DAW悪戦苦闘記

DAWやMIDIを通じてちまちまとDTMを楽しむ記録+MIDI検定1級到達記

ベロシティの表現と編集 (Domino)

前回の続き。

daw-jones.hatenablog.com

 

今回は下図譜面例のようなストリングズにおけるベロシティのダイナミックな調節を取り上げる。

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各ノートのベロシティ値は、実はMMLでも指定可能ではあるが、Dominoの方が直感的に編集しやすく結果の確認も容易である。この辺の使い分けは、ユーザの好みはもちろんのこと、楽曲の複雑度合いにも依存するであろう。

今回はDominoでの編集方法について簡単に記す。MMLによる記法は、機会があれば後日改めて試すことにしたい。今のところ基本方針としては、MMLは各ノートのピッチとステップ値の正確な入力に専念させる、という役割分担を明確にした方がよいと思う。

Dominoにおけるベロシティ編集は、コントロール・チェンジと同様、下例のように編集画面の右下イベントグラフ・ペインにてGUIで編集できる。しかし、一括変更機能により数値を直接修正する方が速く正確に編集できることも多い。特に和音が対象となっている場合はそうである*1

上記の譜面例のように、ベロシティを段階的に変化させる場合は、概ねリニアに変化するよう増分/減分のステップ値を計算して加減算していく。最初と最後のノート以外、途中経過値はざっくりした感じでもよく、厳密な直線を描く必要はない*2。なお、インクリメンタルな変化を出す際、MMLでは差分で指定できる方法があり、そちらの方が便利なケースもあるだろう。

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*1:和音は構成音のベロシティ表記が重なってしまうので、マウスによる選択操作が難しい。

*2:譜面上特に指定がない場合。ニュアンス表現の一つではあるが、楽曲や楽器パートによっては直線変化ではない方がよいこともある。ただし、2級ではそこまで細かくは問われないようだ。

ピアノの代表的なMIDI入力ポイント

今回より次の練習曲に移り、第15回MIDI検定2級2次試験(2014年2月期)練習曲からNo.3を演習例題として取り上げる。本曲は、珍しいことにチャネル10のドラム・パーカッションが存在しないバラード調の曲である。

今までの演習(練習曲No.1およびNo.2)で遭遇しなかった表現パターンは、大きく分けて2点ある。すなわち、ピアノのダンパーペダル表現と、ストリングズにおけるベロシティのダイナミックな変化、の2つである。今回はこのうちの前者を中心に、ピアノ・パートの勘所をまとめておきたい。

和音繰り返しの効率的な入力方法

バッキングのパートではよくあるパターンとして、同一演奏フレーズの繰り返しが頻出する場合がある。本曲ではピアノの高音部がそのようなケースに相当する。

実はMMLでこれを効率的に記述する方法があり、何回も同じデータを繰り返し書き記す手間を省力化できる。すなわち、[ ... ]nと書き、繰り返しのフレーズを[および](ブラケット)の中に包含した上で繰り返し回数nを指定すればよい*1。なお、[の後ろ、および]の前のスペースはあってもなくてもよい(検証済み)。

低音部と高音部の統合

ピアノの低音部と高音部を対象とするMMLおよびMIDI変換データを作成する場合は、それぞれ別個のトラックに分けて編集した方が入力作業が捗り、ミスの可能性も低減できることが多い。

最終的に双方をMIDIマスター編集ファイルに取り込む際は、練習曲No.2のシンセブラスのパートでやったように、そのまま分離した状態でポートを分けてしまう方法もある*2

しかし、本曲の場合はわざわざポートで分離せず、下図例のように同一チャネル・同一ポート上に貼り付けて統合してしまう方法がベストである。というのも、本曲のピアノではダンパーペダル操作を(当然だが)低音部と高音部の両方に適用する必要があるため、トラックを分離した場合はコントロール・チェンジのデータ入力が二度手間になってしまうからである*3

