DAW悪戦苦闘記

DAWやMIDIを通じてちまちまとDTMを楽しむ記録+MIDI検定1級到達記

MIDIデータおよびステム書き出しの方法 (Studio One)

Studio One 3 Prime (以下S3)は無償版とはいえ、少なくとも初心者にとっては十分過ぎるほど機能豊富であり、個人的には特に以下の3点で優れているように思う*1:

  • 比較的多量のまとまったMIDIデータの作成と編集
  • 生楽器音源による楽曲再生
  • オーディオ素材の基本的な加工編集(切り貼りと再配置)

反面、Prime版の制約ゆえにミックスダウンとマスター編集は自主制作も含めて物足らないケースが多い*2

一定以上の品質を追求するのであれば、ミックスダウン以降の工程は別のDAW(私の場合は Tracktion 5)で分担させるという方策も考えられ、その前段階としてS3より素材となるデータを書き出す必要がある。以下、これについて備忘録的にまとめておく。

MIDIデータの書き出し

Presence XT 以外の音源・音色で再生したい時、あるいはドラムをパラアウト再生で編集したい場合は、オーディオではなくMIDIデータを受け渡す。

MIDIイベントを個別に選んで書き出したい場合

エクスポートの方法は、該当するトラックのMIDIイベントをすべて選択し(間にMIDIイベントのない休止小節が入っていても問題ない)、メニューより Event > Export Selection と進む*3。続いて表示される保存パネルにて、ファイルの種類を"MIDI File"に指定の上でSMF (Standard MIDI File Format 1) としてセーブする(下例参照)。

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楽曲全体をSMFとして書き出す場合

ソング中に含まれるすべてのMIDIイベントを一括してSMFとして出力したい場合は、メニューより File > Save As と進み、保存ファイル形式にMIDIファイルを指定する(上記と同様)。この方法で出力したSMFには、テンポや拍子などのメタイベント情報が含まれる。

ステムのバッチ出力

各トラック別にオーディオ素材のWAVファイルとして一挙に書き出したい場合は、メニューより Song > Export Stems と進み、下例のような設定パネルを開く。ここで、出力対象とするトラックにチェックを入れて選択し、保存場所やファイル・フォーマットなどを設定後に OK を押すとバッチ処理が走り、トラック別のステム・ファイルが吐き出される。

注意点として2つ。1点は、設定パネルの量子化ビット数 (Resolution) は 24 Bit もしくは 32 Bit Float を選択すべきこと。通常は 24 Bit で十分である。もう1点は、書き出しバッチ処理時に、クリップ(音割れ)してしまったトラックは警告メッセージが出るので、その場合はミキサーに戻って音圧レベル調整後に書き出し処理を再実行すること。

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補足: Channels と Tracks

インストゥルメント音源として PresenceXT のみを使う場合は、出力対象の選択は Channels と Tracks のいずれでも効果は同じである。マルチチャネルの外部プラグイン音源をサポートしていないPrime版では特に意識する必要はないと思う。

相違が明確になる唯一の例外は、aux/sendトラックを追加した場合で、この時は送り先のトラック(Studio One では "FX Channel" という)が Channels の選択項目に出現するが、一方で Tracks には現れない。当然ではあるが、メインの編集画面左端のトラック・リストにもセンド・トラックは表示されない仕様になっている。この辺のチャネルとトラックの使い分けは正直紛らわしいところではある。

*1:総合すると、デモ版制作や初期アイデアのスケッチ目的で使いやすい。Tracktionに比較すれば、エディター画面はノート型PCでも使用上のストレスが少ないため。

*2:楽曲にもよる。ジャズやロックなどリズム系のMIDI打ち込みが入ると厳しい(ドラムのキックなどが埋没しがち)。逆にクラシック風味なダイナミックレンジ広めの楽曲だとそこそこ対応可能と思う。

*3:先頃のバージョン3.5改訂で、旧バージョンのメニュー選択項目にあった "Export Parts to MIDI File" は "Export Selection" に統合・削除されているので要注意。

弦楽器で強いアタックを表現する方法

弦楽器のサンプリング音色で苦労するのがアタックの強弱表現である。弦楽器は総じて発音の立ち上がりが遅いのでベロシティの効果も薄く、特にレガート系の音色はそのまま無加工ではfpなどの強弱を表現できない。

音源によっては細かなアーティキュレーション機能を備えるものもあるが*1、それ以外にもいくつか打つ手がある。

トラック・ディレイを使う

一番安直な方法は、いわゆるトラック・ディレイを使って発音タイミングを微妙に前倒しシフトする方法である。これは Studio One 3 Prime(以下S3)でも利用可能であり、使い方・考え方は Cubase とほぼ同様である。

sleepfreaks-dtm.com

 

