の発見がなかなか容易でないという問題がある。

そこでとりあえずはいつも通りにUdemyの講座を漁ってみたところ、私が受講した以下の講座は要点が比較的簡潔にまとまっていて明快であった。例えばローパスフィルター等周波数フィルターの仕組みなど具体的な計算実験例を交えて視覚的に教わるので大変分かり易くてオススメ。ただ、私もそうだが理科系分野の人以外はおそらく2、3周して復習しないと腑に落ちないトピックスも少なくないかと思う。

www.udemy.com

Udemy講座を受講する以前、私は最初にまずCourseraの下記コースに挑もうとしたのだが、時間的な制約も厳しく走破断念に至った経緯がある。人によってはこちらの方がニーズに合っているかもしれない。

www.coursera.org

フーリエ変換の考え方自体はとてもシンプルで、原系列に対して各周波数毎のsin/cos(実際には複素正弦波で一括り)を掛け合わせて内積を取ることで相関係数(=各周波数の影響の大きさ)を出しているようなもんですが、実際計算するにあたっては規格化とか面倒な処理も入ってくるため、便利なライブラリを使うことになろう。要は時系列データを周波数ドメイン写像変換してある種の操作を扱い易くするのがその趣旨である。

実際の離散フーリエ変換にあたっては、いわゆるエイリアシングの問題を回避するために、ナイキストのサンプリング定理に基づいて十分な数の標本を確保する必要があるという注意点も指摘される。因みにこのサンプリング定理はMIDI検定の3級/2級筆記試験でも触れられている(ほんの触りですが)。

Synth One の無料チュートリアル本

数あるiOS版シンセアプリの中でおそらくベスト中のベストと言っても過言ではないオープンソースの Synth One が先日更新され、公式ガイド本で参照される音色(ライブラリ名称は作者名 "Francis Preve")がプリセットで付属するようになった。

ちなみに公式ガイド/チュートリアル本は無償で公開されており、Apple Books でダウンロード閲覧できる。

AudioKit Synth One: The Ultimate Guide

AudioKit Synth One: The Ultimate Guide

  • Francis Preve
  • 音楽
  • 無料

books.apple.com

70ページほどの小冊子で図版が大半を占めるため、1日もあれば一通り読めるボリュームである。現代的なアナログシンセ入門としても使えるのではないだろうか。

なお、iPhoneだと文字サイズが小さくて読みづらいだろうから、iPadもしくはMac上で閲覧することをオススメしたい。

蛇足であるが、Synth One を外部音源として GarageBand と連携した際、まだ依然として GarageBand のアイコンが Synth One のメニューに表示されないようなので、演奏録音後に GarageBand のトラック編集画面へ容易に戻れないのは残念。

daw-jones.hatenablog.com

MacがARMベースに刷新されたこともあり、将来的にDAW用のプラグインとして Synth One が使えるようになったらとても嬉しいですが。

MIDI検定2級練習曲(2021年2月期)が公表

年末恒例ですが、来年2月に実施予定のMIDI検定2級2次(実技)試験練習曲4曲が公表となっている。

www.midilicense.com

因みに今回2次の筆記試験は、コロナ禍の影響で遂にオンラインへ移行した。といってもITの資格試験などでお馴染みな完全CBT形式ではなく、ZOOM上でのやりとりを介したペーパーとオンラインの折衷的な実施形態である。ZOOMを使ったこのやり方は1次試験の間口を絞り込んで受験者をかなり限定した今回だからこそ可能であり、平常に戻って受験者がもし増えた状況下ではテクニカルな面で無理があろう。なので、個人的には2次の筆記試験はこの際廃止してもいいのではないかとすら思う(所詮は3級と2級1次のおさらいに過ぎない)。

www.midilicense.com

閑話休題。今回の練習曲も前回(2020年2月期)同様にかなり簡単な印象を受ける。転調や変拍子などの捻りは一切なく、基本に終始している傾向は前回から変わっていない。本番もこのレベルだとしたら、やはり基本テク(いつも出るパターンは限られている)をしっかり押さえておきさえすれば、難なくクリアできると思われる。あとはうっかりしたレギュレーション違反やノートミスをやらかさないことに尽きるだろう。

daw-jones.hatenablog.com

間口を絞ったせいで今回の受験者数は過去最低を想定するが、もともと競争試験ではないので、気を抜くことなく基本を忘れずにみなさんご健闘ください。

2020年MIDI検定1級試験の合格者発表

2日前に今年のMIDI検定1級合格者発表があった模様。今回の合格者はたったの6名だが、コロナ禍の影響で受験者総数自体が激減していたであろうことは想像に難くない。

MIDI検定1級受験番号発表

今年はもしもオリンピックが計画通りに開催されていたら何かオリンピックに因んだ課題曲が提示されるかもしれないと妄想していたものの、結局のところ古典中の古典とも言える「G線上のアリア」をモチーフとした意外な展開に終わっている。ボリューム的にはどうだったんでしょうね。

ところで年明け2月実施予定の2級2次試験はオンライン実施を検討中らしいが、いやむしろこの機会に3級と2級1次をオンライン化すべきでは、と思いますね。2級2次の筆記試験は廃止して2級1次に統合し、CBT形式での実施でいいのではなかろうか。つまり2級2次は1級同様に実技制作物の提出だけにすればよい。

