DAW悪戦苦闘記

DAWやMIDIを通じてちまちまとDTMを楽しむ記録+MIDI検定1級到達記

MIDI検定2級1次試験に合格

当初予定より1日早い本日、第19回(平成29年度)MIDI検定2級1次試験の合格者発表があり、協会ウェブサイトにて合格者受験番号が掲示された。同時に、私自身も想定通り合格したことを確認した次第である。

平成29年度MIDI検定2級1次試験 結果発表

言うまでもなく2級1次は2次試験チャレンジへの途中道程に過ぎず、達成感には乏しいものの、年の瀬を目前に一つ肩の荷が下りた気分にはなる。年明けからは本年度2次試験用の練習曲に取り組んで事前準備を整え、2月末の一番底冷えするであろう季節にいよいよ本番を迎える、といった予定である。

上記結果発表ページに記載の通り、今回2級1次試験の受験者総数は182名、うち合格者は139名であった。合格率は76.37%となり、これは新旧制度通して過去最高の結果である。知識問題は新傾向問題や引っ掛けなどがなく素直な出題が多かったこと、またイベントリスト問題は協会側の校正ミスで意図せざる別解(抜け穴)を招いたこと、などが要因と思われる。特に後者の影響は大きく、ある意味外れ値あるいは異常値と思った方がよい。若干混乱気味だったイベントリスト問題については、以下の記事も参考にされたい。

daw-jones.hatenablog.com

明るい話題としては、受験者総数が182名に上り、これは新制度に切り替わった2012年第14回以降で過去最高を更新したことである。おそらく2次試験受験者数についても、新制度になって以来初の100名超過で過去最高になる可能性が高いと予想される。

新制度になってからここ数年1次受験者数は概ね150名未満で伸び悩んでいたため、主催者も驚いたに違いないが、原因はよくわからない。このまま来年以降も増大を続けるかどうかはまったく未知数である。

iOS版GarageBandのチュートリアル精選

macOS版の GarageBand(以下GB)の操作体系は一般的なDAWと大差ないため、他メーカーのDAWユーザーであればあっさりと使いこなせるところまで行けると思う。しかし一方でiOS版は Touch Instrument という独自の演奏機能などが搭載されており、macOS版とは一味違った使い方・楽しみ方を少しばかりの時間を割いて習得する必要がある。

以下、iOS版GBのチュートリアル資料として情報があまり古くないものを備忘録的に選んで書き留めておくこととしたい。

Apple公式

操作に迷ったら立ち返るべきは公式サイトであるが、これはチュートリアルというよりもレファレンス・マニュアルとして利用することの方が多いだろう。

support.apple.com

実践講座

これは小品制作を通じて Touch Instrument の使い方やリージョン編集、ミックスダウンなどの基本操作が身につく実習講座である。

今年の最新版より古いバージョン(約2年前)を対象としているため細かいUIの違いはあるものの、基本操作は現行最新版とほぼ同じである。

動画実演付きなので独習教材として最適だと思う。私も本講座で一通りの操作は習得できた一人である。

pc.watch.impress.co.jp

蛇足ながらいくつか注意点を述べると、

  • 譜例は提示されるが、必ずしもその通りに演奏しなくてもよい。Touch Instrument はコードやスケールのヘルパー機能が充実しているので、適当にタップしてもそれなりのフレーズに仕上げることはできる。
  • ドラムのタップ演奏が面倒ならば、お手軽なDrummer機能に頼って自動生成させてもよい。DrummerはmacOS版とおそらく同じものが搭載されている。
  • どうしてもリアルタイム演奏が難しい場合はMIDI打ち込みにしてもよいと思う。ただし、白紙の状態から打ち込む場合はmacOS版でのMIDI編集を先に済ませる必要がある*1
  • ソング・ファイルはiCloud上の GarageBand フォルダに自動的に保存されるので、後からmacOS版に変換インポート*2して開いて編集することもできる。MIDIリージョンの編集はiPad/iPhoneではちょっとしんどい。

使用感として一番印象的なことは、ギター演奏のシミュレーションにもってこいではないか、ということである。アコギとエレキ問わず結構リアルだと思う。基本的なアルペジオやストラム奏法にも対応しているので、ギター素人には強力な助っ人である。スケールやコード・ヘルパーに依拠すれば、それほど精密な演奏ができなくとも、なんとなくプロっぽい感じにはなる。

