DAW悪戦苦闘記

DAWやMIDIを通じてちまちまとDTMを楽しむ記録+MIDI検定1級到達記

Google Doodle で自動作曲

本日春分の日Google Doodle は、バッハ生誕334周年を記念した自動作曲ツールになっていて、機械学習を応用した作曲技法に関心がある私にはちょっとしたサプライズだった。

www.google.com

www.itmedia.co.jp

機械学習系の裏の仕組みは Magenta プロジェクトからの流用で、さらにその裏方はかの Tensorflow が担う構造になっている。が、難しいことは考えずにあれこれ試してみると面白い。しかし同時に、対位法をベースにしたコラールというジャンルである以上は、生成されたサンプルのどれを聴いてもほとんど同じでワンパターンにしか聴こえないな、という残念さもちょっぴり感じるところである。

magenta.tensorflow.org

気が利いていると思ったのは、生成サンプルをMIDIファイル (SMF) に落とせるところである。たまたま気に入ったフレーズが生成されたら、これをDAWに取り込んでアレンジしてみてもよいと思う。

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第20回MIDI検定2級2次試験(H30)が終了

2019年2月期のMIDI検定2級2次(実技)試験が先週末2月16日から18日にかけて実施され、予定通り終了した模様である。

本番では練習曲No.4に類似したテイストの和風な楽曲であったようで、もし他の練習曲に盛り込まれていた転調や変拍子が入っていなかったとすると結構易しかったのではなかろうか。

daw-jones.hatenablog.com

私はちょうど1年前の前回受験して合格した口だが、その時も一部練習曲にスィング調が初登場し、本番でも出題されるのではないかと身構えたものだが、結局出されなかった経緯を思い出す。練習曲で難しいテーマが取り上げられたとしても本番課題曲ではスルーされる可能性がままあるということである。昨年度受験の体験記は下記ブログ記事などを参考にしてもらえると幸いである。

daw-jones.hatenablog.com

今回の受験体験記については、他のブロガーが書かれた下記記事などが非常に興味深いところだが、コントロール・チェンジの入力に鉛筆描画ツールを用いれば簡単に済むものを課題提出後に気づいた、といったような初心者の悩みどころが赤裸々に綴られている。この辺はやはり過去の練習曲を可能な限り数多く実践演習しておかないと、制作方法にまつわる課題の洗い出しや最適アプローチの習得になかなか結びつかないのではないかと思う。

the-art-of-rock-transcript.com

なお、この方の場合、Finaleで譜面入力したものをCubaseに読み込み、さらに Logic Pro X でベロシティ等追記という一風変わった、なおかつお大尽な感じの複数ツールの組み合わせアプローチを採っているので個人的にはちょっと驚いた。もちろん、どういうアプローチを採ろうが各個人の自由だが、この場合 Logic Pro X は特に必要ない気がしないでもない。

また上記記事中で Expression (CC#11) を使ったデクレッションドおよびクレッシェンドのオン/オフ・タイミングに頭を悩まされている様子が描かれていて、読みながら私の昨年受験期の記憶が蘇ってきていたのだが、127に戻すオフのタイミングは少々早くても次の音符の発音タイミング前であれば全然問題ないはずで、たぶんこの方のデータ入力タイミングでは減点されないのではないかと思う。

 

アジカンも気づいた低域問題

私は特にアジカン (Asian Kung-fu Generation) のファンというわけではないけれど、1週間ほど前にバズっていた下記記事は今現在の足元の音楽シーンを如実に反映しているという意味では非常に興味深い、というかちょっと感慨深い印象すら抱かせた。

realsound.jp

J-POPは長らくガラパゴスなどと揶揄されて、ここ数年来特に海外動向に敏感なレコーディング・エンジニアやDJから低域処理の甘さを散々批判されていたように記憶するが、ようやくアジカンのようなメジャー級のミュージシャン自身がこれに気づき始めている状況はちょっと大げさかもしれないが隔世の感がなくもない。

daw-jones.hatenablog.com

上記のインタビュー記事では、そのような高域偏重が日本特有の制作環境に一部起因することや、ヒップホップ全盛時代にリスナー対応を迫られた結果としての低域重視とロック・ジャンル*1の音作りの変容、ストリーミング・サービス隆盛に伴うリスナーやジャンルのボーダーレス化、といった市場変化の背景等々が浮き彫りになっており、プロアマ問わずに音楽クリエーターの方々は必読であろうと思う。

