DAW悪戦苦闘記

DAWやMIDIを通じてちまちまとDTMを楽しむ記録+MIDI検定1級到達記

FMシンセの原理に関するチュートリアル

往年の名機 Yamaha DX-7 を模したソフトシンセである DEXED はすでに導入してはいるのだが、アナログシンセとは毛色の異なる音色作りが難しくてほとんど使っていなかった。今まで横着をして単に勉強不足なだけなのだが、基本原理を少し学習してみたので、以下備忘録として資料などを書き記しておく。

FM合成の基礎チュートリアル動画

音色編集の基本原理であるFM合成についてはネット上で探せばいくらでも資料は見つかるが、いきなり電子工学の専門的な講義に取り組むにはさすがに無理があるので、取っ掛かりとしては以下の2本で十分かと思う*1

一つは、以前にも紹介したシンセ音作り講座の第10回講義で、FM合成による音作りの基本をこれ以上ないほど簡潔明瞭に解説している。Logic Pro X ユーザは内臓シンセのRetro Synth ですぐお試しできると思う。

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上記講座を若干補強する意味では、以下の解説講義も有益かと思う(ただし英語レクチャー)。歴史的背景や基礎理論、音色エディットの基本などを実際の音を聴きながら理解できる。

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要点覚え書き

上記チュートリアルなどを踏まえて私なりに勘所などをまとめておく。

発想の基本

アナログシンセにおけるLFOを可聴領域の周波数まで上げたらどうなるか、というのが着想の基本らしい。

基本原理

基本の原理は意外に単純で、要はサイン波を次々に重ねて目的の音を作り出す。ここが一般的なアナログシンセとは真逆の合成方法になっている。

すなわち、アナログではノコギリ波など倍音を豊かに含んだ波形を基音として、不要な倍音をフィルターなどで削ることで音を作る(減算方式)。一方FM合成では、倍音を含まないサイン波を巧みに重ね合わせることで倍音を作り出していく。根底にはフーリエ解析の考え方が潜んでいると思われる。

80年代にDX-7が登場して以降、アナログシンセでは真似できない生楽器音色のリアルな再現や金属音で威力を発揮したが、その後安価なサンプラーの登場で一気に衰退した。

音色編集の基礎

一つ一つのサイン波生成器をオペレータ (operator) を呼び、これらをいくつか組み合わせる。DX-7/DEXEDでは6つのオペレータから構成される。これらはその役割に応じて、変調波 (modulator) 生成用と搬送波 (carrier) 生成用に分類される。

変調波はアナログシンセで言う所のLFOに相当する。一方、搬送波は実際に発音する部分で変調対象となるオシレータに相当する。この2種類のオペレータの組み合わせ構成をアルゴリズムと呼び、DX-7では32種類搭載されていた。基本的な考え方として、パッド系の分厚い音色を作りたい場合は、搬送波を多めにして並列に同時発音させる。逆にベースなどのうねりのある音色が欲しい場合は、搬送波は1つか2つに絞り、変調波を重層構造にして特徴を出す。

FM合成で面白いのは、個々のオペレータのEG等生成パラメータはそのままに、単にアルゴリズムを切り替えるだけでも劇的に音色を変化させることが可能な点である。

DX-7と私の思い出

DX-7は私もかつて実機を保有していたことがある。同じYamaha製のMIDIシーケンサーQX5と組み合わせて使っていた記憶がある。80年代中盤デジタル化の到来によりシンセの価格破壊が一気に進み出していた時代で、DX-7はその尖兵的な存在だった(と後になって気づく)。QX5にしても、当時シーケンサーの代表格である Roland MC-4 が50万円だかの値段だったのにいきなり10分の1近い価格で登場したから驚喜した。MIDI規格制定はRoland社主導であったが、DX-7の大ヒットが一般への普及を後押しした感もあり、デジタル化とMIDI普及へのYamahaの貢献はとてつもなく大きいと思う。

ところでDX-7だが、あの酷いUIでどうやって音作りしていたのかもうまったく記憶にない。操作法はなんとか習得したとしても、FM合成の原理は全然理解していなかったと思う。音色編集は当時から難解だとしきりに批判されていたが、どちらかというとUIの制約ゆえであったように感じる。タッチパネルもまだ一般的ではなかったあの時代にあの低価格で市場投入された製品だから仕方がなかった一面はある。それでも売れたのだから、低価格のインパクトの方が大きかったということだ。

