DAW悪戦苦闘記

DAWやMIDIを通じてちまちまとDTMを楽しむ記録+MIDI検定1級到達記

リニューアル版LANDRの試用感

LANDR主催のリミックス・コンテストに練習がてら参加してみたのだが、その際にLANDRを使ったマスタリングを試す機会があった。これが意外なほど仕上がり結果が良かったので、過去記事への訂正も兼ねて紹介しておきたい。

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実は今年の3月に、リニューアル前のLANDRを試してみたのだが、ド素人の無知ゆえか、個人的にはあまりピンと来ずに辛口の感想を書いた経緯がある。

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しかし今回はグレードアップ後の新エンジンに切り替わったこともあり、かなり満足度の高い結果を得ることができた。私のようなマスタリングの腕に自信がない人ほどオススメだと思う*1

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ちなみに今回試したのは無料プラン*2の範囲内で、MP3 (192kbps) の圧縮音源であったが、それでもマスター成果物の音質は全然悪くなかったように感じる。音圧アップはもとより、全体的に各構成音の粒立ちが良くなってクリアな仕上がりになった印象が強い。

前回試した時にはあまり理解していなかったが、LANDRで効果的なマスター結果を得るためにはオリジナル音源自体にそれなりのコツが必要のようで、具体的には以下の2点に要注意と思われる:

  • 過剰にコンプレッサーを掛けないでおくこと。
  • 音圧低め(たとえば-7〜-8dBぐらいでもよい)で処理しておくこと。どのみちLANDRで相当音圧アップされる*3ので、そのためのヘッドルームをある程度見込んでおく。逆にオリジナル音源が音圧高いままだと、音割れ劣化の恐れがある。

*1:ドラムとベースを伴うポピュラー楽曲は特に。一方でダイナミックレンジ重視のクラシック系楽曲では使う必要性を感じない。

*2:現在のところ、MP3 (192kbps) の音源を月2回までマスター処理可能。言うまでもなく本条件は将来的に変更される可能性あり。

*3:アップの程度は高中低の3種から選択できる。私は今回低および中程度を試してみた。オリジナル音源がよほど低音圧の作品でもない限りは低または中程度が無難。音圧アップはやや過剰気味なので、楽曲によっては相応しくない可能性がある。

SONARが開発生産中止に

掲題の件、昨日DTM界隈で大きな話題になっていたので一応備忘録として書き留めておく。

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私の世代だとCakewalkと言えば否が応でもRolandを想起する。確か大昔の90年代後期にミュージ郎パックを買った際、Cakewalk Express (?) と Singer Song Writer (以下SSW) 簡易版がおまけでバンドルされていたように思う(この辺の記憶は曖昧)。なぜ2種類の似たようなソフトが入っているのか、当時はまったく理解も区別もできずに戸惑ってしまい、案の定まったく使いこなせず埃を被ったままお陀仏となった苦い記憶が蘇る。

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その後、Cakewalkをメインに据えたRolandから切り捨てられた格好のSSWがABILITYに姿を変えて今日まで生き残った現状は皮肉と言えば皮肉である。親元だったRolandが経営難で元気がない状態を思えばなおさらのことだ。

上述のミュージ郎効果もあってか、SONARはとりわけ日本人ユーザが多いと聞く。MIDI検定の公式ガイドブックにおいても、MIDIデータの扱いに関してSONARに一節割かれているほどである(p.218)。もっとも、旧レコンポーザー張りの打ち込み文化を継承したABILITYの方がMIDI検定との親和性が高い。

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SONARの製品生命終了とともに同ユーザによる他DAWへの移行が取り沙汰されるが(他メーカにとっては絶好の草刈場だろう)、軽快で使い勝手が良く、プロ版でも価格が割と手頃な Studio One に乗り換え人気が集中するかもしれない。現在国内ではCubaseユーザが最大多数と推測されるが*1、栄枯盛衰の激しい業界ゆえ、将来的には Studio One がシェア逆転する可能性すらあるのではないか。