このようなストリーミング消費の時代における、市場競争のボーダーレス化、フラット化に関しては、下記鼎談記事にも詳しい。

gendai.ismedia.jp

同記事中で、

特に今の10代とか20代のアーティストの話を聴いていると、音楽の聴き方が全然違う。J-POPもK-POPもグローバルなポップ・ミュージックも隔たりなくフラットに受容して育ってきている。

という指摘は旧来型J-POP関係者には結構耳が痛い話ではないかと思う。だが星野源などを筆頭に地殻変動が現れているところへ、どちらかと言えば古株の部類に入るアジカンまでもが巻き込まれている(?)状況というのは今の時代を現していてなかなか面白い、と同時にガチでボーダーレス競争に晒されるミュージシャンの世知辛さもちょっぴり感じる次第である。

*1:ヒップホップ全盛で海外ではこのジャンル自体が陳腐化している様相があるとも聞く。逆に日本で80年代に流行った山下達郎竹内まりや角松敏生といったいわゆるシティ・ポップ和製英語)がグローバルに再発見されているとかいう逆パターンもあったりで、こういう国境を超えたダイナミックな動きは一昔前まではまったく考えられなかったように思う。

最先端UIへ進化中のWaveform

久々の Tracktion Waveform 小ネタ。

27日まで目下開催中である楽器音響関連の国際見本市 NAMM 2019 にて Waveform 10 のプロトタイプが展示披露されているようで、次期バージョン新機能の一端を垣間見ることができる。

Waveform は、制作ワークフローの効率化に関してクリエーター目線で徹底的に考え抜く思想で貫かれており、そのUIは数あるDAWの中でも正に最先端であろうと思う。それがかえってCubaseなどのオーソドックスなUIに慣れたユーザにとっては奇異に映る場合もあるかもしれないが、多数の付属プラグインやバンドルされるシンセのユニークさを含め、他人とは違った制作環境を望むユーザには最強DAWの一つではないかと思う。上級版DAWを選定中である私自身も、バージョン10で極端な高額にならない限りは導入していいかも、と傾きつつある*1

あとバージョン10では、AutoTune と Melodyne の両方を組み込むようで、この辺の編集機能を多用したいユーザにとっては垂涎の的となるのではなかろうか。ここは Melodyne をバンドルする Studio One Pro版と競合するところである。 

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*1:現行のバージョン9では全部込み Ultimate Pack であっても税込 ¥29,480 であり、Logic Pro X ¥23,800 と大差ない。ただし、NAMM Show の James Woodburn 氏インタビューによると、次期バージョンでは全部込みで$499という発言がある。

動き出した MIDI 2.0 への規格改訂

国際的な展開としてMIDI規格がバージョン2.0へと改訂に動き出したとの下記記事が結構バズっていたので、備忘録がてら少し触れておきたい。具体的な改訂領域については下記記事を参照していただくとして本記事での繰り返しはなるべく避ける。

www.dtmstation.com

実はMIDI規格の拡張・改訂については昨年10月の楽器フェアでAMEIのアナウンスがあったので個人的には既知ではあったのだが、今年は The 2019 NAMM Show のタイミングに合わせてAMEIとMMAの共同発表となった模様である。

daw-jones.hatenablog.com

まだまだ詳細検討やプロトタイピングの段階であるため、一般市場に公開されて楽器やDAWなどに実装されるのは数年先になると思われる。また下位互換性は維持される方向なので、現行 MIDI 1.0 の規格内容が完全に消滅するわけではないことには留意する必要があろう。

MIDI検定受験を考えておられる方は規格改訂の端境期に入る前にさっさと受験・合格してしまうことを目指す方がよいと思う。何年先になるかは不明だが、今後は公式ガイドブックの改訂と、それに伴う試験内容の変更が当然想定されるからだ。ベロシティー等の値レンジ拡張(現行の0〜127から粒度が細かくかつ拡張される模様)やノート単位のコントロール・チェンジ適用などについては2級2次実技試験への影響も考えられる。

GarageBand: キー設定/転調とループ素材

GarageBand(または Logic Pro X)付属のループ素材は、種類がとても豊富な上に音質も良いので、やろうと思えばループ素材の組み合わせだけでいくらでも楽曲を制作することができるほどだが、素材のクオリティに加えて特筆すべきは、楽曲のキー設定に合わせて自動転調する機能が備わっていることである。これは非常に使い勝手がよくて重宝すると思う。

support.apple.com

下例の通りに楽曲のキーを設定しておけば、各ループ素材もそれに合わせて試聴時と貼り付け時両方ともに自動転調してくれるため*1、いちいち個別の素材・リージョンごとに転調編集を適用する手間が省略できる。たとえば Studio One の場合は、楽曲全体のキー設定であるとかトランスポーズ・トラックという概念と機能がなく、各イベントごとの調整になるため、編集がいささか面倒である*2