無償アプリでここまでスケールとコードのヘルパー的な機能が充実しているのであれば、正直 Waveform は要らないのではないかという気がしてきた。

最新講座

以下は、最近 Sleepfreaks で始まったばかりのiOS版GB講座である。各回とも一つの基本機能に絞ったレクチャーで段階的に進行しているため、詰め込み過剰に陥ることなく初心者には優しい。

sleepfreaks-dtm.com

ちなみにmacOS版についてはすでに連載完了した講座が上がっているのだが、少々バージョンが古いのが玉に瑕である。

sleepfreaks-dtm.com

今後は、上記実践講座では触れていない(というか当時は機能がまだ備わっていなかった) Live Loops や Beat Sequencer といったEDM寄りの講座に期待したい。

*1:iOS版は Touch Instrument 演奏によるリアルタイム録音ありきのシステムとなっているため。

*2:iOS版とmacOS版の.bandファイルは完全な互換性があるわけではないため、iOS版のファイルをmacOS版に読み込む際には自動変換処理を間に挟み、別個のファイルとして保存するようである。

GarageBand補記: マスター処理

GarageBand(以下GB)を使った制作におけるマスター処理について、以下の過去記事に対する補足訂正を兼ねて書き足しておきたい。

daw-jones.hatenablog.com

上記記事で、GBのマスター処理は意外に難しい、というような苦言を書いてしまったのだが、下図に掲示したマスター処理用のエフェクト*1を上手く使いこなせば、少なくとも第1段階の編集処理としては割とクオリティが高い結果を得られるようである。

f:id:daw_jones:20171210164844p:plain

  1. Squeeze: 低音強調用のコンプレッサー(低域だけをターゲットとしたマルチバンド・コンプレッサーみたいなものか)。低域が足りない場合はこれをオンにして右に回すとよい。ただし、あまり掛け過ぎるとモコモコしたサウンドになるリスクがある。私は極力使わないようにしている。
  2. Bright: 高音強調用のエキサイター。曇ったサウンドに対し、高域を立たせて張りを持たせる。これ一つで結構いい感じに仕上がるため、非常に重宝すると思う。
  3. EQ: パラメトリックイコライザー。幸いGBの個々の楽器音はそれ自体非常に音質がよく、事前にパンやEQ処理が適度に施されているため、マスター段階で大幅にEQをいじる必要性は私自身はあまり感じられない(もちろん楽曲による)。ここは微調整でも十分かと思う。
  4. Compression: 文字通りのコンプレッサー。楽曲にもよるが、他DAWやLANDRなどによる後処理を想定しているのであれば、控えめにしておいた方がよい。機能的には以下のリミッターとやや重複する。
  5. Limiter: リミッター。主に音割れ防止目的で適当に上げておく。なお、マスター音量は-7〜-8dB程度に下げておいた方が無難である(再生時にマスター・ボリュームで黄色や赤色のメーター表示が出ない程度には下げておく)。これだけ下げておいても、2ミックス書き出し処理では音圧高めに書き出されるようであり、結果的に音圧が低い方へ振れる心配はないと思われる*2

これも意外と言っては上級者に怒られそうだが、マスター処理結果の音質はかなり良い方だと思う。キックなども埋没することなく際立っており、率直に言って Studio One 3.5 Prime版(以下S3)よりクオリティは高いと感じる。

GBは、付属のサウンド・ライブラリでシンセ等今風の音色が数多く揃っており、また一部のAUプラグインも使えるため、EDMなどの制作はS3よりも圧倒的に有利であろう。Drummer機能の援用によりリズムの構築も容易であるから、生産性は非常に高い。

