前回記事を受けて、Chordana Composer のMIDI書き出し機能を試してみたので概要や特徴などをまとめておきたい。
なお、MIDI書き出しを含めたアプリ全体の機能概要については、2年前の記事だが下記「DTMステーション」のレビューも参照。
MIDIデータのエクスポート
手順はいたって簡単で、書き出されたSMFをメールに添付して送受信するだけである。
右上の共有アイコンをタップして「メールで送る」を選ぶと、添付ファイルの形式選択メニューが表示されるので、ここで「MIDI」を指定する。すると、該当のSMFがすでに添付された状態でメール送信画面が開くので、適当な送信先アドレスを入力して「送信」をタップすれば指定のメールアドレスで受信ダウンロードできる。
Studio One に取り込んでみた結果
意外なことに、メロディのみならず伴奏を含めたマルチトラックのSMFがエキスポートされる。どうせ申し訳程度にメロディだけだろうと期待していなかったので、ちょっとびっくりである。
下図のように、各トラックのMIDIイベント名にはチャネル番号が付いており、一応MIDIの標準規格に準拠してチャネル10("CH10")はリズムに割り当てられている。ただし、チャネル番号はあくまで名称レベルであって、後述するDominoと異なり Studio One では実際にMIDIチャネルの設定はされない*1。チャネル9はベースとなり、それ以外はユーザ側で適当な音色を設定すればよい。
下図ピアノのMIDIエディター例を見れば一目瞭然だが、楽器パートによってはベロシティが相当細かく設定されている。また微妙にタイミングをズラしてヒューマナイズを適用していることに驚愕する。本例は選択ジャンルがジャズだったので、たぶんスイングさせているのだろうと推測するが、意外なほど芸が細かい。他ジャンルでも後日確認してみたいところである。
ピアノは驚くべきことに Sustain (CC#64 Hold1) のデータも書き出している(下図参照)。ちなみに Presence XT は Sustain には対応している。ここまで来ると、ほとんど手弾き演奏をリアルタイム入力したのかと見紛うほどのデータで、これはなかなか侮れないクオリティだと思う。
ドラムについては、GM音源配列に準拠しているようで、ここでもベロシティはかなり細かく設定されている。
本例のようなジャズ曲は素人には難しいので、伴奏だけでも結構使えるかもしれない。たとえば、メロディは適当に入れてとりあえず伴奏を生成させ、その伴奏に合ったメロディを再度作り直すという逆運用も効果的な使い方の一つである。
なお、一生成物の曲長は40小節弱と短い。多くの場合これだけでは到底物足りず、楽曲を膨らますための追加の加工編集が必要となろう。一番安直なのは、同じメロディに対していくつかの異なる自動作曲結果を生成し、これらを適当にくっつけてしまうことである。
Dominoに取り込んでみた結果
SMFを取り込んでも Studio One では無視されるデータがあるため、Dominoに取り込んでもう少し詳細を覗いてみる。
まず、各トラック冒頭1小節目はセットアップ・データ用に確保されており、楽曲それ自体は2小節目から始まる。ここは標準的なMIDIデータの作成ルールをきちんと踏襲しているようだ。
ユーザによる加工編集用に重宝すると思われるのは、Conductor(メタイベント)トラックに調性やコード表記がマーカーとして書き込まれていることである。これらは Studio One には反映されないので、確認したい場合はChordana本体か、Domino取り込み結果を参照する必要がある。
Chordanaは伴奏生成用
曲長が短いこと以外に、Chordanaを使うにあたっての最大のハードルは、鼻歌レベルでもよいから何らかのモチーフのメロディを自分で入力(または録音)する必要があるということ。贅沢を承知で言えば、実際はこれとてかなり面倒臭い。なぜなら、それなりの鼻歌すら思い浮かばず七転八倒するのが素人の素人たる所以だからだ。
上で指摘したように、実はこれは伴奏(あるいはコード進行)生成機として割り切って使うのがベスト、というのが私個人の結論である。というのも、多くの場合は生成されたメロディーが聞くに耐えない珍奇な結果になっているからである*2。逆に皮肉なことに、伴奏だけはなぜか分不相応(?)なほどのクオリティで書き出してくれる。この点は上例のMIDIデータを見ても頷けると思う。