オーディオ素材の加工とリミックス (Tracktion)
前回記事の蛇足。お試しの軽い気持ちでいろいろ制作作業をやってるうちにドハマリで、初心者なりに気づいた注意点や T5 (Tracktion 5) の限界などをメモしておきたい。
下準備について
素材吟味の重要性
今回は8種類のステムが用意されているが、当然ながらすべてを使用する必要はまったくなく、自分が料理したいと思う材料・ステムを厳選する。これはもう料理人の好みとセンスが頼りである。ほとんどこの段階で出来不出来が決まってしまうような気もする。
SleepFreaksの関連企画チュートリアルで指摘の通り、よほどの理由がない限り、ドラムとベースは独自制作の方がいいと思う。さもなくばリミックスをやる意味がなくなる。ただしいずれにせよ、率直に言って今回原曲のリズムとベースが非常に弱々しくて使い物にならないとは感じたが(あくまでそれだけを抜き出してしまえば、という意味で)。
原曲をどの程度参照するか
オリジナルは一度さらっと聴き流す程度にしておき、むしろ各ステムの方を聴き込んで吟味選択する方が重要だと思った。オリジナルを聴き込んでしまうと先入観が立って大胆なリミックスができなくなるからである。
素材の加工と下ごしらえ
使うと決めたステムは、繰り返し編集に使いやすいようループ素材として再加工する必要がある。ステムのオーディオ・クリップをスプリットしたり、リバースやタイムストレッチ加工といったオーディオ素材の初歩的な処理である。おそらくここはT5のみならず他のDAWもほぼ同じはずである。
T5で唯一の問題は、小節単位などに基づくオーディオ・クリップの自動切断処理ができないことである。つまり、凝ったカットアップ加工は事実上諦めざるを得ない*1。また、付属のサンプラーは非常に原始的な代物なので、他メーカーのプラグインを用意すべきだろう。
楽曲のテンポ決定
オーディオ素材の性質にもよるだろうが、T5の自動判別処理はあまり精度良くない印象。結局手探りで調整する羽目に。後ほど上記SleepFreaksのチュートリアル・ビデオで確認したところ、そのものずばりBPM=128と出ていた。小数点以下まで細かいテンポ設定がなされていた場合はちょっとお手上げかもしれない。Cubaseとか他のDAWではどうかは知らないが。
ミックスやマスター編集など(後日追記)
ミックスとマスター関連はあまりにも奥が深くて一度には書き切れないので、とりあえずT5でのレンダリング・書き出しについて一言だけ補記。
T5での2ミックス後の出力音質は結構良い方だと思う。言うまでもないことだが、WAVのままで聴いて済ますのではなく、mp3化したものをiTunesなりに取り込んで音質を確認する必要がある*2。
T5からレンダリング出力(エキスポート)する場合、ピーク値0dBで音割れ防止の正規化はできる。もしもiTunes等ネット配信対応で最大値を規定通り-1dBに設定する場合は、別途Audacityを使った正規化が必要かと思う。
なお、このミックスやマスター関連のテクニックについては、現役エンジニアによる下記記事(長文)が非常に参考になった。本記事でも、やはりというべきか、低音処理の重要性が強調されている*3。あとはただただ勉強せねばならぬことが山ほどあるということです。
最後に素人全開の愚痴。制作作業にあたっては、MIDIキーボードと21インチ以上の大画面ディスプレイが必須であることを今更ながらに痛感している。MacBookでは正直つらいことこの上ない。今年はiMacの27インチサイズでも買った方がいいのかもしれない。