言葉だけで説明してもピンとこないだろうから、お恥ずかしながら実例を示しておきたい。以下はほぼGBの音源音色のみを使ってみた試作品の一例である(ループ素材は不使用)。補助的な2音以外は、リズム含めてすべてGBのシンセ音色であり、軽微な最終マスター処理は Tracktion 6 で実行したものの、実態はほとんどGBの書き出し結果そのものである。拙いながらもGBの潜在力をそこそこ理解できるかと思う。正直S3だけではここまでの制作は無理である。

soundcloud.com

*1:使用する付属のプラグインによって操作パラメータは変わってくるので、あくまで一つの典型例として示す。

*2:メニューより 環境設定 > 詳細 を開くと、「自動ノーマライズ」の項目があり、これをティックしてONにする。デフォルトではONになっている。

MIDI検定2級1次試験を受験

本日、第19回MIDI検定2級1次試験(筆記)を無事に受験終了した。

私は1次2次とも半年ほど前に一旦試験対策を終えてしまったため、直前期は知識問題の復習を兼ねて、試験1週間前に過去問の最後の見直しをやったぐらいであるが、この過去問復習は案外有効であったように思う。

daw-jones.hatenablog.com

以下、知識問題とイベントリスト問題に分けて、今回試験の所感を簡単に記しておきたい。

なお、2週間後の16日に協会ウエブサイトにて合格者の受験番号が掲示され、同時に今回の問題と解答が公表されるはずである。その際には問題および解答のリンクをここにも追記しておく。

追記 (2017-12-05)

昨日12月4日に今回試験の問題と解答が公表されたので、以下にリンクを掲載します(いずれもPDF):

知識問題

相変わらず同工異曲の問題が多く、また出題形式に大きな変更はなかったが、いくつか従来見られなかった新出項目があった:

ただし、全体としての難易度に変化はなく、知識問題に関しては満点取れた受験者も多かったのではないか。

イベントリスト問題

今回は、新傾向問題や割とひねった問題が出されたため、例年よりやや難化した印象がある。私も焦ってしまい、これは1問か2問落としても仕方ないかと諦めかかっていたが、制限時間一杯粘ってなんとか解答に漕ぎ着けた次第である。

もっとも、知識問題で大きく減点しなければ、最悪イベントリスト問題を2問落としたとしても合格レベルには到達できるが。

なお、以下は私の思い込み違いで解答が間違っている可能性があるため、正答公表時にまた改めて追記します。

追記 (2017-12-05)

協会発表の上記模範解答と照合した結果、正答はいずれも以下の通りで間違いがないことを確認した。なお、(1)と(3)については別解もOKとのことで、それについても以下に補記しました。

(1) 楽譜1

4つものノート(16分+8分+4分+8分)が繋がっているタイの箇所(9)が誤っていると思われる。ゲートタイムが短い。

このスコアはいわゆる3拍子だが、拍子記号が3/4であり1拍が4分音符相当なので、ゲートタイムは4/4と同様の解釈でチェックできる。

追記 (2017-12-05)

別解として、42、43または44も許されるようだが、拍(Beat)の数字が3ではなく4になっているためである。これは明らかに校正ミス・ミスプリだと思われる。上で述べたように、3拍子のスコアなのでこのようなミスが紛れ込んだようだ(策士策に溺れる、か...)。

(2) 楽譜2

音程をほぼすべてピッチベンド・コントロールで表現するというこれまでになかったスコア形式である。ピッチベンドレンジを12として、1半音(683)、2半音(1365)および3半音(2048)を表現する。実制作を通してピッチベンド・コントロールをある程度使い慣れていないとちょっと面食らう。

調性が F Major であり、Bにフラットが付いていることに注意する。このフラット見落としに起因して、A#2(=Bb2)からA2への1半音変化を誤って2半音としている箇所がある(17)。

(3) 楽譜3

トリル表現が初出題された。しかも拍子記号が3/8であって、否が応でもタイミングのティック値やゲートタイムに神経を使わざるを得ない。

しかしながら、実はトリルは単なる目眩しで、ベロシティがミスの根源だという拍子抜けする結果だった。これまで見た中で一番性格の悪い問題だろうと思う。

トリル過程からトリル後の最後のノートにかけて強弱記号がpからpppに漸減するのだが、その最後のノートのベロシティがpの強さに戻ってしまっている(38)。

考えてみれば、トリル過程でゲートタイムなどをミスっておれば、それ以降のノートもズレてしまって全滅になるので、そういうミスはないという目星は付く。

追記 (2017-12-05)

別解として13も許される。小節番号(Measure)が28ではなく27になっているためだが、これも(1)同様に明らかに校正ミス・ミスプリだろうと思う。いずれにせよ、トリルはまったく無関係。