S3では、トラック・インスペクターより Delay の数値を入力設定する。発音タイミングを速めたいのであれば、負値を入力する(ミリ秒単位)。概ね -50ms 前後がよいとされるが、音色にもよるので実際に聴いて微調整する。

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トランジェントを適用する

追加のエフェクト処理としては、トランジェント (transient) を挿入し、オーディオ効果としてアタックを強めにするのも一法である。ただし、プラグインを追加できないS3では不可能なので*2、S3より書き出したステムを別のDAWへインポートした上で編集する。ステム書き出しについては別途稿を改めて書く。

音色をレイヤー合成する

実際には上記2法でもまだ全然甘い・弱い場合も多く、最終手段としてはアタックの強い同系音色(楽曲によってはシンセ音色でもよい)を重ねる*3

S3内臓音源の Presence XT を例にとれば、Full Legato Strings (アタックが弱いレガート)と Full Détaché Strings (アタックが強くスタッカートに近い)を組み合わせると概ねリアルに再現できる。

*1:たとえば  Sample Tank などは音域外のキーにアーティキュレーション追加の機能を持つ。

*2:Professional版か、もしくはプラグイン対応アドオンを追加購入したArtist版でないと拡張できない。

*3:Prime/Artist版では Multi Instrument 機能がないので、同一MIDIイベントを別トラックにコピペして鳴らす。なお、Tracktionであればラック・フィルター機能を使って容易にレイヤー合成できる

Waveform紹介記事

DTMステーションにてWaveformの紹介記事が掲載されていたので、以下参考まで:

www.dtmstation.com

 

私も年内に無償版の Tracktion 5 から Waveform に乗り換えようかと検討中だが、やはり最大の注目機能はコード・ヘルパーである。この機能概要は上記記事でもやや詳細にレビューされているので、どういう恩恵を受けられそうか大体把握できると思う。これは初心者にはとてもありがたい機能である。

あと非常に好感を持てるのは、つまらない囲い込みをせずに内臓音源やBioTekシンセ等がプラグイン仕様で同梱されているので、他のDAWからも利用できるという点である。これならニーズに応じたDAWの使い分けも容易であろう。これは私が Studio One 3 (Prime) に感じる一番不満なところで、内臓音源の Presence XT が独自仕様のために別のDAW(例えばT5やWaveform)から呼び出して使うことができないという残念な制約が課されている。なので、その都度WAVに書き出してインポートしなければならない。

最後に気になるのはMIDIの編集機能だが、UI自体はT5からあまり変化がないように見受けられる。自主制作ではこれで十分だが、MIDI検定対策を見据えた効率的な編集作業を念頭に置いた場合、スケール(キー・ナビゲート)機能を備えた Studio One が使いやすいように思う。ここも要はDAWの使い分けの問題ということである。

MIDI検定1級の審査基準などについて

MIDI検定1級は1次審査と2次審査があり、このうちMIDIデータの検証評価に絞った1次審査については何をどこまでチェックされるのか、公式ガイドブックや受験案内等では必ずしも明確ではない点も多い。

実は1級発足当初のQ&Aページに、審査基準の詳細につき一問一答で解説されているので、下記リンクにて一度通読確認することを勧める。しかし協会サイトのデザイン・構成が悪いせいか、このような重要な試験情報が1級課題曲の販売ページ内に埋もれていてなかなか気づきにくい状態なのはいかがなものか。

第1回1級MIDI試験についての Q&A

ついでに重要ポイントなどを自分なりにまとめておく。

1次審査の評価対象

1次審査でチェックされるMIDIデータは、各ノートのピッチとタイミングのみである。したがって、ゲートタイムの長さは一切問われない(ノート重複のみ減点対象)。ここは2級2次と大きく異なる。

ということは、基本のゲートタイムはDAW(私の場合は Sudio One 3 Prime)にてざっくり目分量で編集しても一向に問題ないということだ*1

また、コントロール・チェンジも評価対象外なので、たとえばDAWのオートメーション機能ですべて表現しても全然差し支えないようだが、今後の検証課題である。

提出物CDのフォーマット

成果物を記録したCD2枚のうち1枚は、任意のCDプレイヤーで再生可能なCD-DAフォーマットのオーディオCDでなければならない。2級2次ではデータCDだけなので、勘違いしないように気をつける必要がある。