追記 (2018-04-07)

その後、シンガポールのBandLab社に買収されてまさかの復活となった模様である。Studio One や Tracktion/Waveform 同様に、無償版で間口を広げておいて後から有償プロ版へ誘導するというビジネスモデルのようである。Windowsユーザは Studio One Prime版と並ぶ選択肢ができて朗報ではなかろうか。

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*1:DTMステーション」のネットアンケート調査による(厳密な市場調査ではないのであくまで参考値)。ちなみにSONARユーザ数も上位にあることが窺える。

意外に侮れぬGarageBand

GarageBandは、どうせ Logic Pro X の劣化版オモチャで使い物にならんだろうと勝手に思い込んでいたせいで、DAWとしてはまったくのノーマークだったが、下記記事でも解説されている通り、今月頭に追加のサウンド・ライブラリ含めて完全無償化されたついでにちょっと試してみたところ、期待以上に使えそうな代物だったので懺悔中の私である。灯台下暗しとは正にこのこと。

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大昔の旧版のイメージでは、もともとループ素材を組み合わせて制作する(遊ぶ)ことしかできないと思っていたが、MIDIの打ち込みなど結構細かいところまでサポートされているようなので、自主制作のみならずMIDI検定1級の2次審査対策にも使えるかもしれない。

実はmacOS版よりもiOS版の方が上等な機能が多く、タッチパネルを活かしたバーチャル楽器演奏や、リズム打ち込みに威力を発揮するビートシーケンサー、コードヘルパー的な機能などかなり充実しているように見受ける。この辺は新機能含めて後日試用検証したいと思う。

ちょっと驚いたのは、楽器音源の音質がかなり良いことで、特にシンセはモダンなEDMにも十分対応可能な品質だと思う。これは正直言って Studio One  (Prime版) 内蔵音源の Presence XT シンセ音源より数段良い*1

大きな機能制約としては、MIDI書き出しがサポートされていない点ぐらいか。サードパーティー製のユーティリティ・ソフトなどを組み合わせてハックする手はあるらしいが、ハードルが高い。その逆に外部MIDIデータのインポートは簡単にできる。なので、MIDIの打ち込み制作自体は使い勝手の良い Studio One を使う等の役割分担をやってもよい。

また、トラックごとのステム書き出し機能はないが、楽曲全体をWAVやAIFFでの非圧縮フォーマットで書き出すことは可能のようだ。リミックス制作には案外使えるかもしれない。

基本的に Logic Pro X と共通のUIであるため、GarageBandを使いこなせるようになれば、プロ仕様DAWへの乗り換え移行は Logic Pro X が一番スムーズだろう。個人的に Studio One Professional版 への移行を考えていたところであったが、リーズナブルな価格といい、Macユーザとしては Logic Pro X が順当だろうか。非常に悩ましいのだが、しかし Studio One Prime版 と Tracktion 6、そしてGarageBandの無償DAWトリオを使えるとすれば、もはや有償のプロ仕様DAWは不要(少なくとも趣味の範囲内では)、とすら思う今日この頃である。

*1:Presence XT の生楽器音源はそこそこ良質と思うが、シンセ音色は古色蒼然としていてほとんど使い物にならない印象がある。無償Prime版の制約かもしれないが、Professional版も大差ないのだろうか。

MIDI検定1級演習 2011年課題曲 (12) 全体総括など

下記記事で始まった演習シリーズの最後を締めるレビュー総括と制作後の反省など。以下、順不同で備忘録的にまとめるが、特に2011年課題曲に限定されず1級課題曲制作全般について指摘できることだと思う。

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譜面はスキャンしてPDF化した方がいい

紙の譜面をデスクに置き、ディスプレイとの間で視線を上下移動させる行為は非常に疲れる上に、見落としリスクが飛躍的に高まる恐れがある。

ディスプレイの真横に併置できるような譜面台を使うという手もあろうが、ある程度以上の大画面ならば譜面をPDF化*1した上でDAWの編集画面と並べて打ち込んでいった方が効率良い。