実機は引越しを機にして10年ほど前に処分してしまったけれど、特に後悔はしていない。というのも、一斉を風靡して市場に大量に出回ったため、骨董品価値がほとんどないからである。一応ヴィンテージ・シンセの部類とはいえ、中古価格はびっくりするほど安く、ハードとしての価値はなきに等しい*2。DX-7登場以後のデジタル化進展により、ハードシンセは凄まじいばかりの陳腐化を繰り返すのだが、先駆者DX-7もその例外ではなかったというのはやや皮肉ではある。そのような技術革新の時代を目の当たりにしてきた私は、金輪際ハードを買うことは禁忌としている次第である。

*1:読み物資料としては、例によってWikipediaの記事が一番よくまとまっているように思われる。

*2:今は概ね2〜3万円程度で入手できるようだ。

2016年2月期練習曲No.2の演習

MIDI検定2級2次試験演習の続き。今日は、2016年2月期練習曲セットから、練習曲No.2を取り上げて分析し、要点を整理する。

シンセリード

フレーズ自体は全然難しくはないが、スタッカートの点在には要注意である。また、シンセリードではお馴染みであるピッチベンドによるチョーキング奏法とCC#1モジュレーションが頻発しているので見落とさないようにする。ベンドレンジはテンプレ標準設定の2半音を前提にしていることに注意する。

13小節目に登場する6連符の入力について確認と補足。要は4分音符を6分割するわけだが、Studio One 3 Prime(以下S3)のMIDI編集画面では入力パレットに6連符が用意されているわけではないので、ここは「16分音符の3連符 × 2」と解釈して入れる(下図参照)。

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ギター

下例のような、いわゆるミュート奏法が駆使されており、Xの音符部分をMIDIで擬似ミュートさせる*1。具体的には、譜面指図の通りにゲートタイムを20ティックに絞り込んでノート入力する*2。あとハンマリング・オンが2箇所あるので注意。

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エレピ

右手の和音(コード)は同一パターンの連続が大半なのでコピペ対処で大幅に効率アップを図る。幸いS3の場合、範囲指定の上で"D"キーを押下すれば次々と連続複写が可能で非常に便利である(下例参照)。

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左手低音部については、"8va bassa"の指定があるため、記譜音程よりもさらに1オクターブ下げる必要がある。個人的にはやや違和感ある印象も受けたのだが、ベースの補強的な位置づけであろうか。

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その他全般

オルガンを除いて最終小節最後の音にアクセント記号">"が付いている(下例参照)。したがって、ベロシティは1ノッチ上(16程度加算)となる(ドラムのベロシティは楽器別指定のため対応不要)。ここはうっかり見落としてしまうリスクが高い。

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調性は E Major であるが、調号のシャープが4つも付いており、慣れていないとMIDIキーボードによる入力はしんどい(下例参照)。調性サポート機能がないDAWなどによるノート入力はピッチミスに重々注意する必要がある。これはS3のスケール(キーナビゲート)機能で随分と助けられているところである。

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*1:ギターのミュート奏法のシミュレート法については、公式ガイドブックの§6-4「MIDIデータによる演奏表現」p.227 を参照。この方法はソロで聴くと貧弱だが、他パートと混ぜると意外にしっくりと馴染む。もっと凝るならば、ミュートのサンプリング音源を使うやり方が今では一般的であろう。

*2:ドラム音源と異なり、Presence XT のエレキギター音源ではこの極小ティックも正常に発音はする。

MIDI検定2級2次対策のワークフロー変更

結論から書くと、ゲートタイム編集前のMIDIデータ入力でMMLはもはや使用せず、 Studio One 3 Prime (以下S3)を使うよう改める。これにより、1級実技と2級実技でワークフローをほぼ同じに統一できるメリットもある。すなわち、基礎となる楽曲MIDIデータはS3にて作成し、最後にSMFとしての体裁を整える編集加工はDominoで肩代わりする、という流れである。