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この辺のテクニック詳細については、以前書いた下記記事も参照されたい。

daw-jones.hatenablog.com

ダンパーペダルの表現

本曲のピアノ・パートには、下図例のようにダンパーペダルのコントロール・チェンジ(CC#64 Hold 1)指定がある。

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Dominoでは、右下のイベントグラフ・ペインで簡単に追加入力できる。ただし、本例題曲では、ペダルの踏み込み具合は考慮せず、単にOn/Offを指定するだけなので、Onの場合は127の位置をクリックし、Offの場合は0の位置をクリックする、という操作を繰り返す。本例の場合、挿入位置については、

  • Onの挿入位置は、音が鳴り始めた直後あたり。
  • Offの挿入位置は、次のペダル踏み込み操作の直前あたり、音が途切れたところ。

とするのが基本である。なお、ダンパーに関する詳細は、公式ガイドブックの§3-2-6「コントロールチェンジ」p.90 を参考とする。

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このようなダンパーのOn/Offデータが正確に挿入されているかどうかは、イベントリストでも同時に確認できる。

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*1:MML実習マニュアルの§3.1 「繰り返し」pp.14-15 を参照。

*2:データ送信先MIDIチャネルは同じ。DAWに取り込むと、別個のトラックとして分離する。

*3:TracktionなどのDAWでは複数のトラックに同じエフェクト等をフィルター適用することは容易に実現可能だが、Dominoではそこまでは無理である。

EDM制作講座が面白い

たまたま発見した以下のEDM制作講座(めずらしくも日本語)がなかなか勉強になったのでご参考までに。丁寧な解説ナレーション入りなので、DAWの自学自習に使えるであろう。また昨年12月アップなので技術的に古いという心配は無用と思う。クリエーターの方に敬意。

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私自身は特にEDMファンというわけではないため、その独特の様式美に少々面食らうところもあったが、普遍的なtipsとして使えそうなノウハウも多かった。以下、私なりに要点だけ備忘録として記しておく:

  • キックを効かせる・聴かせることが非常に肝要。これは私も同感至極で、クラシックを除き、EDMに限らぬ勘所ではなかろうか。キックは埋没しがちな音源の筆頭格と思う。ある程度はエンハンサーで対応可能と思うが、いくつかのハイとローのキック音を重ね合わすテクは使えそう。エフェクト以外にもこういうやり方があるんだなと感心する。
  • リズムやサビを盛り上げるためのFX音は、サンプリングのループ素材をうまく組み合わせて使う。今はシンセ以外にもこういうお手軽音源があることをすっかり忘れていた。MIDI検定実技では使えないけど自主制作では遠慮することない。
  • シンセの音色は、異なる音源を重ねて分厚く合成すると太くなる。芯の部分と周辺部分に音色を分けて組み合わせる。バッキングのパッド系では珍しくないだろうが、リードでもこうした重層合成やるというのは目から鱗。
  • ベースとキック以外はフィルターやイコライザーなどで低音部を思い切って捨てる。音のこもりを防止するため。意図は理解するが、これは下手にやり過ぎると逆にシャカシャカしてしまう懸念も抱く。ジャンルや楽曲次第というところだろう。EDMはそのシャカシャカ感が様式美ということなのだろうけど。
  • サイド・チェイン (side chain) を上手に使って、キックとそれ以外の音が極力重ならないようにする。コンプレッサーでよく使用される制御技術だが、サイド・チェインのコンプレッサー機能については、TracktionではT6より対応で、私が今導入しているT5では残念ながら未対応。なので将来課題。フリーのサイド・チェイン対応コンプレッサーのプラグインがもしあれば試してみる価値はあるが。
[追記 (4/13)]

同じ作者*1が Future Bass の作り方解説をアップされていたので、追加で引用しておく。

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EDM同様このジャンル自体は特に好みというわけではないが、tipsとして頂いたノウハウは以下の2点:

  • 隙間埋めなどにオーディオ・サンプリング素材を積極的に使う。今の私に足りないアプローチはこれだと少々反省した。MIDI打ち込みばかりではすぐにマンネリ化して限界が来ると痛感。最終的に残すか残さないかはともかく、作曲のモチーフに使ってもいい。
  • 歌物がある方が作曲は捗る。これは私が最近漠然と感じていたことなので正に我が意を得たりな感。上記サンプリング素材と同様、よほどメロディー・センスがある人以外は、何かしら作曲の取っ掛かりというかモチーフが必要である。コード進行でもいいけど、歌声はそのまま楽曲にも活かせるし、結構強力な化学反応を引き起こすパワーがある。

