Tracktion 6 新機能概要メモ
Tracktion 6(以下T6)が無償版になったので、早速前バージョン5よりアップグレードして主たる新機能をざっと確認してみたので備忘録として簡単にメモ書きしておく。
T6無償公開前後からおそらくTracktionを検索キーワードにして本ブログを訪問しているアクセスが激増しているようで少々驚いた。国内では言うまでもなく Cubase あるいは Studio One ユーザが多数を占めており、UIが一癖あるTracktion(およびWaveform)は非常にマイナーな存在に過ぎないと思っていたが、無償または安価な割には高機能ゆえ、徐々に愛用者を増やしているのかもしれない。もともとTracktion関連の日本語資料は皆無と言っていいほど乏しいため、本記事含めて多少とも役に立てれば幸いである。
なお、新機能概要については、以下の公式チュートリアルを参照。基本はこれに沿って個人的に関心がある点などを簡単に書き添えておく。
Step Clip
本アップグレード最大の目玉機能の一つ。この Step Clip 自体はT5から備わっていたが、T6よりようやくベロシティとゲートタイムの調整機能などが加わって大幅に強化された。リズム制作では素のMIDI打ち込みよりも遥かに効率的だろうと思う。
また、同一クリップ上で複数音源を組み合わせてパターンを組むことも可能となった。これは rack filter (Studio One の Multi-instrument 機能にほぼ相当)を拡張することで実現しているが、システムが自動的に配線設定するため、ユーザはややこしい設定の中身を意識する必要はない。
ベロシティについては、キックやスネア等各パート(チャネル)毎の全体の基準ベロシティは0-127値で、各ノートの強弱は0-100%値で編集するようになっている。チャネル毎の一括調整機能は結構便利だと思う。
オーディオ機能強化
基本のオーディオ編集機能も強化され、T5より進歩したが、この辺は正直言って他DAWにやっと追いついたというレベルだと思う。しかしすべて無償で使える。
Pitch-fade
オーディオ・クリップのフェードイン・アウト機能をピッチにまで拡張したもの。いわゆるDJターンテーブルのような効果をもたらす。これは Studio One にはなかったのではないか(確証ないが)。
オーディオ・クリップの結合
複数のオーディオ・クリップを一つのクリップに統合できるようになった。しかしこれはあって当然とも思える機能で、T5までなかった(?)ことが不思議なぐらい。
Warp Time
オーディオ・クリップのタイミング補正編集機能。あるいはオーディオのクオンタイズを可能にする機能と言ってよい。ただし、T6では手動調整のみのようなので、あまり長いクリップの編集は難しい。おそらく Studio One で言う所の Audio Bend 機能に該当すると思われるが*1、Studio One は自動的にtransientを分析してクオンタイズまでやってのける。
エフェクトやミックス関連
使いやすくなったオートメーション
オートメーションは、ドラッグ&ドラップで目的とする効果を簡単にオートメーション・トラックへ適用できるようになった。これは個人的には Studio One のオートメーションUIよりも使いやすい感じがする。
automation remapping は、楽曲のテンポ修正後もオートメーション変化点の相対的なタイミングを保持する機能だが、これはむしろあって当然。
Compressor Side-chain
実はT5では存在しなかったサイドチェイン機能。やっと他DAWに追いついたと言える。もっとも、rack filter の拡張で実現しているため、他DAWに比して若干とっつきにくい印象はある(すぐ慣れるが)。T6付属の純正コンプレッサー以外で対応可能かどうかは未確認。
その他ユーティリティ
Plugin Organizer
多数のプラグインをフォルダー別に整理カスタマイズしてメニュー表示できるようになった。これも最初からあって不思議はない機能。ただし、まだサムネイル表示まではできない(確かWaveform以降)。
Track Tags
各トラックをタグ付けしてグルーピングし、表示・非表示を簡単に切り替えることができるようになっている。トラック数が非常に多い場合は編集作業で重宝すると思う。これもあって当然の機能という感じはする。この辺のUIは Studio One の方が一日の長があって洗練されている。
*1:残念ながら無償のPrime版ではサポートされておらず。