前回の続きというか蛇足。その他1級実技対策上の課題や問題点、セミナー3回全体を通しての感想などを追記しておきたい。
1級対策用の作業フローや使用ツールについて
1級課題曲のスコアを見て確信したのは、Dominoはメインの編集ツールとしてはたぶん使えないだろうな、ということである*1。その根拠としては、
- 2級練習・課題曲よりも楽器パート(トラック)の数や小節数が段違いに多い。こうした作品はDAW (Tracktion 私は現在は Studio One を使っています) で編集する方が全体を俯瞰した上で漏れやミスを発見しやすい。
- 各パート譜において全休符がかなり多い。ということは、MIDIデータ作成にあたり、トラック丸ごとではなく数小節のMIDIクリップ単位で作成編集した方がはるかに効率がいい。
- GM音源以外の音色適用やエフェクト加工などでDAWによる編集はいずれにしても必須。であれば最初からDAWで一元管理した方が効率的である。
なお、MMLは楽曲全体というよりも個別のMIDIデータクリップの作成には依然として援用できると考えられる(ノートミス対策)。 MMLはもはや使用せず。
ヒューマンな表現とMIDI打ち込みの方法
前のめりな感じを出すとかグルーブ感を出すといったノート・タイミングに絡んだニュアンス表現は、データの打ち込み微修正というより、むしろキーボード生演奏によるリアルタイム録音で対処する方が速いし効果的だろう*2。自主制作ではリアルタイム録音でさっさとクリップを作っていくという運用が主体になるかと思う。
ただしMIDI検定の場合、1級実技の1次審査段階ではMIDIデータの正確性がチェックされるので、ノートのタイミングを敢えて意図的にずらしたりするような芸当も使えず、思い切ったグルーブ感とかは押し出しにくい。その辺は1級実技試験のジレンマになっているようにも思う*3。
生楽器シミュレーションの一抹の虚しさ
さすがにMIDI表現が100%無駄であるとは全然思わないが、MIDIで生楽器をとことん再現することにこだわるのは今や邪道ではないか、という疑念は拭えない。実際のところ、ギターや弦楽器等のMIDI打ち込みでは労力に見合った効果が得られにくく、むしろ音源プラグインの技術進歩に頼る方がより目的に叶う場合が多い。
そもそも、生楽器演奏が使える環境であれば生演奏をDAWにオーディオ録音してしまう方がどう考えてもベストである*4。もちろん、この辺の制作スタンスはジャンルや制作時間・コストにもよりけりだろうとは理解するが。