(4) 楽譜4

本問だけは従来型のオーソドックスなピッチミス(17)を問う。ナチュラル記号を見落とさなければすぐに気づくと思う。

ちなみに、臨時記号の小節内有効というルールを踏まえれば、このナチュラルは本来は不要であるにもかかわらず、親切にも(?)わざわざ付けてくれている。実務上紛らわしい場合は敢えて付ける時もあるようで、1級課題曲スコアでも似たような譜例を目にしたことがある。

MIDI検定2級1次直前: MIDIメッセージ構造の丸暗記再確認

来たる12月3日に迫った第19回MIDI検定2級1次試験であるが、直前最後の追い込みとしてMIDIメッセージ構造の再復習をしておきたい(少々マニアックです)。

2級1次の知識問題を大別すると、MIDIメッセージの構成・構造に関する問題と、それ以外の音楽制作一般に関連する問題(DAWやシンセの基本、楽典基礎および著作権に関連する問題)に2分できる。このうち後者はほとんど常識レベルだと思うが、前者のMIDI関連だけはたとえ制作経験者であったとしても改めて覚え込む必要があることが多く、しかも結構ややこしい。率直に言ってDAWを使った実務で意識するケースは今日稀なため、試験のためと割り切って丸暗記するしかないだろう。

幸い毎回出題される箇所はほぼ一定であるから、概ね以下の項目を頭に入れておけば十分とは思う*1

バイト単位メッセージと送信プロトコル

メッセージはすべて1バイト単位で定義される。入れ物としてのデータ形式は概略下記の通り:

  • MIDIメッセージ = ステータス・バイト + データ・バイト1 (+ データ・バイト2)
  • ステータス・バイト: MSB(先頭ビット) = 1
  • データ・バイト: MSB(先頭ビット) = 0

送信方法

メッセージ・データは非同期シリアル転送方式で送信される。したがって、上記各データ・バイトの塊は、実際には前後に1ビットずつスタート・ビットとストップ・ビットが付いて合計10ビット単位で送信されることになる。

転送速度は、31.25kbpsと決まっている。

ランニング・ステータス

同一ステータス・バイトが連続する場合は、2つ目以降のステータス・バイトを省略して転送データ量を軽減できる。

メッセージの種類と構成

 MIDIメッセージは、その機能により以下の2種に分類される:

  • チャネル・メッセージ: チャネル(トラック)毎の制御メッセージ。
  • システム・メッセージ: チャネル横断的なシステム全般に関わる制御メッセージ。

チャネル・メッセージ

これはさらに、チャネル・ボイス・メッセージとチャネル・モード・メッセージ2分される。

ボイス・メッセージ

具体的な演奏表現に関わるデータで、DAWにて編集操作するMIDIデータはほぼこれに尽きる。具体的には*2

  • ノートオフ (8nH)
  • ノートオン (9nH)
  • コントロール・チェンジ (BnH)
  • プログラム・チェンジ (CnH)
  • ピッチベンド・チェンジ (EnH)

が代表例(これだけ覚えておけば十分でしょう)。ちなみに3級はここの中身を中心に出題される(特にコントロール・チェンジ)。

モード・メッセージ

非常にざっくり言えば、各チャネルの状態を定義するセットアップ用のメッセージ (ステータス・バイトは、コントロール・チェンジと同じBnH)。初期化リセットなどに用いられるが、オール・ノート・オフとオール・サウンド・オフが頻出項目。CC#64(ホールド1)が適用されている時に発音を一切止めたい場合は、後者のオール・サウンド・オフを送信する。

もう一つの頻出項目は、いわゆるMIDIモードの定義で、オムニオン・オフとポリ・モノの組み合わせによりモード1から4まで4種類設定できる。オムニモードはMIDIチャネルを一切無視して受信・発音させる設定だが、今日使用することはまずないと思われる。

