DAW悪戦苦闘記

DAWやMIDIを通じてちまちまとDTMを楽しむ記録+MIDI検定1級到達記

Studio One 3 のチュートリアル動画

2級はともかくもMIDI検定1級用に Studio One 3 Prime を使う場合は、ミキシングまである程度深く使いこなせるようになっておく必要がある。そのためには、我流と思い込みを排し、チュートリアルで正しいスキルを効率よく習得したい。

日本語による講座では、Sleepfreaksの「Studio Oneの使い方」シリーズが一番定評もあり、無難であると思う。ただし、機能によっては表面をなぞるだけでやや物足りないと感じる所が多々あるかもしれない*1

sleepfreaks-dtm.com

sleepfreaks-dtm.com

 

上記Sleepfreaksの講座を補強する意味では、以下のチュートリアル動画がかなり懇切丁寧で、活用し甲斐があると思う(ただし英語によるレクチャー)。

www.youtube.com

 

全66回の講座中、Prime版ユーザでも参考になるであろう機能別レクチャーは、私が調べた限りでは以下の26講座と思われる*2:

  • 07 File and Content Management
  • 11 Using Automation - Part I
  • 12 Transport Bar Functions
  • 14 Using Automation - Part II
  • 17 Time-stretching Audio
  • 19 Presence XT - In Depth | Part I
  • 20 Presence XT - In Depth | Part II
  • 21 Working with Instrument Tracks
  • 24 Troubleshooting MIDI in Studio One 3
  • 29 Song Page
  • 31 Start Page - In Depth
  • 33 The Mix Console | Part II
  • 34 The Mix Console | Part I
  • 36 Transposing/Tuning Audio Events
  • 38 Using Console Scenes for Productivity
  • 39 Working With Channel Groups in the Console
  • 41 Explode Pitches to Tracks
  • 42 The Browser - In Depth | Part I
  • 47 Working with Markers
  • 49 The Browser - In Depth | Part II
  • 55 Creating Tempo Variations with Tempo Track
  • 61 The Editor - Working with MIDI | Part I
  • 62 The Editor - Working with Audio
  • 63 The Editor - Working with MIDI | Part III
  • 64 The Editor - Working with MIDI | Part II
  • 65 The Editor - Working with MIDI | Part IV

このうち#19と#20の Presence XT に関する講義は、既に以前の記事で紹介済みである(下記参照)。なお、MIDI検定実技にしか使用しない場合は、オーディオ編集関連はすべて割愛し、MIDI関連だけの視聴に限定してもよいであろう。とりわけ、#61および#63〜#65の4つは必須である。

daw-jones.hatenablog.com

*1:上級者編はPrime版ユーザには使えない機能が大半である。

*2:MIDI検定実技対策には直接関係のないデバイス設定とオーディオ録音関連は除く。ただし、オーディオ編集に関しては、自主制作上有益と思われる講座を残した。また動画のYouTube掲載順は一部で前後しているので視聴者側で適当に順番を変えて見るとよい。

MIDI検定2級1次試験のイベントリスト問題

MIDI検定2級の実技演習を一旦休止している間、1次試験のイベントリスト問題だけ先行してお試しでやってみた。取り組んだのは、昨年末第18回2級1次試験よりイベントリスト問題の4問である。

残念ながら最初の1問だけミスってしまい、あとの3問は正解したが、音数が多い割にはピッチミスを突いた問題は結局1問(第2問)だけで、なんだか拍子抜けする(出題バリエーションを考えれば当然か)。まとめると昨年問題の引っ掛け所は、

  1. ゲートタイム(レガートになっていない所は音価の80〜90%程度とする)
  2. 臨時記号の小節内有効(見落としやすい和音のケース)
  3. CC#11の漸減過程に沿わない異常値(減少プロセスから外れる値)
  4. ハンマリングオンのタイミング(ティック値のミス)

の4種となる。

イベントリスト問題は、先にある程度2級2次試験の実技練習をやってから取り組むとアプローチしやすい。譜面やコントロール・チェンジの記法に慣れるという意味もあるからだ。私はDAWの試運転も兼ねて、たまたま実技演習の方を先に着手したのだが、結果的にはその順番で正解だったように思う。もちろん、イベントリスト問題の学習結果を実技演習にフィードバックさせることも同等に重要である。

なお、上記の通り引っ掛けポイントは様々なので、結局譜面とイベントリストは一通り全部嘗めないと解答には到達しないと思われる。幸い、試験時間はトータル90分とたっぷりあるので、最悪でも時間が全然足りなくなるという事態には陥らないであろう。

蛇足: その他の知識問題の復習と対策について

知識問題の準備は夏以降でも間に合うであろう。なお、知識問題に関しては新旧制度間で出題範囲と傾向が大きく異なるため、旧制度問題は特にやらなくてもいいと思う。

また新制度問題についても、演習時間を確保しにくい場合は直近2、3回分ぐらいにとどめ、あとは間違ったところを公式ガイドブックに立ち返って復習を繰り返すという対策で十分ではないか。というのも、毎年まったく同じか同工異曲の問題ばかりなため、何年も遡って反復する必要性を感じないからである*1