Q&A #29 によれば、オーディオ記録媒体はデータ用CDではなく音楽用CDが望ましいとのことである。メディアはAmazon等で調達可能である。

私のMac環境ではiTunesを使えば容易に作成可能なはずである。ただし、別途購入の外付け光学ドライブとの相性を含め、何度か書き込み実験をやっておく必要はある。

今となっては冗談かと思うほどに時代遅れな提出形態で、個人的にはクラウドへのアップロード対応を実現してほしいと切に願うところではあるものの、すぐには変更されそうにない。

残る疑問点

公式ガイドブックの p.245 に掲載された2011年課題曲サンプル(スコアの1ページ目)をざっと見て真っ先に浮かんだ疑問は、装飾音の扱いはどうなるのか、ということである。要は、制作規定書に指示があるのかどうか、が焦点となる。

[追記] 装飾音については、案の定制作規定書に特記事項として指示されているようである。下記ページ掲載の最後の補足を参照:

1級試験の課題曲ならびに制作規定書に関する補足事項

常識的に考えれば、ごく短い音価のノートを直前に追加するか、ピッチベンドで対応する、の2方法あるが、前者の方法であれば1次審査にも関わってくるため神経質にならざるを得ない。もっとも、ドラムの装飾音(いわゆるフラム flam )については、必然的に前者のノート追加法に依らざるを得ないと思われる*2

制作規定書は各年課題曲セットに添付されて一般には公開されないため、過去の課題曲セットを購入するまでは内容を確認できない。

*1:わざわざDominoに読み込んで正確に音価の80%前後に調整する等の編集作業は不要となる。

*2:ベロシティ小さめの32分音符を直前に追加するとそれっぽくなる。

MIDI検定2級の基礎準備終了と試験対策雑感など

昨年12月あたりよりこつこつとやってきたMIDI検定2級1次・2次の試験準備については、GWを通じて1次試験の過去問および2次試験練習曲の実践演習ともにすべて完了となった。ちょうど半年程度で一通り終了となり、予想外に早く消化してしまった感はあるが、1次と2次を峻別せずに有機的に組み合わせて学習した方法が図らずも非常に効率的・効果的であったと思われる。

そのあたりを含め、気が早い話ではあるが、半年間の振り返りと反省を兼ねた試験対策的な雑感をここでまとめておく。年後半以降これから準備に入る受験者や来年以降の受験予定者の参考になれば幸いである。

MIDI検定2級試験対策のコツみたいなもの

2次対策優先しつつ1次をカバー

私のようなMIDI/DAW初心者は、2次試験の練習曲演習から入った方が1次対策もやりやすいと思う。というのも、1次試験は実践ありきで座学だけでは腑に落ちない課題が大半を占めるからである。特に、

  • MIDIイベントリスト問題
  • アナログシンセの音作り
  • DAWによるエフェクト処理やミックス、マスター編集

については、実際にDAWを使った実践経験がないとなかなか身につかないであろう。読譜音楽理論に関しても、実際の制作体験があれば理解が速くなる。

逆に暗記ものに近い領域は、

  • MIDIメッセージの規格仕様(特にシステム・メッセージ)
  • 著作権法関連

ぐらいかと思う。前者はやや難解なため、自分なりに整理して頭に入れておかないと、例年と異なる出題パターンが出た時に正確な対応が難しい。下記記事などを参考に。

daw-jones.hatenablog.com

過去の練習曲は全部やってみる

繰り返しになるが、2級に関しては2次試験練習曲演習の重要性が非常に高い。優先度が高いということは、先に手をつけておくべき、ということになる。また、練習曲をより多くこなした方が有利であることは言わずもがなである。

この点に関しては、初心者は当然のこと、ある程度の実践経験者とて例外ではないと思う。なぜなら、2級2次独特のルールやスコア・リーディング能力も要求されるからである*1

また、できるだけ早期に自分なりの制作環境とワークフローを確立した方がよいが、この見極めは、練習曲の制作実習を通じて試行錯誤しないと難しい。実際私も何回か利用ツールや制作手順の変更を試している。

1次のイベントリスト問題と2次は表裏一体

1次のイベントリスト問題は、2次練習曲の実践経験があれば比較的容易に解答できる。逆に、練習曲演習をやらないと譜面の解読からして困難な場合が多々ある。

1次はこのイベントリスト問題の配点比重がかなり高いため、絶対落とさないつもりで体得する必要があり、これには2次練習曲の実践回数がかなり効いてくる。

ピッチベンド・チェンジの入力方法などについては、イベントリスト問題がサンプルとして参考になることもあり、練習曲演習と相互にフィードバックすれば効果的に学習を進めることができる。以下の過去記事などを参考に。

daw-jones.hatenablog.com

1次知識問題は過去問演習で充足

1次のイベントリスト問題を除いた知識問題に関しては、過去問演習の徹底で足りる。基本的には間違ったところを公式ガイドブックに遡って復習確認、何度かフィードバックを繰り返せば自然と満点に近づく。