システム・メッセージ

これについては、以下の過去記事で一度簡単にまとめたことがある。

daw-jones.hatenablog.com

頻出項目としては、

  • SysExのデータ形式は、F0H + メーカーID + データ + ... + データ + F7H (=EOX)
  • ユニバーサルSysEx: メーカーIDが7D(非営利)、7E(ノンリアルタイム)あるいは7F(リアルタイム)となる特殊ケースで、メーカーに依存しない汎用データの送信に用いる。
  • コモン・メッセージ (F1H〜F7H): よく出るのは、MTC(MIDI Time Code)クォーター・フレーム・メッセージ (F1H) と、ソング・ポジショニング (F2H)の2つ(これ以外は覚えなくてもいいだろう)。前者は、SMPTE同様の絶対時間管理に基づく同期信号で、時分秒フレームの時間情報データを扱う。後から追加で仕様が足された部分。
  • リアルタイム・メッセージ (F8H〜FFH): タイミング・クロック (F8H) を押さえておけば十分。これはMIDI機器間の同期に用いられるMIDI本来の同期信号。絶対時間に基づかないため、曲の途中からの同期は上記コモン・メッセージのソング・ポジショニング (F2H) と組み合わせる。4分音符あたりの分解能は24クロックとされる(DAWの分解能TPQNとは無関係)。

*1:公式ガイドブックの Chap. 3-4, 3-5 (pp.112-129) の範囲。

*2:カッコ内はステータス・バイト16進数表記で、"n"はチャネル番号(0〜F)に該当する。

無償DAWの3種3様使い分けについて

前回記事の一環でもあるが、LANDRを使ったマスター処理に到るまでの制作プロセスで、Studio One 3.5 Prime版 と Tracktion 6 および GarageBand という無償DAWのコンボを使い倒す機会があったので、使い分けに関する個人的な気づきなどをまとめておきたいと思う。もちろんこれが唯一の正解だと主張するつもりはなく、あくまで使用ケースの一例としてご参考までに。

daw-jones.hatenablog.com

Studio One (Prime)

楽曲の骨格や全体構成を配置決定し、メインとなるMIDIやオーディオ編集を担わせる。2ミックスの仮作成までは対応可能と思われる。

良いところ

MIDIとオーディオ編集のUIは飛び抜けて使い勝手が良く、生産性が高いと思う。システムの挙動が軽快なため操作上のストレスが少なく、短時間で楽曲の全体像を組み上げることができる。

また、ソングやステムの書き出し処理が充実しており、処理速度が速い。音割れクリップの警告も出してくれる。なので、Tracktion等他DAWを使った再ミックスや最終マスター処理と連携しやすい。

良くないところ

Prime版は外部プラグインを一切使えず、また利用できる内蔵エフェクトや音源音色に限りがあるため、あくまで骨格部分の制作に留め、細かな味付けは別のDAWに任せた方がよい。

残念ながらミックスダウン結果はどうしてもキックやベース類が埋没する傾向にある。したがって、他DAWでオーディオ加工または新たに作った音色トラックをインポートすることで補強するか、ステム出力して別のDAWミックスダウンをやり直すなどの方策が必要となる。

GarageBand

iOS版はまだ十分試していないのでmacOS版について記す。基本的にはシンセ音源とリズムの追加補強に使える。特にリズムの手っ取り早い構築に有用だと思う。真骨頂のループ素材を使うかどうかは好みによりけりだろう(アイデア素案段階では使えるかも)。

なお蛇足ながら、一旦GarageBandの使い方に慣れておけば、UIや操作体系がほぼ共通である上位版 Logic Pro X へスムーズに移行できる点は、初心者にとって見逃せないアピール・ポイントだと思う。

良いところ

音源音色選択のUIはわかりやすく、音色の確認も容易である。ライブラリのシンセ音色はそこそこ充実していて、ある程度の音色加工編集は可能である。アルペジオ再生も対応している。

Drummer機能のおかげで、リズムは楽曲構成(アレンジメント・トラック)に合わせて自動生成してくれるため(MIDIではなくオーディオとして)、煮詰まった場合はこれに頼ることもできる。とりあえずのデモ作成用途でも重宝するのではなかろうか。

無償DAWにもかかわらず、AU (Audio Units) プラグイン追加に対応している点は非常にアドバンテージが高い。これは Studio One Prime版よりも有利なところである。LoudMax等お気に入りのエフェクター類を使えるため、よほどトラック数が多い場合を除き、GarageBand一本でマスター処理までやろうと思えばできてしまう。

良くないところ

MIDI編集の容易さは Studio One と Tracktion の中間ぐらい。あまり複雑で長いフレーズの打ち込みには適していないように思う*1

複雑なフレーズは Studio One (Prime) で仮音色にて一元的に編集管理し、SMFを書き出して GarageBand にインポートするのも一法。逆に GarageBand からMIDIデータのエクスポートができないのは頭が痛い点の一つである。

