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DAW悪戦苦闘記

DAWやMIDIを通じてDTMを楽しむ記録。MIDI検定試験にもチャレンジするなり。

FMシンセの原理に関するチュートリアル

往年の名機 Yamaha DX-7 を模したソフトシンセである DEXED はすでに導入してはいるのだが、アナログシンセとは毛色の異なる音色作りが難しくてほとんど使っていなかった。今まで横着をして単に勉強不足なだけなのだが、基本原理を少し学習してみたので、以下備忘録として資料などを書き記しておく。

FM合成の基礎チュートリアル動画

音色編集の基本原理であるFM合成についてはネット上で探せばいくらでも資料は見つかるが、いきなり電子工学の専門的な講義に取り組むにはさすがに無理があるので、取っ掛かりとしては以下の2本で十分かと思う*1

一つは、以前にも紹介したシンセ音作り講座の第10回講義で、FM合成による音作りの基本をこれ以上ないほど簡潔明瞭に解説している。Logic Pro X ユーザは内臓シンセのRetro Synth ですぐお試しできると思う。

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上記講座を若干補強する意味では、以下の解説講義も有益かと思う(ただし英語レクチャー)。歴史的背景や基礎理論、音色エディットの基本などを実際の音を聴きながら理解できる。

www.youtube.com

要点覚え書き

上記チュートリアルなどを踏まえて私なりに勘所などをまとめておく。

発想の基本

アナログシンセにおけるLFOを可聴領域の周波数まで上げたらどうなるか、というのが着想の基本らしい。

基本原理

基本の原理は意外に単純で、要はサイン波を次々に重ねて目的の音を作り出す。ここが一般的なアナログシンセとは真逆の合成方法になっている。

すなわち、アナログではノコギリ波など倍音を豊かに含んだ波形を基音として、不要な倍音をフィルターなどで削ることで音を作る(減算方式)。一方FM合成では、倍音を含まないサイン波を巧みに重ね合わせることで倍音を作り出していく。根底にはフーリエ解析の考え方が潜んでいると思われる。

80年代にDX-7が登場して以降、アナログシンセでは真似できない生楽器音色のリアルな再現や金属音で威力を発揮したが、その後安価なサンプラーの登場で一気に衰退した。

音色編集の基礎

一つ一つのサイン波生成器をオペレータ (operator) を呼び、これらをいくつか組み合わせる。DX-7/DEXEDでは6つのオペレータから構成される。これらはその役割に応じて、変調波 (modulator) 生成用と搬送波 (carrier) 生成用に分類される。

変調波はアナログシンセで言う所のLFOに相当する。一方、搬送波は実際に発音する部分で変調対象となるオシレータに相当する。この2種類のオペレータの組み合わせ構成をアルゴリズムと呼び、DX-7では32種類搭載されていた。基本的な考え方として、パッド系の分厚い音色を作りたい場合は、搬送波を多めにして並列に同時発音させる。逆にベースなどのうねりのある音色が欲しい場合は、搬送波は1つか2つに絞り、変調波を重層構造にして特徴を出す。

FM合成で面白いのは、個々のオペレータのEG等生成パラメータはそのままに、単にアルゴリズムを切り替えるだけでも劇的に音色を変化させることが可能な点である。

DX-7と私の思い出

DX-7は私もかつて実機を保有していたことがある。同じYamaha製のMIDIシーケンサーQX5と組み合わせて使っていた記憶がある。80年代中盤デジタル化の到来によりシンセの価格破壊が一気に進み出していた時代で、DX-7はその尖兵的な存在だった(と後になって気づく)。QX5にしても、当時シーケンサーの代表格である Roland MC-4 が50万円だかの値段だったのにいきなり10分の1近い価格で登場したから驚喜した。MIDI規格制定はRoland社主導であったが、DX-7の大ヒットが一般への普及を後押しした感もあり、デジタル化とMIDI普及へのYamahaの貢献はとてつもなく大きいと思う。

ところでDX-7だが、あの酷いUIでどうやって音作りしていたのかもうまったく記憶にない。操作法はなんとか習得したとしても、FM合成の原理は全然理解していなかったと思う。音色編集は当時から難解だとしきりに批判されていたが、どちらかというとUIの制約ゆえであったように感じる。タッチパネルもまだ一般的ではなかったあの時代にあの低価格で市場投入された製品だから仕方がなかった一面はある。それでも売れたのだから、低価格のインパクトの方が大きかったということだ。

実機は引越しを機にして10年ほど前に処分してしまったけれど、特に後悔はしていない。というのも、一斉を風靡して市場に大量に出回ったため、骨董品価値がほとんどないからである。一応ヴィンテージ・シンセの部類とはいえ、中古価格はびっくりするほど安く、ハードとしての価値はなきに等しい*2。DX-7登場以後のデジタル化進展により、ハードシンセは凄まじいばかりの陳腐化を繰り返すのだが、先駆者DX-7もその例外ではなかったというのはやや皮肉ではある。そのような技術革新の時代を目の当たりにしてきた私は、金輪際ハードを買うことは禁忌としている次第である。

*1:読み物資料としては、例によってWikipediaの記事が一番よくまとまっているように思われる。

*2:今は概ね2〜3万円程度で入手できるようだ。