DAW悪戦苦闘記

DAWやMIDIを通じてちまちまとDTMを楽しむ記録+MIDI検定1級到達記

2018年MIDI検定1級試験を振り返る (3) - 音色

以下記事の続き。最後の締めくくりとして、割と苦労した音源・音色について書き記す。

daw-jones.hatenablog.com

毎度お馴染みの西洋管弦楽器系については Studio One 付属の Presence XT サンプリング音色で十分対応可能であるが、今回楽曲で一番課題となったのは、龍笛と中国伝統楽器の扱いである。

龍笛および中国伝統楽器

オリエンタル楽器としては、主として雅楽で使われる龍笛と、中国伝統楽器の以下の2種類であった。

龍笛

Presence XT にはなく、またその他のプラグイン音源でもこの音色を保有していなかったので、止むを得ずピッコロで代用することにした。非常に高い音域を担うせいか、幸いなことに聴感上はほとんど同じような印象で、なんとか誤魔化せたと思われる。

なお、PresenceXT のピッコロのサンプリング音色には、ブツブツとリップ・ノイズのような雑音が若干混入しているため、ローパス・フィルター(Presence XT に音色パラメータあり)を適用して削り、丸みを出す。

二胡 (Erhu)

これはそのものずばりな音色が GarageBand にある。これをオーディオで書き出したものを再び Studio One に取り込んでミックスした。

揚琴 (Yangqin) または Dulcimer

今回個人的に一番苦心惨憺した音色である。他の受験者でもNI社のKontaktサンプラー音源等を保有していない人は非常に難しい工夫対応を迫られたのではないかと思う。

私は同音色を保有していなかったので、類似音色を合成することで対策を講じた。すなわち、ピアノ音色と、GarageBand にある古箏 (Guzheng) を混ぜ合わせる。幸い本曲では高域だけで鳴らしているために、結果としては当たらずと言えども遠からずな音色になったように思う。

しかしもし中低域で鳴らしているような楽曲だと代用が難しかった可能性がある。というのも、揚琴は中低域では一段とオリエンタルな雰囲気が加わり、なんとも言えない独特のエキゾチックな印象を抱かせるからである。私が言うのもなんだが、正直なところ高域ばかり使っている編曲はもったいない感じがした。

この楽器パートはトレモロを多用するが、ベロシティやボリューム変化で抑揚をうまく付けてあげないとシンセのように非常に機械的に聴こえる難点がある。この辺の調整には結構苦心した印象がある。

ドラム

譜面や制作規定書に明記はされていないのだが、編曲者コメントから類推するに、明らかに中国の打楽器を想定しているので、私は GarageBand の Chinese Kit 音色で差し替えた。ただし、これ単独だと線が細い印象があったため、通常のドラムキット音色を微かに上乗せ合成した。

譜面上シンバル連打の指定がある小節は銅鑼の音色に差し替えている。おそらく編曲者の意図としてはその通りなのだろうと想定する。因みに銅鑼の連打音色は上記の Chinese Kit に含まれている。

ミックスダウン

今回課題曲は、どちらかと言えば高域で鳴らすパートが多く、そのまま素で混ぜ合わせると、干渉し合って棘が出たりノイジーな感じが否めなかった。管楽器などは適度にローパス・フィルターを適用するなどして幾分まろやかに仕上げることもした。

抑揚表現が重要ポイントとなるクラシック系楽曲であることから、マスター含めてほとんどコンプレッサーは掛けないで編集し、ダイナミックレンジ維持を重視する。

受験対策めいた話

1級の楽曲は生楽器のシミュレートに偏重しているため、どういう方法であれ(有償無償を問わず)生楽器音源をある程度充実させておいた方が対応しやすい。

もっとも、Macユーザは GarageBand の付属音源で相当程度カバーできるからあまり心配は要らないかもしれない。自主制作におけるジャンルの守備範囲にもよるが、この辺はできるだけ無償音源で対応した方が賢明であろう。音源対策が必要と言いつつも、MIDI検定のためだけに高価な音源を導入するのは費用対効果の面から正当化できないだろうから。

逆に冨田勲ばりに敢えて全パートをシンセ音色でアレンジしてしまうという手もなくはないが、2次審査でどういう評価を受けるかは知りません(苦笑)。