*1:昨年受験済みの3級対策で得た教訓でもある。同じことの繰り返しでは飽きるだろうし、別に満点を狙う必要はないから、合格レベルに達していると確信できた時点で過去問演習は打ち切ってよい。

ストリーミング隆盛による楽曲への影響

今週スラドで以下の記事が上がっていたので、コメント共々興味深く読んだ(本家サイトでも上がっている)。

srad.jp

本件は海外の新聞社やニュースサイトでは方々で盛んに引用されていたようだが、1次情報源はAFPニュースである。

www.afpbb.com

 

つい先日書き記した音圧戦争を彷彿とさせる話で、正直またかというような展開である。しかしこれは良し悪しの問題ではなく、単にテクノロジーが受給両面での商業音楽のあり方や作風を変化させる歴史的パターンの繰り返しであって、その逃れられない宿命の一端をリアルタイムで垣間見ている状況とも言える。

現状はアテンション・エコノミーに翻弄されまくっているというか、音楽で食べていくことの世知辛さに感じ入り、つくづくアマチュアでよかったと胸を撫で下ろす(違うか)。

daw-jones.hatenablog.com

調性の素早い判別方法

MIDI検定2級2次試験の筆記テストでは、課題曲の調性を答えさせる問題が出るようである。楽曲の調性は、言うまでもなく五度圏表を理解・記憶していれば判別可能だが、解答時間がかなりタイトなので*1、もっと迅速に判定するテクニックを体得した方がよい。

幸い定番のテクニックが確立しており、内容は繰り返しになってしまうが、備忘録がてら敢えてここに整理してまとめておく。下記記事などを参考とする:

www.8monji-guitar.com

調号の見方(メジャー・キー)

調号がシャープの場合は、

  • シャープが付く順番は、ファドソレラミシ。
  • メジャー・キー: 最後にシャープが付いた音の半音上。

調号がフラットの場合は、

  • フラットが付く順番は、シミラレソドファ(シャープの逆順)。
  • メジャー・キー : 最後から2番目のフラット記号が付いた音。
  • フラット一つの場合のメジャー・キーは、Fとする。

マイナー・キーの場合

メジャー・キーの短三度下(3半音下)とする。

*1:2次試験筆記テストの試験時間は40分。2次試験の筆記は、おそらく実技の凡ミスに対して下駄を履かせてくれる趣旨もあるのだろうが、1次試験との重複は明白なので個人的にはなくてもいいと思う。

音圧考メモ

DAWを触っていると議論が絶えないのが音圧の話題である。今現在音楽家やエンジニアの間でどの程度支持されているのかは不明だが、ここ30年前後は全体として音圧至上主義の傾向があったことは確かである。しかし、近年は海外を中心に高音圧一辺倒の流れが変わりつつあるような記事も目にする。

そうした背景の下、最近たまたま読んだ以下の2つの記事から私が汲み取った最大公約数は、「音圧を上げ過ぎると音楽として破綻する」という警鐘であるように思う。

藤本氏によるハイレゾ・CD比較記事の方は断言を避けているものの、この2つを読んで言外にも漂ってくる大きな示唆は、やはり音楽にとってダイナミック・レンジは非常に重要だということだろう。そういう意味では、問題の本質はむしろコンプレッサー処理のやり過ぎ、ということも言えるのではないか*1

av.watch.impress.co.jp

onibabako.amebaownd.com

 

音圧戦争については、2年前の以下のツイート記事がかなり痛烈な批判を浴びせている(上記藤本氏のハイレゾ・CD比較記事とも関連するところ大)。私自身もリスナー視点で頷くところが多かった。音圧至上主義が結果としてアマチュアの上達を妨げているという文脈でボカロ界隈をちょっとディスっているが、自らを棚に置けば、EDM一般が総じて酷い有様だとは常日頃感じてはいる*2

togetter.com

 

データで検証する音圧戦争という総括と論考では、以下の記事が参考になろうかと思う。例によって、音圧至上主義に対する反省と見直しは欧米市場から始まっている。

www.brainpickings.org

 

なお、ダイナミック・レンジを取り戻すという意味では、懐古趣味と批判されようが、音圧競争に毒される前の80年代前半あたりのテクノとかポップスを個人的には大いに参考にしている*3

以前、音圧向上のためにLoudMaxを活用する記事を備忘録的に書いたが、あまり無邪気に何でもかんでも上げ過ぎる(0dB付近にへばりつく)と楽曲として破綻するリスクを伴うことは、今一度自戒を込めて肝に銘じておきたい。実際には上げるどころか、音割れ防止を主眼に音圧を下げるべく、リミッター的な使い方をする場合がほとんどではあるが。

daw-jones.hatenablog.com

*1:1年前のスラドに同様な趣旨の記事が上がっていた:
ZARD「負けないで」、最近リリースされた音源ほど波形が潰れている?