現状、過去6回分(新制度発足時の模擬試験含む)の過去問が利用可能だが、イベントリスト問題の比重が大きい分、3級ほど量も多くなく簡単なので、時間が許せばすべて解いてみた方がよい。

3級同様に同一出題パターンの繰り返しか、もしくは同工異曲な問題ばかりなため、2、3回もやれば、たぶんほとんどの人は90点以上得点できるのではないか。私も最終的には95点以上難なく突破できるようにはなった。

今後の予定

純然たる2級対策としては、私個人はもうやることがなくなってしまったので*2、この延長線上で当面は1級の課題曲演習にゆったりと取り掛かり、来夏受験予定の1級の準備に入ってしまおうかと思う。本年末に予定される2018年2月期2次試験の練習曲公開まで何もしないでいると勘が鈍ってしまうおそれがあるからだ(1次試験のイベントリスト問題対策を含む)。

他方、1次試験の知識問題は覚えてしまえば特に難しくはないので、本番直前1ヶ月程度で再復習すれば御の字であろうと思う(実質的に1、2週間もあれば十分か)。

あと追加の2次試験対策として敢えて盛り込むべきは、CD-Rの書き込み実験ぐらいであろうか*3。私のMac環境では内臓の光学ドライブがないので、安価な外付けのCD/DVDドライブを購入し、書き込み試験を1、2回やっておく必要がある。しかしこれは早くとも年末年始休暇頃で十分だろう。

*1:特にピッチベンド・チェンジやコントロール・チェンジの記法に慣れる必要がある。ギターやベースのオクターブの指定やベロシティ、ゲートタイムについても細かいルールがある。

*2:厳密には2級2次試験の筆記対策という未知の領域が残っている。しかし守秘義務のせいか試験情報がほぼ皆無なので、イベントリスト問題あるいは実技演習の延長で対処することぐらいしか思いつかない。

*3:成果物をデータ用CDに焼いて郵送する必要があるため。無用な本番トラブルを避けるために稼働実験・検証はやっておくと安心である。

MIDIシステム・メッセージの概要整理など

MIDI検定2級1次試験におけるMIDIメッセージ規格関連の必出重要項目は、大別すると以下の3分野である:

  • チャネル・メッセージ(Channel Voice および Channel Mode*1
  • システム・メッセージ(後述)
  • 同期関連: MIDI規格ではシステム・メッセージの範囲*2。これとは別にSMPTE規格がある(一般にはこちらの方が認知度高い)。

このうちもっとも複雑かつ難解なのはシステム・メッセージで、機能別に更に細分化される。公式ガイドブック第3章における個別項目の説明は詳細にして必要十分だと思うが、相互関係があまり明快に書かれておらず、用語の羅列で混乱しやすい。そこで、頻出項目を中心として自分なりに簡潔にざっくりとまとめておきたい。

システム・メッセージの仕様と構造

System Common

MIDIシステム全体の設定に関するデータ。これはさらに、System Exclusive (SysEx) とそれ以外に分かれる*3

System Exclusive (SysEx)

ステータス・バイトがF0HであるSysExは、機種依存データなどをメーカーの裁量によって自由に設定できる領域である。しかし非常にややこしいことに、機種依存ではないメーカー共通規格もSysExの範疇に入る(後述)。

第1データ・バイトにはメーカーIDが入るが、このうち特定の3つの値は下記のメーカー共通規格、すなわち Universal System Exclusive Messages という用途に使われる*4:

  • 非営利 Non Commercial (7DH)
  • Non Real Time (7EH)
  • Real Time (7FH)

Non Real Time と Real Time は非常に数多くのメッセージ仕様が定義されているが、さすがにこれらをすべて記憶する必要は全然ない。一例として、テンプレSMFにも盛り込まれているGM2オンのメッセージ(下記参照)だけを理解していればもう十分である。

SysEx以外

SysEx以外は、ソング・セレクトなど非リアルタイムな再生制御に関するデータで、後述の System Real-Time と組み合わせて使用されることになる。

System Real-Time

簡単に言えば、MIDIデータ(ソング)の再生制御に関わるデータ。再生位置決めと再生開始/終了、クロックデータ(MIDIクロック)の送信など。

参考資料

詳細は公式ガイドブックの第3章第5および6節を参照。その他の参考文献として以下の資料を挙げる。

テンプレSMFのSysExメッセージの中身

応用例として、協会より提供されるテンプレSMFに書かれたSysExメッセージの中身を解読してみると、以下の通りとなる(バイト列左より順番に):

