DAW悪戦苦闘記

DAWやMIDIを通じてちまちまとDTMを楽しむ記録+MIDI検定1級到達記

MIDI検定1級演習 2013年課題曲 (3) 全体総括その他注意点など

以下記事の続き。一通り制作を終えてみての反省、所感や傾向と対策のようなものを順不同で書いてみたい。そろそろ2級練習曲の演習と準備に取り掛からねばならないため、1級課題曲演習はこれにて一旦終了とする。

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時間配分と入力手順

本曲は難解なだけでなくボリュームも多いため、限られた制作時間で仕上げるプレッシャーは結構きつく、本番で十分な作業時間を捻出できない場合は物理的に対応不可能となるリスクが高い。案の定2013年度1級は合格率が過去最低であったが、楽曲それ自体の難度の高さもさることながら、制作時間不足で途中棄権した受験者も多かったのではないか。本番時は万全を期してまとまった休暇を確保できるよう事前に算段しておく必要があろう*1。1級はほとんどそれで成否が決まってしまうような気がしてならない。

土台となるドラムおよびベースとバッキングのピアノについては、MIDIテクニック上は特に難しいわけではないが、打ち込み自体は想像以上に時間がかかる。リズム・セクションが案外しんどいのは2011年課題曲でも経験済みだが、どうやら昨年2017年課題曲でも同様な傾向が見られたようで、ポピュラー曲が提示されたら運が悪かったと思って諦めるしかない(半分冗談)。年度によって難易度やボリュームに大きなバラツキがあるのは些か承服できないとはいえ、1級は一応プロレベルを謳う以上、何が出されても対応できる基礎力は養っておく必要があるだろう。

ホーン・セクションのユニット構成に対しては、下記記事でも指摘したように、一つを潰した後にそれをトラックごと丸コピして細部修正という手順で対処すればかなり省力化できる。たとえば、4パート構成のトランペットは、トランペット1を先にベロシティや CC#11 Expression 等々含めてすべて完成させ、2以降は1のトラック・データを複写してからピッチの相違などを編集する*2

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スウィング対応について

途中から盛り上がってアップテンポになる "Double Time" のセクションに関しては敢えてスウィングのクオンタイズを適用しなくともよいのではないかと思う。因みに制作規定書には、一般的にテンポが速くなるとスウィング効果はほとんど発現しない、というような解説が書かれている。

これには実は横着したい理由が別にあって、以下記事でも指摘したように、スウィングのクオンタイズを掛けるとノートの重複修正(ノートの末尾と次に来るノートの頭が重なる問題を修正)が膨大に発生し、制作時間が足りなくなるからである。なので、スウィング対応は前半短めの "Easy Swing" のセクション(8分3連スウィング)だけに留めてしまう。

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その代わりに後半のスウィング感はベロシティ編集を中心に対処する。ただし、ベロシティによる "Double Time" のスウィングっぽいノリ表現は正直かなり難しい。個人的にはサックスの速いフレーズがどうしてももたつき気味になる印象をどうにかしたかったが、これを丁寧に編集するのは多大な時間を費やす懸念がある。この辺はジャズをある程度聴き込んでスウィング感を体得していないとどうしても迷いが生じるところである。

ビッグバンドの楽器配置とパン

ビッグバンドにおける各楽器パートのステージ配置は、クラシック・オーケストラ同様に標準的なパターンが決まっているので、各パンポット(定位)はそれを参考にして調整する。ネット上にいくつか資料が上がっているのでどれでもよいが、たとえばWikipediaの記事などを参考にする。

複雑な調性と臨時記号の嵐の中で

調性は Ab maj に始まって、Eb maj から F maj に移行する、といった具合に、途中2回の転調は例年通りではある。しかしなにしろ調性が結構複雑かつ臨時記号がてんこ盛りなので、Studio One に備わっているようなスケール・ガイダンス機能がないとノートミス誘発の可能性が非常に高いだろう。

本曲は途中の転調がちょっと気づきにくいところもあり、譜面にマーキングするなり工夫しておかないと、うっかり調性を間違ったままノートを打ち込んでしまう危ない一面もある。最終的には自分の耳が頼りで、何度も再生確認して違和感のある不協和音などが少しでもあれば譜面と再照合する、といった地道な努力あるのみか。

音色の選択と再生

繰り返しになるが以下別稿の補足。多くの音源では同系統楽器の異なる音色が揃っているので、楽曲のテーマや雰囲気に適合しているかどうか、それぞれ簡単に再生チェックしてマッチするものを選ぶ必要がある。Studio One 付属音源の Presence XT の場合は、ソロと合奏セクションで音色が大きく異なるものがある。特にベロシティの強弱に対してどう音色変化するかは要チェックであろう。

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あと管楽器で注意すべきは、サックス音色のアタック立ち上がりがやや遅いので、トラック・ディレイ機能を使って発音タイミングを若干早めた方がよい(場合がある)ということ。今回のケースでは概ね10〜15msを目処とする。トラック・ディレイについては以下の過去記事を参照。

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譜面PDF化の効果は環境次第

以下記事で2011年課題曲演習の反省材料として譜面のPDF化を挙げた。

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今回実際に試してみたところ、MacBook (Pro) などのノートパソコンの小ぶりなディスプレイではかえって見辛いことが判明した。元の紙媒体スコアのサイズがA3であるから、21もしくは27インチの大型ディスプレイで表示しないと画面に収まり切れず、PDF化はかえって無意味で功を奏さない。できればダブル・ディスプレイ環境が望ましいのだろうが、MIDI検定のためだけにそこまでの投資は無駄に思えるため、とりあえず紙のスコアのままとし、卓上譜面スタンドの購入を検討する。

*1:1級課題曲を3曲チャレンジしてみた結果、最低丸5日は必要というのが私の実感である。むろん制作者の技量次第だが、意外に面倒なSMFの作成まで考えると、上級者でも多めに余裕を見込んでおく必要があると思う。

*2:見た目はほぼ同一フレーズだが最後の1音だけピッチが違うといった嫌らしいパターンが多いのでコピペ編集には細心の注意を払う。