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ループ素材の転調は、たとえ楽曲途中で転調が入る場合でも自動的に対応してくれる。GarageBandの場合、トランポーズ・トラックで途中の転調を適用すると、そのタイミングに合わせてループ素材のリージョン途中から自動的に転調してくれる。

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こうしたループ素材の応用力という点では GarageBand または Logic Pro X は他のDAWに比べて図抜けた使い勝手の良さがあり、DAW選定の際の重要な比較材料になるのではないかと思う*3

*1:メジャーとマイナーといったスケールの違いについては素材の検索時に選り分けることができる。

*2:Studio One のループ素材はファイル名の一部にキー設定が書かれており、それを手掛かりとして個別にトランスポーズすることになる。複数イベントを選択しての一括編集はもちろん可能ではあるが。

*3:プロならともかくも私のようなド素人だと一からオリジナルのMIDI打ち込みは正直ハードルが高いので、ループ素材のモチーフに依存する度合いが高い。プロであってもギターリフなどの生演奏はループ素材を使った方が手っ取り早いことが多いと思う。

DAW国内シェア推計調査

昨年12月月間に実施された「DTMステーション」によるDAW国内シェア推計調査の最新結果が公表され、大変興味深い。個人的には半ば予想通りというか、さほど意外性がないように思える側面もある。

www.dtmstation.com

Studio One シェア拡大の最大要因は、上記記事中で「Studio OneとAbilityで共通して言えるのは、SONARからの移行組をうまく捕まえて伸びた、という点でしょう」と指摘されているように、旧SONARユーザの獲得で漁夫の利を得たことにあるのは明白である。ただし、Cubase 猛追というのは個人的な直感では実態以上に誇張されている印象がある。YAMAHA傘下ということも考慮すれば、Cubase はたぶん実際には本調査以上のシャアを持っているであろうと想像する。

一方私が全然知らなかったのは、海外と比較した場合の Ableton LiveFL Studio の国内シェアの低さである(あくまでアンケート推計ですが):

国内にいる外国人の方々や海外にいる日本人の方々から、TwitterFacebookで多く指摘されたのは、「日本はAbleton Liveのシェアが信じられないほど低い!」、「なんでFL Studioのシェアがこんなに低いんだ?」といったこと。確かに、海外の調査結果などを見ると、Ableton LiveFL Studioはかなりシェアが高いようですから、日本のDTM環境はやや特殊なのかもしれませんね。 

これは海外市場と比べての音楽志向の違いが多分に影響している可能性があるかもしれないが、やはり販売面含めての日本語サポートの有無が大きな一因ではないかと思われる。

その他顕著なところでは、Logic Pro X の安定したシェア推移はMacユーザにとっては安心材料と言えるだろう。選定に迷っているMacユーザが最初に選ぶべき上位DAWとしては私も個人的には Logic Pro X をオススメする(GarageBandからの移行が容易で一番無難と言える)。

あと、上記記事中でも指摘されているように、Pro Tools と Digital Performer はもはや業務用ソフトという位置付けがはっきりしているように感じる。Pro Tools がいまだにプロのスタジオ現場でデファクトに留まっている理由は正直私には謎である。Digital Performer はこれまた「DTMステーション」の取材記事ではあったが、カラオケ制作現場の打ち込みツールとして非常に評価が高いらしい。

daw-jones.hatenablog.com

追記 (2019-01-20)

Sleepfreaksでも同種のアンケート調査をやっていたようで、下記記事にて結果が発表されていた。こちらの方が標本数が多く、また実態をよりよく近似している印象を受ける。さらに併用率まで出しているのはユニークな点である。

sleepfreaks-dtm.com

Cubaseが最大シェアである点は両アンケート共に同じであるが、こちらの方は Logic Pro X の健闘ぶりが際立つ。しかしクリエイティブ系でMacユーザが多いことを考えるとさほど違和感はないと思う。Studio One は、DTM Station の調査ほど偏りはないものの、Logic Pro X と僅差で3位とやはりユーザ増加傾向が強く現れている。今年あたりでいよいよ Logic Pro X を追い抜く可能性もあろう。