またミキサー・コンソール・ビューがないため、トラック数が非常に多い場合はミックスやマスター編集が困難となる(時もある)。

Tracktion 6

最終的なミックスダウンとマスター編集で使う。場合によっては、音色を追加することもある。

良いところ

プラグイン対応なので、自分好みのエフェクト類を様々組み合わせて加工編集できる。エフェクトの追加削除や、挿入位置の変更をドラッグ&ドロップで素早く操作できる。

書き出しフォーマットは圧縮/非圧縮双方とも種々可能。処理速度は比較的速いため、試行錯誤のストレスが少ない方だと思う。

良くないところ

MIDI編集画面の使い勝手が悪い。グリッドの見づらさもさることながら(この点はGarageBandも大差ない)、各MIDIクリップの編集画面とトラック全体の横スクロールおよび拡大縮小操作が連動しているため、編集途上で投げ出したくなるほどにストレスフルである*2

なので、キックとベースなどの簡単な補強を除き、個人的には Tracktion 上でがっつりとMIDIデータを打ち込むことは極力回避している。ある程度のフレーズを伴うMIDIデータは、Studio One 側で作成したものをSMFインポートで取り込んでしまう方が結果として効率良い。

また、GarageBand同様にミキサー・コンソール・ビューが備わっていないため、トラック数が非常に多くなると、ミックスダウン編集はとてもやり辛くなる*3

*1:iOS版では Touch Instrument を使った演奏録音入力のみ対応(後からタッチパネルでMIDIリージョンを編集することは可能)。macOS版でもリアルタイム入力以外はちょっとしんどいかもしれない。本格的な打ち込み編集には上位版の Logic Pro X 導入が必須であろう。

*2:MIDI編集のUIに関しては、次世代版 Waveform で Studio One 並みに改良されている模様。

*3:Waveformではミキサー・コンソール・ビューが機能追加済みである。

リニューアル版LANDRの試用感

LANDR主催のリミックス・コンテストに練習がてら参加してみたのだが、その際にLANDRを使ったマスタリングを試す機会があった。これが意外なほど仕上がり結果が良かったので、過去記事への訂正も兼ねて紹介しておきたい。

daw-jones.hatenablog.com

実は今年の3月に、リニューアル前のLANDRを試してみたのだが、ド素人の無知ゆえか、個人的にはあまりピンと来ずに辛口の感想を書いた経緯がある。

daw-jones.hatenablog.com

しかし今回はグレードアップ後の新エンジンに切り替わったこともあり、かなり満足度の高い結果を得ることができた。私のようなマスタリングの腕に自信がない人ほどオススメだと思う*1

sleepfreaks-dtm.com

ちなみに今回試したのは無料プラン*2の範囲内で、MP3 (192kbps) の圧縮音源であったが、それでもマスター成果物の音質は全然悪くなかったように感じる。音圧アップはもとより、全体的に各構成音の粒立ちが良くなってクリアな仕上がりになった印象が強い。

前回試した時にはあまり理解していなかったが、LANDRで効果的なマスター結果を得るためにはオリジナル音源自体にそれなりのコツが必要のようで、具体的には以下の2点に要注意と思われる:

  • 過剰にコンプレッサーを掛けないでおくこと。
  • 音圧低め(たとえば-7〜-8dBぐらいでもよい)で処理しておくこと。どのみちLANDRで相当音圧アップされる*3ので、そのためのヘッドルームをある程度見込んでおく。逆にオリジナル音源が音圧高いままだと、音割れ劣化の恐れがある。

*1:ドラムとベースを伴うポピュラー楽曲は特に。一方でダイナミックレンジ重視のクラシック系楽曲では使う必要性を感じない。

*2:現在のところ、MP3 (192kbps) の音源を月2回までマスター処理可能。言うまでもなく本条件は将来的に変更される可能性あり。

*3:アップの程度は高中低の3種から選択できる。私は今回低および中程度を試してみた。オリジナル音源がよほど低音圧の作品でもない限りは低または中程度が無難。音圧アップはやや過剰気味なので、楽曲によっては相応しくない可能性がある。