*1:エゴサーチしたら大学4年生らしい。ほとんどセミプロの域だが。

ドラムの各楽器パーツ別トラック分解

過去記事にて将来課題の一つとしてまとめたように、本来ならばドラムについてはキックやスネア等各パーツごとにトラックに分離してエフェクト処理をする必要がある。そうせずに単一トラックでマスター編集した場合、特に不満を覚える大きな問題は、キックが弱々しくなり、ほとんど聞こえなくなってしまう現象である。

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このようなドラム・キットのトラック分解は、マルチチャネル対応のプラグインであれば比較的容易に実現できる。今回は備忘録代わりにその方法を簡潔に紹介しておきたい*1

マルチチャネル対応プラグイン

マルチチャネル対応のプラグインであれば、各楽器パーツに対応したピッチ別に、わざわざ元のMIDIデータを(DAWによっては手動で)トラック分解する必要はない。すなわち、各楽器パーツの出力先を別個のチャネルに分け、それぞれのチャネルとアウトプット用トラックを紐付ける設定さえすればよい。これがトラック分解の効果を狙う一番お手軽な方法と言えるだろう。

マルチチャネル対応のドラムキット・プラグインの代表格として、幸い私も既に導入済みである MT Power Drum Kit 2 を取り上げる。下図の赤枠で囲った領域を見れば明らかなように、これは各パーツごとに出力先のチャネルをユーザ側で自由に振り分け設定できる。

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T5のエディット画面では、下図例のように MT Power Drum Kit を含んだラックフィルター(ラッパー)をすべての出力先トラックに挿入し、左下のプロパティで音源チャネルを紐付ける。下図例では、Crash Cymbals のトラックは、MT Power Drum Kit のチャネル4から出力を受けて発音する仕組みである。その Crash Cymbals をチャネル4に割り当てる設定は、上図プラグインの設定例の通りである(Crash L / Crash R)。

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とさらっと書いてしまったが、おそらくこの説明だけでは意味不明と思うゆえ、具体的な詳細設定方法については、下記チュートリアルを参照されたい。これ以上ないほど懇切丁寧に解説されているので、ここでくどい繰り返しは避ける。要はラックフィルターを使うところがミソである*2

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参考までに別のプラグインをもう一つ追記。MT Power Drum Kit とはまったく毛色の異なるドラム・キットとして、ヒップホップ系で人気のあるフリーのドラム・プラグイン Line of Legends も、同様の設定で8チャンネルをトラック分解可能である。

ただし、こちらはGMパーカッション・マップには非準拠で独自配列であること、また各楽器パーツごとのチャネル区分はプリセットで固定されていることに注意する。

マルチチャネル対応ではない場合

Drum Pro 等どうしてもマルチチャネル非対応のものを使う場合は、ピッチごとにMIDIデータをトラック分解するほかない。フリー版だと、数としては非対応のプラグインの方が多いように思う。

T5では、Cubaseのパート自動分解に相当する機能はないため、手動で処理せざるを得ない。やり方としては、

  • 全パーツ揃った元のMIDIデータを、出力先の各トラックへ複写する。
  • 各トラックにて、該当楽器パーツ以外の不要なMIDIデータを削除する。

という手順がもっとも単純であろう。T5のピアノロール上でCommandキーを押しながら鍵盤GUIをクリックすると、ターゲットとなったピッチのノートを一網打尽に選択できる。目的のピッチ以外を効率よく消去する手段として使えると思う。

ただし、MIDIデータもしくはステップ・シーケンスのデータをトラック分解してバラしてしまうと、後からの追加修正が非常に面倒なことになる可能性がある。したがって、自主制作の場合であっても、分解加工は可能な限り避けた方がいいと思う。そういう観点からしても、ドラム・キット用プラグインの選択にあたっては、マルチチャネル対応か否かの見極めがかなり重要な意味を持つと言える。

*1:いわゆるパラアウト (individual output) の実現方法。

*2:ラックフィルターは Tracktion の特徴的かつ高度な機能の一つで、ユーザ独自のフィルター合成や入出力ルーティングを柔軟にカスタマイズできる仕組みである。私は正直これを使いこなせる自信はあまりないが。

