DAW悪戦苦闘記

DAWやMIDIを通じてちまちまとDTMを楽しむ記録+MIDI検定1級到達記

音圧戦争雑感

先月末あたりにはてなブックマークでバズっていた以下の記事と、その記事より引用されている参照記事を一読しての感想をメモ書き程度にちょこっと記す。

note.mu

追加の参照記事: 収録レベルの話:Studio Gyokimae

音圧アップ競争のバカバカしさについてはまったく同感至極で、実はこれについてはちょうど1年ほど前にも同テーマで記事を書いていた。

daw-jones.hatenablog.com

この問題がやや複雑なのは、音圧レベルを上げるという操作とその前処理の圧縮処理(ピーク削り)が相互に絡み合っているので、本職のエンジニアの方々以外には問題の本質が見えにくいかもしれないところである。

上の両記事をよく読めばわかる通り、結局のところダイナミック・レンジを損ねて音質劣化を招いている元凶は、圧縮(コンプレッサー処理)の掛け過ぎということに他ならない(当然ですが)。音が大きいとか小さいというのは乱暴に言ってしまえば副次的な処理結果である。

なので、私の理解では、少なくともマスターに対してマキシマイザーを適用する際は、極力圧縮を掛けない方がよいと考える。また、音圧レベルは上げても-1.0dBあたりにして控えめにすることが多い。後工程でさらにオーディオ編集処理を想定する場合はもっと下げることもある。

たとえば私が愛用する LoudMax では、"Threshold" という圧縮パラメータ(どのレベルでピークを削ってしまうかという操作変数)があるが、マスターに挿入する際はここはほとんど触らないか、ほんの少ししかスライドさせないで極端な圧縮はやらないようにする。その方がダイナミック・レンジを維持して全体に聴きやすく耳に心地よいことが多い。結果的には、音割れ防止用のいわゆるリミッター的な使い方に終始していることになる。

loudmax.blogspot.jp

圧縮やり過ぎると音の抜けは悪いし低域は埋没するはで碌な音質にならない、というような指摘で思い出すのは Studio One Prime版に付属する Channel Strip の Compress 機能である。こいつを適用した場合には正にそのような劣化を招くことが多く、私は経験上マスターでは絶対に Compress を掛けないようにしている。

上の「音圧戦争について」の記事では、低域が犠牲になっているという弊害を強調しているが、邦楽は総じて低域処理が甘いという批判がある一因はこれか、と合点がいった。