なお、MML最大の利点の一つでもある調性自動変換機能は実際かなり重宝していたが、これはS3のスケール(キーナビゲート)機能で代替できるので、幸い乗り換えにあたっての支障はない(下例参照)。

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MML活用の超えられない壁 

MIDI検定2級2次試験の練習曲を使って検証してみたところ、MMLによるMIDIデータ作成に関しては、大別して以下のような欠点がある:

  • コンパイルMIDIへの変換処理)がいちいち手間である。それに加え、変換後のMIDIデータをDominoへ取り込んでピアノロールに表示させるまでミスを検知できず、間違いが発覚した場合の手戻り処理が非常に面倒である*1
  • 和音(コード)入力が非常に効率悪い上に間違いを犯しやすい。和音入力はやはりピアノロールUIが圧倒的に優れているように思う。MIDIキーボードを使うとさらにスピードアップできる可能性が高い。

Studio One と Domino の合わせ技:MIDIデータ作成上のコツ

ここでS3を使ってMIDIデータを作成する場合の若干の注意点をまとめておきたい。要はDominoと上手に役割分担させる点が勘所である。なお、逆にS3へSMFをインポート再生させる場合の要点については以下の記事を参照。

daw-jones.hatenablog.com

ドラム譜

ドラムについては、S3添付の標準GMパーカッション・マップにノート番号を追記修正して使う。ノート番号は、各楽器名称の冒頭ではなく末尾に追加した方が見やすい(下例参照)。

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ここはユーザの好み次第だから、Dominoで入力する方が楽であればそれでも構わないが、制作ワークフローを2級と1級で統一するという観点からは、全パートS3での基礎データ起こしが望ましい*2

なお、S3で16分音符等を使ってドラム譜の入力を対応した場合、Dominoへ取り込み後に全ノートのゲートタイム値を10ないし15に揃える*3

ベロシティ、ピッチベンド・コントロールおよびコントロール・チェンジ(CC)

これらはドラム含めてすべてDominoで一括編集する方が楽である。また最小の手順で正確に入力できる。

とりわけS3側で問題となるのは、ベロシティやCCがパーセント表記という特殊なインターフェイスであることだ。この状態では、2級の場合は譜面指定通りの値に精確に設定することが難しい*4

中央ドの位置

S3の中央ド(ノートナンバー60)はC3の位置である。混乱しないようにDominoの設定もそれに合わせて変更した方がよい(ファイル > 環境設定 > 全般(1) > オクターブ)。

オクターブ調性

ベースとギターについては、S3では譜面通りに入力し、Dominoへ取り込んだ後で1オクターブ下げる(トランスポーズ機能で一括修正)。Domino取り込み前に当然S3で再生チェックすることを考えれば、このやり方がたぶん一番簡単確実だろうと思う。

ティック値等不具合の初期チェック

S3から取り込んだ直後のMIDIデータは、各トラックごとにDominoのイベントリストで一応ざっと閲覧チェックし、大きな不具合がないかどうか検証する。

S3側の私の操作ミスなのか原因は不明だが、非常にごく稀にノートオンのティック値またはゲートタイム値が1ティックほどズレて端数が混じることがある*5。その場合は一応念のために、該当ノートの前後を含めて、Dominoで直接入力し直す*6

*1:MMLでは、ピッチよりもどちらかというと音符の長さを誤りやすい。私も誤入力箇所以降の音符の位置が盛大にズレてしまうミスを頻繁に体験している。

*2:私の印象ではドラムも含めてS3での入力の方が速く正確に対応できるように思う。結局ピアノロールUIに関してはDominoよりも最新のS3の方が優れているということ。

*3:一応念のための措置で協会推奨値に準拠する。そのままでも減点はされないとは思うが。本来ドラムおよびパーカッションはゲートタイムの値が意味を持たない。

*4:1級は受験者の自由な表現に任せられるので、パーセント表記でも全然問題にはならず、S3で全部編集できる。

*5:S3作成直後のゲートタイムはまだ音価そのものだから、正しく入力されているならば全部240とか120といった10単位の数字に揃っているはずである。

*6:音価の10%を超えてズレていなければ減点対象にはならないから、微細なズレは放置しても問題はない(公式ガイドブック §6-5「MIDI検定2級2次試験の概要とポイント」p.242)。しかし念のため。

