DAW悪戦苦闘記

DAWやMIDIを通じてちまちまとDTMを楽しむ記録+MIDI検定1級到達記

二大MOOCの比較雑感

下記記事でも紹介されている通り、大学発信の講座を中心としていわゆるMOOC (Massive Open Online Course) が昨今花盛りである。基本的に機械学習やプログラミングなどのSTEM系講座が圧倒的多数だが、音楽やその他アートなどの人文系講座も探せば結構たくさん見つかるようになってきている。

qz.com

MOOC業界では営利を目的としたスタートアップも国内外問わずに近年数多く進出している状況だが、クオリティやコース教材の豊富さという点では老舗に近い非営利系の Coursera(スタオンフォード大発)と edX(MIT+ハーバード大発)が2大サービスと言ってよい。英語さえ問題なければ、この2つでほぼ全領域をカバーできるのではないかと思う。

今年後半以降、個人的にこの2大サービスを頻繁に活用する体験を得たので、この辺で簡単な比較レビュー・メモを書いておくことにしたい。

コース領域

edX はIT関連のコースが Coursera よりもかなり充実しているように見受けられる。会計学等ビジネス系もかなり豊富である。MicrosoftIBM のスポンサー講座が提供されているため、個別のソフトウエアやプログラミング言語に焦点を絞った1ヶ月未満の短期講座が数多く、手軽に受講しやすい。この辺は edX の方がやや実利向けの趣が強いように感じる。

逆に Coursera は音楽含めて人文系の興味深いコースが意外に多く用意されている。標準ペースで3ヶ月程度のコースが多く、また講義スタイルもどちらかといえば大学のアカデミックな講義に近いものが多いように思う。Andrew Ng 先生の機械学習入門講義がその典型である。

daw-jones.hatenablog.com

モバイル・アプリなどのシステム

システムのUIはモバイル版含めて Coursera の方が完成度が高く、使い勝手も良い。Coursera のモバイル・アプリは割と頻繁に改善アップデートを繰り返しているが、edX の方は放置状態に近い。

edX のシステムはやや重い印象があり、IBM などのスポンサー講座はプログラミングLab用に別サイトに飛ばされることがよくある。ビデオ・レクチャーを視聴しても一回でチェック・マークが付かないことが多い(これは結構苛々させられる)。また、モバイル版ではビデオ・レクチャーや講義ノートなどの個別のマテリアルに対して進捗確認用のチェック・マークが付いていないのでどこまで進んだか判別しにくい。

これは言わずもがなだが、モバイル版に講義ビデオなどをオフライン視聴用にダウンロードする際は必ずWiFi環境で実行する。さもないとギガ不足に陥る可能性がある。

費用面

基本的には両サービス共にオーディット (audit) モード*1で受講すれば、一応は無償ですべてのコース・マテリアル(課題採点を含む)にアクセスできる講義が多い(全部ではない)。ただし、オーディットの場合は修了証は発行されない。逆に言うと修了証が不要であればオーディット・モードで受講しても特に差し支えないと思う。修了証は後日支払いを済ませば後追いで発行してもらうことも可能であるが、edX はその手続きができる有効期限がコース毎に決まっている。

非営利系とはいえ、最近の傾向として両サービス共に有償コース*2に力を入れており、オーディット・モードではお試し期間を除いてまったくアクセスできないか、もしくは課題採点の対象外になる講義が増えている。ちょっと変わったところでは、Coursera は月額サブスクリプションでチャージする形態があり、この場合は同じ有償コースでも早期修了すれば安く済むようになっている。だいたい月額5千円前後のコースが多いように思う*3

営利系サービスについて

営利系の代表格はたとえば Udacity であるが、こちらはごくごく一部のサンプル講座を除いて基本は有償コースのみの提供である。どちらかと言えば就職に直結した職業専門教育という実益重視の趣旨が色濃く、料金面でも Coursera や edX に比べればかなり高額である。その代わり、チューターによる課題採点や個別質問の対応などきめ細やかなサービスを受けられる。なので、興味本位で気軽に受けてみるというサービスではなくなっているように思われる(営利系すべてがそうというわけではないが)。

*1:本屋での立ち読みみたいなもので、当該コースが自分の興味と目的に合っているかどうかを確認するためのアクセス・モード。

*2:概ね半年以上のコース・セットで学位授与するもの。edX の MicroMasters など。

*3:私はまだ有償コースは試していない。機械学習プログラミングやファイナンスなどの特殊専門分野にこの手の有償コースが多い。