本日は第18回MIDI検定2級2次試験の日

今日2月18日は表題試験の実施日である(課題提出は20日消印有効)。と書きつつ、私は来年の次回19回受験組のため、直接は関係なしの状況である。

今さら他の受験者の励ましになるかどうかはわからないが、YouTubeに過去の年配受験者の合格コメントがアップされていたので参考まで。こういうのを見てしまうと奮起せざるを得ないだろう。

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この方が凄いなと思うのは、旧制度試験の合格者であるということ。確か旧制度の2級実技試験は、試験会場に設置されているPCとDAWまたはMIDIシーケンサーを使い、その場で制限時間内に入力作業を済ませる、というかなり過酷な内容だったからだ。課題曲も現行制度とは比較にならぬほどボリュームがあったようである*1

正直言って旧制度のままだったら、私は受験を諦めていただろう。MMLを援用するなどという裏技も使えないし。

*1:協会サーバに残された旧制度過去問資料の残骸にその一端を見ることができる。

ナチュラルの指定とその有効範囲

前回の続き。本例題曲(第15回MIDI検定2級2次試験練習曲No.1)のスコアではナチュラルが多用されているので、それについて補足しておく。

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MMLによるナチュラルの指定方法

本曲の調性に基づきFの音にはシャープが付く。すなわち G Major である。オルガンおよびギター・パートのスコアを見ると、このFのノートにナチュラルが多数付いているので要注意である。 

ナチュラルについても、シャープやフラットなどの他の臨時記号同様に、同一小節・同一ピッチ有効というルールを踏襲する。

MMLにおいてナチュラル化する際は、該当ノートの右隣に*(アステリスク)を付ける。ただし、MMLには小節概念がないので、すべての該当ノートに対して明示的に*を付ける必要がある。これはシャープやフラットも同様である。

たとえば下例の場合、MMLではrg^12 f*f*g rg^12 f*^12gと記述すればよい(l12と宣言済みとする)。

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本例題曲について蛇足

本曲は、連符入力と臨時記号の正確な解釈が問われる練習曲である。

特にオルガン・パートは5連符や6連符も登場するなど一見複雑に見えるが、前回書いた連符入力のルールや、上述のナチュラルの解釈・記述方法を押さえておけば、とりたてて困難ではないと思う。コントロール・チェンジ(CC#11エクスプレッション)がオルガン・パートの2箇所にしか登場しないことを考えると、むしろ簡単な部類に入るかもしれない*1

*1:ノート入力を容易に感じるのはMMLで記述しているからであって、DominoやDAWのピアノロール・インターフェースを使って一から入力していくのは相当手間がかかるであろう。

オクターブの指定について

DominoとMMLを併用する場合のオクターブの合わせ方について、初回演習時に書き漏らしているので、ここで改めて補足しておきたい。

Dominoの環境設定

Dominoでは、メニューバーより ファイル > 環境設定 と進み、「全般(1)」サブパネルを開く。ここの「オクターブ」設定項目で、C4をノート番号60(中央のド)に合わせるよう選択する。MML併用の場合は、C3ではなくC4をセンターにした方が無難である(後述)。

 

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MMLのオクターブ指定

MMLのオクターブ指定は、o (octave) コマンドを使う。MMLでの中央ドが位置するオクターブは、番号4に割り当てられている(o4と記述する)。したがって、Dominoが上記設定の通りである場合、中央位置の数字指定が両方とも4で揃うので覚えやすい、というかこの方が間違いがないだろう。

ベースとギターは、特に指定がない限り、譜面よりさらに1オクターブ下げることが通例である。ただし、DAWGM音源以外を使用する場合、プラグインによってはわざわざ下げる必要はない場合があるので注意する。特にベース音源はそうであるケースが多いように見受ける*1

それ以外の楽器パートについては、8va(1オクターブ上げる)または8vb(1オクターブ下げる)と明示されるはずなので、それに従う。下例では、ピアノの低音部がそれに相当する。

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*1:こういう場合、Tracktionでは MIDI Modifier プラグインを音源プラグインの直前に挿入してピッチ調整できる。