SMF読み込み再生時の注意点 (Studio One)

MIDI検定2級2次(実技)対策の一環で、Dominoを使って完成させたSMFを再び Studio One 3 Prime に読み込んで再生させる場合の注意点について述べる。以下の過去記事の補足を兼ねる。

daw-jones.hatenablog.com

Studio One 本体というよりもむしろ、ほとんどが内蔵音源の Presence XT の問題である。なお、一部は1級実技の制作とも無関係ではない。

システム・セットアップデータ

実は冒頭1小節目で送信されるシステム・セットアップデータはまったく反映されないようである*1。したがって、以下の2項目は、セットアップデータを参考にして別途手動で調整する必要がある:

  • ボリュームとパンは、ミキサーにて適当なレベルに調整する。ボリュームについては少なくとも音割れしないレベルまで下げる(マスター音量含む)。
  • ベンドレンジは、Presence XT の方で各トラック別に調整する(下例参照)。ピッチベンド・コントロールを使用しないトラックはデフォルトのまま追加調整は不要である。

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モジュレーションなどコントロール・チェンジの受信設定

Presence XT は、モジュレーション・ホイールの変調対象をユーザによる割り当て定義に委ねているが、デフォルト設定がないために、素の状態では何ら効力を発揮しない。したがって、ビブラート効果を出したい場合は、音色に応じてユーザによる追加のチューニングが必要になってくる。

具体的には、下例の通りに Presence XT のモジュレーション・マトリクスを設定してやり、CC#1 → Modulation Wheel → LFO 1 → Pitch という制御フローでゆらぎを与える。

ビブラートであれば常識的にはLFOの波形はサイン波が最適と思うが、レート(振幅周波数)は実際に音を聴きながら音色に応じて微調整するとよい。またスライダー(反応度合い)は必ず適度に右に振っておく。ただし、あまり右に振り過ぎると過剰効果で珍妙な音になるので、これについても再生結果を聴いて微調整する必要がある。

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以上はCC#1の例であるが、CC#11 Expression についても同様にしてモジュレーション・マトリクスの定義をしてやる(以下記事参照)。

daw-jones.hatenablog.com

ドラム・キットの選択

ドラムは特別な指定がない限りは、パーカッションも含め、Drum Kits より

  • Basic Kit
  • Classic Kit
  • Standard Kit

の3種からどれか一つを選択すればまず問題ない*2。少なくとも2級2次に関してはほとんどこれで通用すると思う。

逆に変わり種を選ぶと、GMパーカッション・マップに100%対応しているかどうか定かではないものがある。一方1級については、曲調に合わせてある程度自由に選んでもいいと思う。

もしどうしてもドラムの再生音が埋没して弱いと感じる場合は、音色重ね合わせの考え方を応用する。すなわち、同一のMIDIイベントを丸々コピーして追加のドラム・トラックを用意し、同じかまたは同系別音色のドラム音色で同時再生すると適度に厚みが増すことが多い。たとえば、Basic Kit のトラックとClassic Kit のトラックで同時再生するなど。

ミキシングとマスター編集

簡易コンプレッサーとイコライザー兼用の内臓エフェクターである Channel Strip は必要最低限の機能なので、各トラックごとに持ち上げたい周波数領域の若干の強調と不要な低域カットなどに使い方を絞る。

私が何回か試用した経験では、Channel Strip はマスターに対して適用しない方が無難である。マスター処理については、Studio One から書き出したミックスダウン(2ミックス)を、Tracktion(GarageBandでもよい)に読み込んで音圧レベル調整やコンプレッサーおよびエンハンサー処理をすればかなりクオリティが上がる*3

もともと Presence XT の音色は高音の抜けが悪くて音が曇った印象が強いので、少なくとも1級実技レベルであれば、他DAWを併用して最終的なマスター編集をやった方がよい。2級実技に関しては、もし本番で時間的余裕がなければそこまでやる必要はない。

