DAW悪戦苦闘記

DAWやMIDIを通じてちまちまとDTMを楽しむ記録+MIDI検定1級到達記

譜面解釈とMIDI表現 (5) ホルンのゲシュトップフト奏法

2016年のMIDI検定1級課題曲において、もっとも特異な音色指定は、ホルンのゲシュトップフト奏法である。

作曲者からのメッセージに簡単な解説が書かれていたが、私を含めて管楽器に馴染みのない人にとってはこれだけでは皆目見当がつかないので、YouTubeに多数上がっているチュートリアル動画などを積極的に探して耳で確認する必要がある。

スコア上の表記

ゲシュトップフトの指定は、下例のように音符の下に小さく"+"記号が付く。

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ゲシュトップフト奏法の基本と音色

英語では stopping / stopped horn と言うのが一般的なようである。奏法は、管に握りこぶしを入れるため*1、ミュート用の器具を装填するミュート奏法とは厳密には異なる。しかし、サウンドとしては多くの場合両者ほとんど区別がつかない印象も受ける(専門家には怒られそうだが)。

ゲシュトップフト - Wikipedia

奏法と音色効果については、数ある中でも下記の教則動画が一番わかりやすいと思う。聴いてみると明らかなように、音色はミュートしたトランペットの音にとてもよく似ており、高音域の金属的な倍音を伴うようになる。

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ゲシュトップフトとミュートの比較相違と使い分けについては以下のインタビュー動画が非常にわかりやすかった。ゲシュトップフトは管に入れた手で細かく共鳴を調整できるので、厳密に音程をコントロールしなければならない旋律を弾くような場合はミュートよりも有利であること、音色としてはミュートの方が高音の伸びが良く (cut through) 若干くっきりとしていること、などがポイントであろうか。

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どうシミュレートするか

上記より明らかなように、ゲシュトップフトはMIDI表現ではなくて音源音色の問題であり、要はそのものズバリな音色があればそれを使えば済む話である。しかしそうでない場合は、類似音色で差し替えるか重ねるほかないだろう。ほとんどの場合、ミュートのホルン音色があればそれで代用し、細かなニュアンスはエフェクトで加工対応ということでも特に問題ないと思う。

私の現在の環境ではミュート・ホルンの音色が見当たらなかったので、下記 Orion Sound Module 無償版に入っている音色 "Brass - French Horn" を Tracktion 5 で再生してWAVに書き出したものを再度 Studio One (Prime) に取り込んでミックスした。この音色は高音のエッジが立っていて、柔らかいストレートのホルンよりはミュート・ホルンに若干近い。しかしこれだけでは物足りないため、苦肉の策として Muted Trumpet の音色を微かに混ぜることでなんとかゲシュトップフトの風味を出した*2

icon.jp

*1:ただし、低域での手動調整は難しいので、通常は専用器具を用いるようである。

*2:シンセのブラス音色を加工して重ねる等のテクニックも考えられるが音色調整にさらに時間を要すると思う。