DAW悪戦苦闘記

DAWやMIDIを通じてちまちまとDTMを楽しむ記録+MIDI検定1級到達記

無償DAWの3種3様使い分けについて

前回記事の一環でもあるが、LANDRを使ったマスター処理に到るまでの制作プロセスで、Studio One 3.5 Prime版 と Tracktion 6 および GarageBand という無償DAWのコンボを使い倒す機会があったので、使い分けに関する個人的な気づきなどをまとめておきたいと思う。もちろんこれが唯一の正解だと主張するつもりはなく、あくまで使用ケースの一例としてご参考までに。

daw-jones.hatenablog.com

Studio One (Prime)

楽曲の骨格や全体構成を配置決定し、メインとなるMIDIやオーディオ編集を担わせる。2ミックスの仮作成までは対応可能と思われる。

良いところ

MIDIとオーディオ編集のUIは飛び抜けて使い勝手が良く、生産性が高いと思う。システムの挙動が軽快なため操作上のストレスが少なく、短時間で楽曲の全体像を組み上げることができる。

また、ソングやステムの書き出し処理が充実しており、処理速度が速い。音割れクリップの警告も出してくれる。なので、Tracktion等他DAWを使った再ミックスや最終マスター処理と連携しやすい。

良くないところ

Prime版は外部プラグインを一切使えず、また利用できる内蔵エフェクトや音源音色に限りがあるため、あくまで骨格部分の制作に留め、細かな味付けは別のDAWに任せた方がよい。

残念ながらミックスダウン結果はどうしてもキックやベース類が埋没する傾向にある。したがって、他DAWでオーディオ加工または新たに作った音色トラックをインポートすることで補強するか、ステム出力して別のDAWミックスダウンをやり直すなどの方策が必要となる。

GarageBand

iOS版はまだ十分試していないのでmacOS版について記す。基本的にはシンセ音源とリズムの追加補強に使える。特にリズムの手っ取り早い構築に有用だと思う。真骨頂のループ素材を使うかどうかは好みによりけりだろう(アイデア素案段階では使えるかも)。

なお蛇足ながら、一旦GarageBandの使い方に慣れておけば、UIや操作体系がほぼ共通である上位版 Logic Pro X へスムーズに移行できる点は、初心者にとって見逃せないアピール・ポイントだと思う。

良いところ

音源音色選択のUIはわかりやすく、音色の確認も容易である。ライブラリのシンセ音色はそこそこ充実していて、ある程度の音色加工編集は可能である。アルペジオ再生も対応している。

Drummer機能のおかげで、リズムは楽曲構成(アレンジメント・トラック)に合わせて自動生成してくれるため(MIDIではなくオーディオとして)、煮詰まった場合はこれに頼ることもできる。とりあえずのデモ作成用途でも重宝するのではなかろうか。

無償DAWにもかかわらず、AU (Audio Units) プラグイン追加に対応している点は非常にアドバンテージが高い。これは Studio One Prime版よりも有利なところである。LoudMax等お気に入りのエフェクター類を使えるため、よほどトラック数が多い場合を除き、GarageBand一本でマスター処理までやろうと思えばできてしまう。

良くないところ

MIDI編集の容易さは Studio One と Tracktion の中間ぐらい。あまり複雑で長いフレーズの打ち込みには適していないように思う*1

複雑なフレーズは Studio One (Prime) で仮音色にて一元的に編集管理し、SMFを書き出して GarageBand にインポートするのも一法。逆に GarageBand からMIDIデータのエクスポートができないのは頭が痛い点の一つである。

またミキサー・コンソール・ビューがないため、トラック数が非常に多い場合はミックスやマスター編集が困難となる(時もある)。

Tracktion 6

最終的なミックスダウンとマスター編集で使う。場合によっては、音色を追加することもある。

良いところ

プラグイン対応なので、自分好みのエフェクト類を様々組み合わせて加工編集できる。エフェクトの追加削除や、挿入位置の変更をドラッグ&ドロップで素早く操作できる。

書き出しフォーマットは圧縮/非圧縮双方とも種々可能。処理速度は比較的速いため、試行錯誤のストレスが少ない方だと思う。

良くないところ

MIDI編集画面の使い勝手が悪い。グリッドの見づらさもさることながら(この点はGarageBandも大差ない)、各MIDIクリップの編集画面とトラック全体の横スクロールおよび拡大縮小操作が連動しているため、編集途上で投げ出したくなるほどにストレスフルである*2

なので、キックとベースなどの簡単な補強を除き、個人的には Tracktion 上でがっつりとMIDIデータを打ち込むことは極力回避している。ある程度のフレーズを伴うMIDIデータは、Studio One 側で作成したものをSMFインポートで取り込んでしまう方が結果として効率良い。

また、GarageBand同様にミキサー・コンソール・ビューが備わっていないため、トラック数が非常に多くなると、ミックスダウン編集はとてもやり辛くなる*3

*1:iOS版では Touch Instrument を使った演奏録音入力のみ対応(後からタッチパネルでMIDIリージョンを編集することは可能)。macOS版でもリアルタイム入力以外はちょっとしんどいかもしれない。本格的な打ち込み編集には上位版の Logic Pro X 導入が必須であろう。

*2:MIDI編集のUIに関しては、次世代版 Waveform で Studio One 並みに改良されている模様。

*3:Waveformではミキサー・コンソール・ビューが機能追加済みである。