*1:Prime版特有の機能制限かもしれないが詳細は不明。

*2:いずれもGM2パーカッション・サウンドセットの"Standard Set"とほぼ同系音色だが、よりリアルで生楽器に近い。スネアはやや固め。

*3:もちろん、このような使い分けをしなければならないのはPrime版特有の事情である。

2016年2月期練習曲No.1の演習

しばらく Studio One の試用・検証に集中していたため1ヶ月ほど間が空いたが、今回よりMIDI検定2級2次試験演習の続きを再開したい。残り未消化の練習曲は、2016年2月期および2017年2月期の練習曲各々4曲ずつ、計8曲である。なお、私が受験予定の2018年2月期練習曲4曲は本年末12月下旬頃に公表されるはずである。

今日は、2016年2月期練習曲セットから、練習曲No.1を取り上げて分析し、要点を整理する。

ドラム譜

音数は少なめで難しくない。一番注意すべきは、2連続タイ繋がりの所であろうか(下図参照)。以前にも書いた通り、ドラム譜のタイの場合、繋がり先の音符はデータ入力する必要がない。

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その他のミス誘発ポイントとしては、連符入力と(下例参照)、あと強いて挙げるならばキックの裏拍が多いのでノートオンのタイミング(休符の見落とし)に十分注意するといったところか。

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ベース

もうすっかりお馴染みのハンマリング・オンを多用している。本曲のベンドレンジは1オクターブ(12半音)設定であるから、1365に上げて落とすの繰り返しになっている(下例参照)。このハンマリングは同じパターンが続くため、ピッチベンド・コントロールは1箇所正確に入力したら、残りの箇所はそれをひたすらコピペするだけで済む。

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なお、ピッチベンドを上げるタイミングは、音符記載のタイミングにぴったり合わせる*1。本曲上例のような場合は、16分音符の単位でピッチを上げる位置決めをする(譜面に対応する下例イベントリストを参照)。ノート自体の入力は、ピッチベンドで上げる前の音程でまとめて単一の8分音符で入力し、なおかつゲートタイムは音価の95%程度とやや長めに取る(レガートの特殊例という感じで解釈する)。

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フルートとヴィブラフォン

フレーズは全体的に難しくはないが、強いて注目すべきはタイがやたら多い点だろうか。それに加え、フルートはレガートが2箇所あるのでゲートタイムの値には要注意である。フルート最終小節のレガートは、8分3連符と32分音符を含むのでやや難所か(下図参照)。連符といえば、ヴィブラフォンの14小節目には珍しく4分3連符が潜む。

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なお、本曲全体で使われるコントール・チェンジは、このフルート・パートに使われるCC#1 モジュレーション(ヴィブラート)しかないので、編集はかなり楽である。

エレピ

片手のコード・バッキングのみなので簡単な方だと思われる。ただし、スタッカートが点在しているため、うっかり見落とさないようにする。付点音符と紛らわしい(下例参照)。このパートはMIDIキーボードを使えば手弾きでサクッとステップ入力できるだろう(私は使わなかったが)。

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*1:2級1次試験のイベントリスト問題をヒントに若干訂正というか再確認した。

アナログシンセ復権の歴史的経緯など

前回記事との関連で、シンセサイザーに関する研究資料や報道記事などを漁っているうちに、近年のアナログシンセ復権の歴史的背景などを解説した良記事があったので、備忘録がてらここに紹介しておきたい。

daw-jones.hatenablog.com

 

2つあって両者とも内容は重なるのだが、アナログシンセの登場から衰退と復権を概観した記事・エッセイとして気軽に読めるだけでなく、ちょっとしたシンセ史の勉強にもなる。ヒップホップやダンス・ミュージック業界からの需要が大きく後押しした経緯や背景はよく理解できると思う。

junoosuga.com

www.redbullmusicacademy.jp

 

前者は3年ほど前に書かれた記事だが、

これまでのアナログリバイバルは「再評価〜ビンテージ機器のプレミア化」がメインだったが、今回は明確に「温故知新」、良さを再認識した上で、楽器としてのアナログシンセサイザーを新しい領域に進めようという潮流が生まれている

ソフトの飽和と新世代アナログシンセの躍進(第4回)

という状況は今も変わらず、昨年登場したArturia社のMatrixBruteはその一つの到達点でもあるように思える。

info.shimamura.co.jp

 