*2:DAW入門中の素人やDJが最も着手容易なジャンルがEDMだから、という事情も手伝っているように思う。ループ素材を切り貼りして音圧爆上げすればそれなりのものはできてしまうから。音圧アップを煽るメディアにそそのかされて悪循環かも。

*3:私個人の最高のお手本は、Trevor Horn のプロデュースでZTTレーベルから出ていたエレクトロ・ポップの作品群。

CPU過負荷対策のためのレンダリング (Tracktion)

以前書いた記事のフリーズ処理に関して訂正と補足をしておきたい。

daw-jones.hatenablog.com

フリーズあるいは書き出しの必要性

リミックスの場合はオーディオ素材が中心を占めるので、再生時のCPU負荷がそれほど上がらずに済んでいたが、MIDI打ち込み楽曲だとWAV書き出し時であっても処理が追いつかず、どうしてもノイズ混入が避けられないことが時々ある*1

したがって、編集が確定したMIDIトラックから適当と思われる数だけ順次オーディオに変換し、処理負荷を下げる必要がある。こういう場合大抵のDAWでは、フリーズと呼ばれる処理と書き出し処理という2種類の方策があるが、レンダリングしてWAVに吐き出すという意味では両者に本質的な差異はない。フリーズの方は一時ファイルに書き出しており、手軽に元のMIDIトラックへ戻せるという利点がある。

処理負荷が高いと思しき要素 

私のMacと Tracktion 5 (T5) の環境では、少なくとも以下の2つは特にCPUの負担を増やす傾向があるように見受ける:

  • 音源レイヤーなどのラック・フィルター
  • Sample Tank 3 の音源

これらに加えて、エフェクターは基本的にT5内臓のもの以外は結構重いものが多い。なので、センド・リターンまたはバス・トラックにまとめて一括処理をしてもよさそうなところは、可能な限りそうすることによって挿入するエフェクターの数を減らす方がいいだろう。曲によってはなかなかそれも難しい場合はあるが。

フリーズ・ポイントの活用

T5ではフリーズするにあたり、トラック丸ごとだけではなく、フリーズの処理タイミングを細かく調整できる。いわゆるフリーズ・ポイントという内臓プラグインを挿入することで、各トラック毎にどこまでフリーズするかを決められる(下例参照)。

f:id:daw_jones:20170408224600p:plain

したがって、フリーズしたトラックであっても、フリーズ・ポイントをフェーダーの前に挿入した場合は、たとえばソロ再生で音質の確認もできるし、もちろんミュートもできる。

フリーズの限界と注意点 (T5)

それでも私が試した限りでは、T5ではまだ以下のような限界がある*2:

  • バス・トラックを構成する個別のトラックはフリーズできない。この場合はバス・トラック自体に対してフリーズを適用する。
  • インストゥルメントのリリース・タイムが長い、もしくはディレイ等エフェクト処理により長い残響があるトラックにフリーズを適用すると、演奏が途絶えたタイミングでブツ切れになる*3

トラックまたはMIDIクリップのレンダリング

上記フリーズ処理の限界を回避するには、トラックまたはMIDIクリップごとにレンダリングで書き出してしまう方がいい。あとで再編集・修正の可能性を考えると、元のMIDIトラックを置き換えずに別トラックへと書き出し、再生時にソースのMIDIトラックはミュートするとよい(下のトラック・プロパティ例を参照)。

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*1:根本的にはPC/Macの性能を上げる必要があることは重々承知しているが。

*2:バージョン6以上では改良されている可能性がある。また他のDAWではどうかは知らない。

*3:バグ臭いのだが、どうもMIDIクリップ単位でオーディオが切られているように見受ける。

TracktionがWaveformへ進化

本年1月の NAMM 2017 ですでに公表されていたようだが、Tracktionシリーズが発展進化してWaveformとして生まれ変わり、本国ではちょうど1週間前の4月3日に正式リリースが公表された。

icon.jp

www.tracktion.com

ask.audio

 

遂にと言うべきか、ミキサー・コンソール・ビューが提供された模様。これがなかったのはTracktion最大の泣き所で、長年にわたるユーザの強い要請をさすがに無視できなかったのだろう。あと注目すべきは、コード・ヘルパー等様々な作曲支援ツールが搭載されている点で、私のような初級者には結構ありがたい機能だと思う。また、内臓サンプラー・シンセとしてCollectiveが同梱されるが、これは最近私が使い始めた Studio One の内臓シンセ Presence XT に奇しくもよく似ている。T5では非常に貧弱である内臓エフェクター類も大幅に機能向上しているようである。

なお、ようやく日本市場の代理店パートナーが決まり、Media Integration, Inc. が日本ユーザ向けの窓口とサポートを請け負うようである。同社による販売開始は4月27日を予定とのこと*1

www.minet.jp

 

所詮は趣味の範疇なので私は現状T5でもあまり不足は感じないが、今秋予定のMacの買い替えタイミングでWaveformにアップグレードしようかと検討中。抱き合わせバンドルなしのBasicバージョンで税込$103弱というのはこの手の高機能DAWとしては破格の安さである。

*1:日本語マニュアルやサポートが不要であれば、本家サイトから直接購入ダウンロードしても構わないと思われる。この点は他の海外製DAWも同様。