ついでに言うなら2級2次(実技)の譜面もPDF化した方がいいと思われる。練習曲スコアから類推するに、2級はおそらくA4縦サイズで高々2ページなので、ぎりぎり紙ベースでも対応可能とは思うが、練習曲制作と同じスタイルで臨むことを考慮すればPDF化が望ましいだろう。

リズムの打ち込みは予想外に時間を要する

ポピュラー系統の楽曲は、ドラムを中心としたリズム・パートの打ち込みへの慣れと省力化が今後の課題となる。

繰り返しパターンが多用されるものの、完全一致の同一パターンは意外と少なく、細かいところで変化を交えたバリエーションが目立つ。そのため、不用心にコピペするとノートミスに気づかぬ恐れがある。これに加えて、フィルインやソロといった制作者任せのアドリブをも盛り込む必要があり、割と手間が掛かる。

制作に使うDAWは、いわゆるステップ入力機能を備えたものが有利である。Studio One にTracktion並みのステップ入力機能があれば一番理想的ではあるのだが。

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追記 (2018-10-23)

その後 Studio One はバージョン4にアップグレードし、リズムのステップ入力機能を搭載するようになった。これは無償のPrime版でも利用可能である。

トラック音量のダイナミックなバランス調整

各トラック・ボリュームは、ともすれば曲の頭から一定不変に保ったままとしがちであるが、パートによっては曲中である程度の変化をつける方がよい。言うまでもなく、他パートとの重なり具合によって相対的な音量が変化するからである(他パートとのバランスにより相対的に小さく聴こえなくなったり、逆に過大な印象を与えたりといった現象)。例えば、楽曲の各セクションごとに微調整した方がよい。

トラック単位でダイナミックにボリューム調整する方法としては、大別して以下の2方法がある:

  • オートメーション機能を使ってボリュームを動かす。
  • MIDIのコントロール・チェンジである Expression (CC#11) を調整する。

どちらでもよいが、書き出すSMFに反映させたい場合は当然後者の方法で実現する必要がある。ただし、Studio One 内蔵音源である Presence XT でExpressionを使うのであれば、各音色ごとにモジュレーション・マトリックスの定義を追加設定する必要があるため、やや面倒である。

私のやり方としては、Expressionは部分的な強弱記号の対応に留め、トラック・ボリューム全体に関しては素直にボリュームのオートメーションで実現する、といった使い分けをしている。

同一フレーズ箇所を上手く利用して省力化

ポピュラー楽曲は見かけ上かなり音数が多いが、パート(トラック)を横断してコピペで済むところがないかどうか、譜面をよく見て判断する。要はフレーズの使い回し具合をチェックし、コピペによる省力化に努めるということである。

例えば本曲の場合、ベースと同じフレーズ(オクターブ違いを含む)を他パートでも使い回すという箇所が非常に多かった。つまり、ベースを一番最初に入力してしまうと、後はそのコピペ編集で間に合う。管楽器系も同一フレーズの重複が多かったように思う。 

ただし、これもリズムの打ち込み同様、微妙なバリエーションの相違には十分に注意を払う必要がある。1音だけ違っているなどの罠が多くある。

不協和音に慣れる

本曲では、後半最後の1/3に該当するクライマックスのセクションにおいて、管楽器系で不協和音を奏でるところが特徴的である。2016年課題曲でも不協和音が大きなモチーフに据えられており、1級課題曲は敢えて積極的に不協和音を盛り込む癖があるように思う。

他年度楽曲をまだ拝見していないので断言はできないが、作曲者固有のジャズっぽい手癖みたいなものであろうか。

マスタリングは低音処理が難所

過去に何度も自戒を込めて書いたことだが、特にポピュラー課題曲では低音の扱いが大事で、ベースとキックが埋もれてしまわないように注意する。この辺は経験上エキサイターで若干持ち上げる処理が必須と考えられる。