価格低下も含めたこうした電子楽器業界の動向は、ユーザとしてはワクワクする上に嬉しい限りだが、一方で供給サイドのビジネスをやる側にとって見れば、市場はほとんどレッドオーシャン化しているのではないかと要らぬ心配をしたくもなってくる。というのも、

  • ソフトシンセ(スマホタブレット上のアプリも含む)の台頭もあり、専用ハードウエア市場はこの先縮小することはあっても拡大する余地はあまりないであろうこと*1。最近ではRoland社の苦境(2014年のMBOを経て現在経営再建中)がそれを物語っているようにも見える。
  • そのソフト分野にしても、DAW含めてメーカーの参入が多いため、非常に競争が激しくまた差別化が難しくなってきているように感じる。その結果としての価格破壊はユーザにとっては皮肉にも恩寵ではあるが、メーカーにとっては地獄である*2

*1:少なくともDTMをやるのにハードとしてのシンセは音源ラック含めてまったく不要になった。プロもしくはライブ・パフォーマンスをやるアマチュア演奏家以外に需要はないのではなかろうか。

*2:DAWの先駆者でもあった Pro Tools の開発・発売元であるAvid社がリストラを繰り返すような惨状に陥っている様は、経営の巧拙もあれど、なかなか厳しい環境だと思わず嘆息する。

Synth1のチュートリアル動画

アナログシンセのプラグインについては、私は結局のところSynth1の一択で、それ以外はほとんど使わない状況である。フリーの制作環境という限定条件を付ければ、おそらく私同様のアマチュア初心者にとってはSynth1があれば必要十分だろうと思う*1

Synth1もそうだが、シンセは多様なプリセット音源から適当に自分の好みの音色を選んでそのまま使うことも可能ではある。しかし、シンセの醍醐味はやはり自分独自の音色編集加工であり、そのためにはある程度原理原則を習得しておかないと、手探りのままではまったく応用が利かず、進歩がない。

基本的なシンセ操作の学習に関しては、実際に音色を耳で聴いて確認し、手を動かして覚える必要があるため、読書というか書籍のみによるお勉強はほとんど意味をなさないであろう。そういう意味では、YouTube等の動画教材による学習が最適である。

Synth1の操作概要把握のためのチュートリアル

Synth1はソフトシンセの中では比較的歴史も古く、しかも日本製なので、日本語教材はネット上にも山のように転がっているが、使用バージョンが古いものも多い。

そこで、YouTube上に比較的新しいチュートリアルはないかと渉猟してみたところ*2、たまたま探し当てた以下のユーザ講座が簡潔明瞭でわかりやすかったので紹介しておきたい。これは全8回講座で、エフェクト以外の機能は一通り網羅されているから*3、少なくともSynth1の基本操作は概ね理解できると思う。昨年(2016年)7〜8月の公開なので一番新しい方である。

まだ再生リスト化されていないようだが、各回の動画ページから次回リンクを次々に辿っていけばよい。1回につき概ね15〜20分前後なので、集中して観れば2、3時間で全部消化できると思う。なお、第3回のADSRの説明はちょっと曖昧でわかりにくい面もあるように感じたので(DecayとSustainの関係がややぼやけている)、下記で紹介する別のチュートリアルで補強するとよいだろう。

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一般的なシンセの基本原理を学習するためのチュートリアル

とりあえずSynth1の基本操作だけを手早く習得したい場合は、上記のチュートリアルでほぼ十分だと思うが、もう少しシンセ一般の基本原理にまで遡って深く理解したい場合は、以下の動画チュートリアルがオススメである。こちらはプロの作曲家による14回講座である(最後の4回は特別編につき実質的には10回講座)。

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*1:それほどにクオリティが高いということ。なお、有償の高機能DAWであれば、今は大抵の製品に同じメーカーのシンセ・プラグインが同梱・内臓されているはずなので、とりあえずはそれで充足する可能性も高い。

*2:ニコ動にもいくつか代表的なものが上がっているが、あそこはわざわざユーザ登録とログインをしないと視聴できないので敬遠。

*3:エフェクトはコーラスとかディレイ等一般的な音響エフェクト処理と基本は変わりないので、Synth1の独自機能として学ぶ必要は特にない。