  1. F0H: Status Byte(SysExデータの始まり)
  2. 7EH: Manufacturer ID - Universal System Exclusive / Non Real Time
  3. 7FH: Device ID("7FH" = 全機器対象)
  4. 09H: Sub-ID #1 - General MIDI System
  5. 03H: Sub-ID #2 - GM2音源使用オン
  6. F7H: EOX(データ終わり)

試験対策的な話

音源の発音に関わるチャネル・ボイス・メッセージ以外、特にシステム・メッセージ全般がなかなか頭に入って来ないのは、率直に言って実際の使用頻度が非常に低いからである。ことにDAWによる制作ではこれを意識する場面は皆無であろう。

またMIDIの同期関連についても、多数の機材を同時使用するライブ演奏家を除けば、DAW中心の制作ではほぼ使わなくなっている技術ではないかと思う。

以上のような背景を考慮すると、必要以上に深く理解したところで実務上のメリットは少ないか、またはまったく見返りがない可能性が高いため、システム・メッセージと同期関連については例年の出題パターンを丸暗記してしまい、それ以外の問題が出されたらあっさり捨ててしまっても構わないと思う。幸い、旧制度に比べればMIDI規格関連の出題比率は縮小しており、何題か捨ててしまっても合否にはほぼ影響ない範囲である。

*1:Channel Mode Messages は要するにチャネルごとの一括制御データのこと。リセット(サウンドオフ含む)と再生モード指定(モノかポリか)が主要な役割。

*2:SMPTEとの対応上、絶対時間制御データとして System Common (ステータス・バイトF1H)にMIDIタイムコードが追加されたことを認識しておけば十分ではないか。

*3:公式ガイドブックでは、SysExと System Common を完全に別物として記述している。

*4:Universal SysEx という場合には、非営利を含まない分類もある(つまり Non Real Time とReal Time の2種のみ)。公式ガイドブックでは非営利を含んでUniversalとしている。ただし非営利の具体的な定義内容は不明。実態として使用されていないと思われる。

コードネームの表記法を覚える

ポピュラー音楽を演奏したり制作する上で、コード進行は必須とも言える基礎知識で、その下地として、とりあえずは一般的なコード表記を難なく解読できるようになっておきたい。

ちなみに、MIDI検定2級1次試験では極めて基本的な事柄を数題問われる程度なので、たとえば楽典の上級レベルまで習得する必要があるわけではない*1。しかし、自主制作も見据えると、追々興味に応じて可能な限り深堀りしておいた方が何かと有益であろう。

コードネームの表記法は、一見するとまるで暗号のような複雑な印象を与えるが、ルールさえ覚えてしまえば構成音を特定することは特別難しいわけではない。これに関する解説は、書籍含めて教材は無数に転がっているものの、個人的には以下のサイトが一番すっきりとまとめて整理されているように思う。

pf-j.sakura.ne.jp

 

平均律では転調しても構成音同士のインターバルは不変であるため、とりあえずは鍵盤上で一番わかりやすい C Major でドミソのトライアド(3和音)をベースとして、各構成音の度数を押さえて理解しておけばよいのではないかと思う。ルート(根音)を変えた転調自体は、今どきのDAWであれば何らかのコード・サポート機能が付属していることが多いので、それを活用すればいちいち度数計算や記憶に頼る必要はなかろう。

内容は重複するが、上記のコードネーム一覧をさらに簡潔に箇条書きでまとめると、以下の通りとなる(主だった記号のみ):

  • m(minor): 3度をフラット
  • 7: 7度をフラット
  • maj7 or M7: 7度をフラットしないでそのまま(長7度)
  • b5: 5度をフラット
  • 6: 6度を足す(9も同様に9度を足す)
  • dim: 3度と5度をフラット
  • dim7: 3度と5度はフラット、7度はダブル・フラット
  • aug: 5度をシャープ
  • sus4: 3度の代わりに4度を置く
  • add9 (=add2): 2度を足す
追記 (7/7)

私は全くギターは弾けないのだが、最近個人的によく視聴しているジャズ・ギタリストのYouTubeチュートリアル動画があり、音楽一般に関して色々と参考にさせてもらっている。そこにコード表記に関するわかりやすい解説があったので、一応参考まで。

www.youtube.com

*1:近年は、CHAPTER 6 音楽理論MIDIによる表現方法 【1 楽譜情報】【2 ポピュラー音楽のコードとスケール】という区分で基本知識を7問出題というパターンが踏襲されている。一方、2級2次の筆記試験でどの程度音楽理論に絡んだ出題があるのかは不明。