ただし、低音部は極端に持ち上げっぱなしでは音が曇ってモコモコ感が出てしまうため、イコライザーまたはハイパス・フィルターを使って50Hz以下等非常に低い周波数領域は若干カット気味にした方がよいかもしれない。本来は、全トラック毎に不要な高低域は思い切ってカットするなどして音が濁らないようにすべきだが、本番時間に限りがある1級課題曲制作では適度に割愛せざるを得ない。

この辺の塩梅というかバランスは、時間をおいて聴き直さないと自分ではなかなか気づかないところで、自主制作でも結構試行錯誤を要する工程ではある。

*1:自宅にスキャナーがない場合は、コンビニの多機能機でスキャン後USBメモリに落として持ち帰ることも可能。あるいはiOS11以降のiPhone/iPad保有しているならば、メモ・アプリのスキャン機能を使う手もあり。

本年度MIDI検定1級課題曲の概要が明らかに

本年8月に実施されたMIDI検定1級の課題曲スコアはまだ販売公開されていないが、去る10月末の合格者発表と同時に作曲者による全体講評が以下のページに掲載されていた。

MIDI検定1級受験番号発表

以下の冒頭文で難易度の高さはある程度察せられる: 

今回の課題曲は、ラテン系の楽曲で、パーカッション部分のノート数の多さに驚いた方も多かったのではないでしょうか。

2016年がクラシックで音数少なかったため、さすがに2年連続でそれはないだろうと思っていたら案の定という感じである。私は2011年度のロック調課題曲の演習で痛感したが、終始鳴りっぱなしのリズムの打ち込みは労力を要して結構大変である。コピペで横着できるところが多いとはいえ、表面的には同一に見えるパターンの細かな差異チェック等あまり気が抜けない。

今年は合格者数がわずかに9名で、昨年の16名から大幅ダウンだが、受験者総数はまだ公表されていないので、合格率がどの程度低下したのかは現時点では判然としない。昨年は合格率が40%弱で高めに出ており、少なくとも1次審査の観点からはクラシック有利との印象を受ける。

過去の合格率を見ると、やはり音数が多いポピュラー楽曲の年は低く、クラシカルな楽曲の年は高く出る傾向がおぼろげに観察される*1。しんどいリズム系統の打ち込みがないクラシックはやはりどちらかと言えば楽だ。

上記作曲者コメント中に、「譜面を追いながらパートごとの音を試聴して確認する」とのアドバイスが書かれていた。常識的な方策ではあろうが、これは是非自分も取り入れてやるべきだなと、ちょうど2011年楽曲の演習を終えた私は大いに反省するところであった。致命傷となる丸ごと入力し忘れの小節がないかどうかの検証は、おそらくこのようなソロ再生チェックをやらないと発見しづらいだろうと思う。

追記 (2018-05-30)

第9回 (2017年) MIDI検定1級試験の受験者数が下表により明らかになっている:

MIDI検定試験結果の推移

それによれば、受験者数は32名で、合格率は28.13%であった。案の定合格率も前回2016年試験より大きくダウンしている。

2級の合格率と比較すれば想像はつくと思うが、1級はノートミスを重ねると1次審査ではねられて2次審査まで到達できずに撃沈してしまうリスクが高い*2という厳しさが反映されていると痛感する。

*1:ただし、一番合格率の低かった2013年ジャズ楽曲の年でも統計的には有意に低いというわけでないようだ。一方、一番高かった2014年クラシック曲の年は有意に高いと思われる。1ページ目サンプルから窺うに、2014年課題曲は音数が少なくスカスカのスコアである。なので、1次審査を突破する確率が高くなるのは自明であろう。