ただし、CBTはおそらくシステムの維持コストが重くのしかかる可能性があって、受験料の値上げに繋がる懸念がある。

Twitterでつぶやき始め

コロナの影響というわけではないけれども、最近は冗談抜きで仕事やらお勉強が忙しくなってしまい、こちらのブログ更新が停滞しがちでまったく忸怩たる思いである。

DTM関連の探求課題やらちょっとしたネタはいろいろとストックがあるのだが、がっつり書く時間がなかなか確保できないため、寸評コメントなどを分野問わずにTwitterで気軽につぶやくことにしてみた。右のサイドバーで流しているのでご参考まで。こういう埋め込み連携が簡単にできるのはうれしい。

DAWと各種プラグインも試してみたい興味津々な製品が多々あるのだが、導入タイミングとしては私のMacを一旦新規更新してからの方がよいだろうということで保留状態になっている。ご存知の通りMacIntelからARMチップセットに移行することになったため、ARM版新型Macに買い換えるタイミングを思案している最中だ。同じようなMacユーザは結構多いのではないだろうか。ARM版は年内にも発売との噂だが、初物なので第1世代は見送った方がいいとすると、買い換えは来年以降にならざるを得ない見通しである。

あと本ブログのメインテーマの一つであるAI/機械学習と楽曲制作のクロスオーバーという分野はMacの更新とは無関係に実験できるので、引き続きGoogleのMagentaやAWSの Deep Composer を中心にあれこれ実践してみようかと思う。 

Studio One 5 Prime が公開

ちょうど4日前の12日、Studio One 5 の無償Prime版がついに公開され、My PreSonus 経由で自由にダウンロードできるようになった。インストール方法などについては前バージョンの時と変わりはないが、一応以下の記事を参考にされたい。

www.phileweb.com

www.dtmstation.com

sleepfreaks-dtm.com

バージョン5のインストーラーを落としてインストすると、前バージョン4を上書きせずに、両者並存する形でインストールされる。またバージョン4での環境設定はそのままバージョン5に引き継がれるので、一からすべてセットアップし直す必要はない。Presence XT の音源ファイルやループ素材もそのまま引き継いで利用可能である(新たにダウンロードする必要はない)。

基本的には前バージョン4は要らなくなったら消去アンイストールすればよいと思うが、一つ注意すべきは、最新のバージョン5で既存の楽曲ファイルを開いて編集後に保存すると、バージョン4では二度と開くことができない点である。なので、複雑な設定等何らかの理由で移行に慎重を期す必要があるユーザは、しばらく並存活用して問題がないことを確認してからバージョン4を消去してもよいかと思う。

機能面では、Prime版は(当然ですが)いろいろと制約があるため、ざっと見たところPrime版の範囲では前バージョン4と大差ないように見受ける。FXが一段と充実したぐらいかなと。MIDIやオーディオ編集機能はほぼほぼそのままである。Prime版に限定しない場合の機能改善点については以下の解説記事に詳しい。

sleepfreaks-dtm.com

バージョン5がお披露目された先月にも書いたように、やはり今回のバージョン5改訂の恩恵を存分に受けるためには Artist 版を購入すべきで、また付言すれば Artist 版が実はもっともお得なエディションになったと個人的に考える次第です。

 

Studio One がバージョン 5 になった

最近は仕事だなんだといろいろ忙しくてDAW弄り趣味からはすっかり遠ざかっていたところ、先週になって Studio One がバージョン 5 にメジャー・アップグレード、との喜ばしいニュースが目に飛び込んできた。なお、無償版 Prime の公開はもう少し先の8月に入ってからとのこと。

www.barks.jp

www.dtmstation.com

新機能詳細については、上記記事や代理店公式販売サイトなどを参照してもうらうのがよいと思うのでこの場での引用繰り返しは避ける。

今回のアップグレードで個人的に一番の注目点は、Artist版がついにVST/AUプラグイン対応になったことだ。Artist版は価格が¥10,600と破格の安さで、基本的な付属音源や編集機能に関してはProfessional版とそれほど遜色ないのでかなりお買い得だと思う。Show Page とかスコア編集機能は入っていないのだが、こうした上位機能はライブ活動をするようなプロのユーザ以外は不要であろう。宅録中心ユーザであればArtist版でも十分だと思う。もっとも、Pro版搭載の「コード・トラックとハーモニー編集」機能が欠けているのはやや残念だが。

5月に Logic Pro X の大規模改訂があった際にも書いたように、値段も考慮すればMacユーザだともう Logic Pro がデフォルトで決まり、と考えていたものの、Artist版の¥10,600というのは騙されたと思って買えるギリギリの価格帯なので、とりあえず Studio One Artist で行ってみるという選択肢はとても魅力的だ。

daw-jones.hatenablog.com

私の場合、騙されてみるどころか、本ブログで何度も評しているように Studio One の編集機能は群を抜いて使いやすいと身を以て体験しているため、使い慣れた Prime 版の移行先としては躊躇なく Artist 版をメインに据えることに抵抗はない。

蛇足。Macユーザとしてちょっと気になるのは、Macが本年Q4登場とも噂されるARMベース独自チップのアーキテクチャに移行した場合、Studio One もそれほど長い開発期間を置かずしてARMネイティブ版を投入してくれるのかどうか、という観点。おそらく Logic Pro は即応と想定するが、競争熾烈なDAW市場で生き残りを賭けて早めの対応を期待したいところ。