下記記事で始まった演習シリーズの最後を締めるレビュー総括と制作後の反省など。以下、順不同で備忘録的にまとめるが、特に2011年課題曲に限定されず1級課題曲制作全般について指摘できることだと思う。
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譜面はスキャンしてPDF化した方がいい
紙の譜面をデスクに置き、ディスプレイとの間で視線を上下移動させる行為は非常に疲れる上に、見落としリスクが飛躍的に高まる恐れがある。
ディスプレイの真横に併置できるような譜面台を使うという手もあろうが、ある程度以上の大画面ならば譜面をPDF化*1した上でDAWの編集画面と並べて打ち込んでいった方が効率良い。
ついでに言うなら2級2次(実技)の譜面もPDF化した方がいいと思われる。練習曲スコアから類推するに、2級はおそらくA4縦サイズで高々2ページなので、ぎりぎり紙ベースでも対応可能とは思うが、練習曲制作と同じスタイルで臨むことを考慮すればPDF化が望ましいだろう。
リズムの打ち込みは予想外に時間を要する
ポピュラー系統の楽曲は、ドラムを中心としたリズム・パートの打ち込みへの慣れと省力化が今後の課題となる。
繰り返しパターンが多用されるものの、完全一致の同一パターンは意外と少なく、細かいところで変化を交えたバリエーションが目立つ。そのため、不用心にコピペするとノートミスに気づかぬ恐れがある。これに加えて、フィルインやソロといった制作者任せのアドリブをも盛り込む必要があり、割と手間が掛かる。
制作に使うDAWは、いわゆるステップ入力機能を備えたものが有利である。Studio One にTracktion並みのステップ入力機能があれば一番理想的ではあるのだが。
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追記 (2018-10-23)
その後 Studio One はバージョン4にアップグレードし、リズムのステップ入力機能を搭載するようになった。これは無償のPrime版でも利用可能である。
トラック音量のダイナミックなバランス調整
各トラック・ボリュームは、ともすれば曲の頭から一定不変に保ったままとしがちであるが、パートによっては曲中である程度の変化をつける方がよい。言うまでもなく、他パートとの重なり具合によって相対的な音量が変化するからである(他パートとのバランスにより相対的に小さく聴こえなくなったり、逆に過大な印象を与えたりといった現象)。例えば、楽曲の各セクションごとに微調整した方がよい。
トラック単位でダイナミックにボリューム調整する方法としては、大別して以下の2方法がある:
- オートメーション機能を使ってボリュームを動かす。
- MIDIのコントロール・チェンジである Expression (CC#11) を調整する。
どちらでもよいが、書き出すSMFに反映させたい場合は当然後者の方法で実現する必要がある。ただし、Studio One 内蔵音源である Presence XT でExpressionを使うのであれば、各音色ごとにモジュレーション・マトリックスの定義を追加設定する必要があるため、やや面倒である。
私のやり方としては、Expressionは部分的な強弱記号の対応に留め、トラック・ボリューム全体に関しては素直にボリュームのオートメーションで実現する、といった使い分けをしている。
同一フレーズ箇所を上手く利用して省力化
ポピュラー楽曲は見かけ上かなり音数が多いが、パート(トラック)を横断してコピペで済むところがないかどうか、譜面をよく見て判断する。要はフレーズの使い回し具合をチェックし、コピペによる省力化に努めるということである。
例えば本曲の場合、ベースと同じフレーズ(オクターブ違いを含む)を他パートでも使い回すという箇所が非常に多かった。つまり、ベースを一番最初に入力してしまうと、後はそのコピペ編集で間に合う。管楽器系も同一フレーズの重複が多かったように思う。
ただし、これもリズムの打ち込み同様、微妙なバリエーションの相違には十分に注意を払う必要がある。1音だけ違っているなどの罠が多くある。
不協和音に慣れる
本曲では、後半最後の1/3に該当するクライマックスのセクションにおいて、管楽器系で不協和音を奏でるところが特徴的である。2016年課題曲でも不協和音が大きなモチーフに据えられており、1級課題曲は敢えて積極的に不協和音を盛り込む癖があるように思う。
他年度楽曲をまだ拝見していないので断言はできないが、作曲者固有のジャズっぽい手癖みたいなものであろうか。
マスタリングは低音処理が難所
過去に何度も自戒を込めて書いたことだが、特にポピュラー課題曲では低音の扱いが大事で、ベースとキックが埋もれてしまわないように注意する。この辺は経験上エキサイターで若干持ち上げる処理が必須と考えられる。
ただし、低音部は極端に持ち上げっぱなしでは音が曇ってモコモコ感が出てしまうため、イコライザーまたはハイパス・フィルターを使って50Hz以下等非常に低い周波数領域は若干カット気味にした方がよいかもしれない。本来は、全トラック毎に不要な高低域は思い切ってカットするなどして音が濁らないようにすべきだが、本番時間に限りがある1級課題曲制作では適度に割愛せざるを得ない。
この辺の塩梅というかバランスは、時間をおいて聴き直さないと自分ではなかなか気づかないところで、自主制作でも結構試行錯誤を要する工程ではある。