*2:他のミスがないとしてもノートミスは最大10個までしか許容されない。

MIDI検定1級演習 2011年課題曲 (11) SMF作成上の注意点

以下記事続きのシリーズ記事ではあるが、SMF作成に関しては2011年度課題曲に限らず全回に共通する方策となる。一部については2級実技にも当てはまる内容である。

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Studio One (DAW) でやるべき作業

1次審査用のMIDIデータ編集ファイルを作成する

1級の場合はほぼ間違いなく2次審査用のMIDIデータとは別個に1次審査用のデータを用意する必要に迫られる。そのため、2次審査用のミックスダウンが一段落した時点で、1次審査用のソング・ファイルを改めて作成する。

下地は当然ながら2次審査用に編集したソング・ファイルをそのままコピーすればよいのだが、その際にOS側(macOSまたはWindows)でフォルダーを直接丸ごとコピーしたりはせず、Studio One を使って複写する。

具体的には、複写元のソング・ファイルを開いたら、メニューから File > Save As で別名保存すればよいだけである。保存先は任意だが、元のソング・ファイルと同一のフォルダー内に別エディットとして保存してもよい。

なお、ソング(楽曲)全体のMIDIデータを最終的にSMFとして書き出す際も、この File > Save As 処理を使う。その時には保存ファイルの種類を"MIDI File (.mid)" に指定する。 

トラックの並び順を変える

非常にややこしいことに、SMFにおける各楽器のチャネル割り当て順*1は、譜面のパート記載順とは異なっている。したがって、トラックをMIDIチャネルの順番に並び替える。

トラックの統合

同一トラック上でプログラム・チェンジにより音色変更があるパートで、音色ごとにトラックを分けて制作した場合、それらのトラックを元通りに一つのトラックへ統合する。Studio One のPrime版では必然的にそのようなトラック統合の追加編集が発生する。しかしこれは非常に簡単な作業で、該当するMIDIイベントを統合先トラックへドラッグ移動するだけのことである。なお、Studio One でプログラム・チェンジのメッセージは挿入できないため、これはDominoで対応する(後述)。

またスコア上パーカッションは3パートに分けて記譜されているが、本曲のSMF仕様では1チャネル分しか定義されていない。互いにオーバーラップする3トラック統合はとても煩雑な上に、どのみち本曲のパーカッションは1次審査では評価対象外となることを考慮すると、例えば "Percussion 1" だけ生かすようにして他2者は捨ててしまってもよいのではないかと思う。

オクターブ調整

本曲ではギターとベースを記譜よりも1オクターブ下げてMIDIデータを記述する。

対処法としては、2016年課題曲の移調で試みたようにPythonによるバッチ処理で一括加工するか、Studio One でMIDIイベントをトランスポーズするか、2種類の方法が考えられる。後者の場合、該当トラックに含まれる複数MIDIイベントを全選択した上でトランスポーズする操作となる。私は前者のPythonによるバッチ処理でワークフローを統一してある。

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ストラム表現のクオンタイズ処理

これはともすれば忘れそうになる(嫌らしい)要注意箇所である。制作規定書によれば、アコギのストラム表現に関して、1次審査用のデータはクオンタイズを適用した状態で提出せよ、との指定がある。スチール・ギターのみならず、独自の表現解釈でナイロン・ギターにもストラムを適用していた時は、当然ながらそこもクオンタイズしておく必要がある。 

Studio One での操作としては、MIDI編集画面で該当する全ノートを選択し、右クリックから "Quantize" を選択してやると、全ノートの頭が指定拍単位に一括で揃う。

Dominoでやるべき作業

DAWによっては以下の加工プロセスの一部またはすべてに対応しているものもあると思う。

パーカッションのリズム・トラック指定

パーカッションはチャネル11に割り当てられているが、チャネル11は標準ではメロディ・トラックとなるため、必ずリズム・トラックに指定替えする。

なお、Dominoに読み込む前にすでにプログラム処理等によってリズム・トラックに指定されている(Bank Select MSB の値が120になっている)時、Dominoのピアノロール画面はメロディ・トラックのように鍵盤表示ままであるが、リズム・トラックとして再生する(Dominoのバグっぽい)。

