以下記事の続きで、今回はMuseScoreを使用した譜面化を検証してみる。
SMFのインポート
前回と同様に、システム・セットアップデータが付加されたSMFを作成し、これをMuseScoreに読み込むとする。
SMF作成後、メニューバーから ファイル > 開く を選んで、対象となるSMF(.midファイル)を直接選択して開く。とりあえずデフォルトの解釈条件設定で読み込んで構わないと思う。不都合な部分は後から微調整する。
セットアップデータ中にプログラム・チェンジのイベントがあると、それに対応した楽器名称の割り当てなどを自動的にやってくれるので便利である。この辺はGarageBandとほぼ同様に対処できる。
ページ設定とPDF出力
1級課題曲のようなパート数が多い譜面の場合、デフォルトのページレイアウト(A4ポートレイト)ではページに収まりきれず、またとても見辛いため、ページサイズとスケールを調整してページに収める。
具体的には、メニューバーから レイアウト > ページの設定 を開き、ページサイズをA3横方向に選択、プレビューを参照しながらスケール値を調整する。その他の余白などはデフォルトで特に問題ないと思う。
ページの設定が終わったら、もしPDFに出力したい場合は、メニューバーから ファイル > エクスポート を開いて、出力フォーマットから「PDFファイル (*.pdf)」を選んでセーブする(下例参照)。
連続ビュー
自主制作でスコアを清書印刷したい場合などは、上述のPDF出力は重宝すると思うが、今回のようにMIDI打ち込み結果の譜面照合目的で使うのであれば、わざわざページ設定してPDF(あるいは紙)出力せずとももっと見やすいモードが用意されている。それが「連続ビュー」である。
連続ビューの表示モードでは、一番左端の音部記号などがカラム固定されるので、視線を移動せずに横スクロールだけで次々に各小節を流してフォーカスでき、大変便利である。例えるならば、Excelのワークシートで左タイトル列をウインドウ枠固定で表示する方法と同様の効果である。
調性の設定
上記の出力サンプルからも見て取れるように、デフォルトのままでも割と高品質な仕上がりになっているが、もう一工夫するとすれば、転調に伴う調号の修正を追加した方がオリジナルの譜面表記にさらに近づく。
これは非常に簡単で、調号パレットから該当する調号を選び、転調箇所の小節(どのパートでもよい)にドラッグ&ドロップするだけである。これをすべての転調箇所で繰り返す。
総合的な評価
MuseScoreは自主制作した楽曲などの譜面の清書出力にはもってこいであろう。機能的にもSibelius等商用ソフトとほとんど遜色はないのではないか。いずれにせよMIDIデータの音程チェック程度の目的であれば、GarageBandの方で十分かと思う。しかし、どちらも制約条件が多々あることは念頭に置く必要がある:
- 異名同音が散在する。臨時記号が場所によってシャープであったりフラットであったりと統一感がない。この辺は設定次第だとは思うが未確認。
- ゲートタイムの長さによっては、オリジナルと異なる長さの音符で表記されることがある。譜面化時のクオンタイズに依存すると思うが、個別の修正は非常に面倒である。
- ゲートタイムの解釈と関連するが、装飾音符やグリッサンド、トレモロなどの細かい表現が加わると、オリジナルと著しく異なった表記となる。
- MuseScoreでは、金管・木管楽器などの移調楽器は自動的に(勝手に)移調表記する。MIDI検定1級課題曲スコアでは移調せずに in C で記譜されることがある。この辺はたぶん定義設定で変更可能とは思うが未確認。
これらを踏まえれば、装飾音符などの付加表現がない部分に限定して照合チェックに使う方がよさそうである。それ以外は従来通りにピアノロール上で何度か検証する方が間違いがない。またドラムとパーカッションもわざわざ譜面化した照合は不要と思われる。