今週木曜日に菊本忠男氏のインタビューもとい歴史証言特集があったので、聞き逃している方はpodcastでチェックされることを激奨します。
話の中心はTR-808でMIDIの件は最後の10分程度しかありませんが、両者開発の歴史的経緯を知るには格好の入門番組になっていると思う。「入門」と書きつつ、結構テクニカル・タームが飛び交っていたため、ある程度MIDIとかDAWの基礎知識がないと聴きづらいかもしれない。
ネタ元は下記の近刊本らしく、話が重複するだろうから書き起こしみたいなことは控えておきます。
TR-808を継承発展させた菊本氏の新たなプロジェクト RC-808 については下記サイトを参照。試作プラグインが無償でダウンロード使用可能となっている。
個人的に刺さったトピックなど:
- これは結構有名な話だが、TR-808発売当初はそのあまりにチープなサウンドのためか商業的には失敗。その後偶然にもヒップホップ業界で大々的に使われ出したことを契機として予想外のリバイバルを遂げる。人間万事塞翁が馬みたいな典型例で、研究開発事例でも似たような話がいっぱいあることを思い出しますね。
- MIDIの発案は創業者梯郁太郎氏が率いたRoland社ではあったものの、業界盟主とも言えるヤマハの後押しが普及に多大な貢献をしたというのはちょっと知らなかった。ちょうど YAMAHA DX-7 がMIDIケーブルのインターフェース搭載で発売、大ヒットとなったタイミングも幸いしていた。米国 Sequential Circuits 社(名機Prophet-5のメーカー)が協力的だったことも世界的普及に寄与したようだが、私はてっきり Sequential Circuits がMIDIの発案元かとずっと勘違いしていた。
- 昔の発売当初のTR-808はもはやビンテージ・マシン扱いで中古価格が高騰しているので、同じ筐体とシステムで復刻製造はできないものかと問われた菊本氏は、技術的には可能だが過去とまったく同じことをやっても面白くもなんともなく発展性がない、と技術者魂全開で切り捨てていた発言が印象的だった。これと文脈は異なるが同じような感想を抱くことはありますね。YMOなんかのカバーを当時の使用アナログ機材そのまんまで再現している動画をよく見かけるんだけど、昔と丸々同じことを今やってもあんまり有意義ではないな、という感想と似ている。