トラック毎ボリュームとパンポットの設定・調整

ボリュームとパンは、Studio One でのミキサー設定を参考にして適当に決めればよいと思う*2。データの正確性しか評価されない1次審査でこれがどこまで評価を左右するのかは不明である。

曲中プログラム・チェンジの挿入

Dominoでは、メニューバーから 挿入 > プログラムチェンジ により操作する。

ピアノロール上で挿入したい位置にカーソルを合わせて挿入し、プログラム・チェンジの値をしかるべく修正する。音色変化タイミングのあまりギリギリ直前に置かない方がいいかもしれない。例えば、休符等の余白がある所では1拍前あたりにしておく。

リズム・トラックのゲートタイム修正

本曲の場合はドラムとパーカッションの両トラックにつき、全ノートのゲートタイムを5ないし10程度に揃える。Dominoの一括修正機能を使えば簡単に処置可能。因みにこれは2級実技でも同様に編集する必要がある。

フルートのベンドレンジ

以下の記事で述べたように、本曲では"7"に設定しておく。

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1小節目に混入している不要データの除去

1小節目にはセットアップ・データ以外は記述しない。しかし Studio One から書き出したSMFには1小節目にコントロール・チェンジやピッチベンド・チェンジの初期値が混入しているため、それらはすべて削除する*3。詳細は下記記事を参照。

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*1:A3サイズの作業レポート左側紙面に一覧表記されている定義順の通りとする。

*2:SMFにおける設定値は作業レポートに記述しなければならない。データを見ればわかるだろうという気もするが。

*3:再検証したところ、移動せずに全削除しても問題ないようである。

MIDI検定1級演習 2011年課題曲 (10) その他の管弦楽器

以下記事の続き。今回補足する管弦楽器については、クラシック調の2016年課題曲と共通する技法が少なくない。

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ストリングズの音色補強

バイオリン等ストリングズ系統の音色でいつも悩ましいのは、アタックが弱い部分の補強をどう処理するか、という点である。これについてはすでに以下の記事でまとめてあった。

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今回は、トラック・ディレイ処理として発音タイミングを6ms (Strings High) あるいは35ms (Strings Low) 程度前倒しにして微調整する。

追加措置として、常套手段である同系音色を重ねたレイヤー合成もやってみる(上記記事の「音色をレイヤー合成する」とほぼ同様)。Studio One 3.5 Prime 版では補強用音色を別トラックに用意する必要があるが、その際にコピーするMIDIイベントは元のトラックと複製共有する方がよい。そうすると、どちらか一方のMIDIイベントを修正した場合、もう片方にもその修正が自動的に反映される。

ただし、このようなレイヤー合成は全小節にわたってくまなく適用する必要はないだろう。テンポが速いところやアクセント強調したい箇所だけでよいと思う。

もしTracktion上でプラグインの音源音色を活用するのであれば、ラック・フィルター機能を使って簡単にレイヤー合成できる(今回は使わず)。詳細は下記記事で触れた通りである。

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深刻度は弦楽器ほどではないかもしれないが、音源音色によっては管楽器系もややアタックが弱くて困る場合がある。解決策として例えばシンセのブラス音色などを混ぜて補強することも考えられるが、2011年課題曲で盛り込まれていたサックス3種に関してはそこまでする必要性を感じなかった。キリがないので適当なところで妥協、というのが実情ではあるが。

クラリネットグリッサンド

本曲ではキーボード音色で多用されていたグリッサンドであるが、管楽器ではクラリネットで2箇所だけ指定がある。上がる方と下がる方各々一箇所ずつだが、どちらも7半音のインターバルなので、音源(Studio One 付属音源である Presence XT)のベンドレンジを上下方向ともに"7"に設定しておき、該当箇所でピッチベンド・チェンジを0から上限または下限一杯まで振り切るとよい。詳細は下記記事を参照。

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